第13話 余談

二人が話し合った内容について………

ーーーーー



その時、珍しく11567が語り掛けてきた。


「君はなぜかよく私に話掛けてきたが、君は何か

私について知りたいことがあったのかい?」


「え?いや、まあ……」


ルシュターは驚きながらも応えた。


「なんかさ、最初はほんの好奇心や興味だったんだ

君は……とても……何と言うか不思議な存在

だったから。」


「でも途中からは違うよ。

単純にただ君と話していたかったんだ。

理由なんてよく分からない。

ただそう思っただけなんだ。」


「ふん?さっぱり分からないな………

動機が分からないなんて。」


「そういうこともあるもんさ。」


「そうかい……」


そう言って空を見た11567は不意に話し始めた。


「私がこの世界、いや自分というものを

初めて認識し始めた時に……」


「私の側にいた者は…………」


急に自分のことを語りだした11567に

ルシュターはびっくりして

何も反応できなかった。


「アレが人だったのか、今でも私はよく

分かっていないのだ。

しかし、こうやって幾人かの『人間』を見てきて

思うのは、あれはやはり………

『バケモノ』だったのではないかと。」


「え……?」


「私はバケモノと過ごしていたのだ。

ほとんど一緒にはいなかったが、

或いはアレが『親』というものだったのなら

私ももはやバケモノなのかもしれない……」


「11567はバケモノじゃないだろ、

立派な『人間』だよ!!」


間髪入れずにルシュターは言葉を繋いだ。

確信のあることについてはすぐに言葉が出る

タイプのようだ。


「お前はちょっと変わってるけど

お前より嫌な奴なんていくらでもいる。

変なやつだっていっぱいいる、

そういう奴らが『自分こそは正しい』って面して

偉そうに生きているんだ。」


「お前が『バケモノ』なら人間全部が

『バケモノ』だよ。」


「私が見た本では、人間ではない別の奇妙な

形と存在の生物として表現されていたが……」


「お前が一緒にいたっていう『バケモノ』は……

お前に酷いことをいっぱいしたのか?」


「さあ……どうだろうな……

私はアレのことをあまり覚えていないし

思い出す必要性もないとこだ。」


「君がどうやって育ったのかは

イーダが一番知りたいところだろ。」


「イーダか……あの男はどこか浅い。

言ったところで表面上の事しか理解しない

そのくせ全てを知ったように自覚する。

あいつが私の話を聞いても何の意味も成さないさ。」


「………!」


ルシュターは絶句した。

そしてゾッとした。

イーダはこの施設での一番の権力者であると同時に

工作部隊と諜報機関の指揮も取っている

この国のNo.2の実力者である。

それを相手に恐れたり臆するどころか


『見下している?いや、大したことないと

思っているのか?』


いや、違う。

11567にとっては全ての他人が平等なのだ。

この国のトップもここにいる者達も

外にいる泥棒も物売りも老人も子どもも全て…


全てに興味・関心があり、全てに興味・関心が無い


「すげえよ、11567。

お前やっぱりすげえよ。

お前ならきっと…」


何でもできると言おうとして、

果たして彼女は何がしたいのか……

まるで分からず言葉を探した。


「きっと、大丈夫だ。」


付いていって力になりたい気持ちと

付いていっても力になれないだろう現実を

何度も考えては打ち消す。


「きっと、大丈夫だ。」


出てくる言葉はこれだけだった。


「俺なんかに色々話してくれてありがとうな。」


「……。何故だろうな、君に話したのは……

分からないな……自分でもよく分からない。」


「俺だってそんなもんだよ。

君だけじゃない。」


「そうか………

私にも『動機が分からないこと』があったようだな。」


「だろ。」


「そんなやつがバケモノなわけないんだよ。

お前だって、本当はみんなと変わらないのさ。」


11567はルシュターを見つめた。

表情は変わらなかったが、驚いているような

そんな気がした。

それに対してルシュターは笑った。

それでいいんだと言わんばかりに。


そして二人は空を見上げた。

明日からバラバラになる二人の

最後の時間だった。








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死神は、月を抱いて眠りたいーー死神の育ったトコロ 漂うあまなす @hy_kmkm

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