許嫁と登校
「澪未矢様、お気を付けて。何かありましたらすぐ連絡してください。秒で駆けつけてまいりますので」
流石に秒では無理じゃないかな?
「芯珠さん、いい加減過保護が過ぎましてよ!ほら、澪未矢さん早く行きましょう」
「あ、ああ」
俺と芯珠を引きはがすように腕を引っ張る栄那。
まさかこの栄那が俺の許嫁だったとは...
まぁ逆NTRということで主人公が誰かと付き合っているのはなんとなく予想できたがまさか許嫁までいるとは。
「さぁ、お乗りくださいまし」
「え?」
目の前には二人乗りには十分すぎる見るからに大富豪が乗りそうな車があった。
「えーっと、この車で学校に登校するってこと?」
「?何を言っていますの澪未矢さん?いつものことではありませんの」
いつもこんな高級車で二人で登校していたのか。
ちょっと贅沢が過ぎるな。
車内に入ると何故か妙に近い二つの座席が目に入った。
「...俺の座席はどっちかな?」
「お好きな方を選んでくださいまし」
どちらでもいいのでとりあえず左側の座席に座った。
「ちょっと澪未矢さん、何シートベルトを締めようとしていますの?」
「え?常識じゃ」
「前にも説明しましたけどこの車は揺れを吸収する構造になっているからシートベルトなんか締めなくても大丈夫ですわよ」
流石は高級車。
実家にあるころ魔なんか揺れすぎてエチケット袋を常に用意していなくちゃいけなかったからな。
「では行きますわよ」
栄那がそう言うと運転手が車を動かし始める。
そういえばこの運転手は栄那の執事だろうか?
顔が全く見えないがとりあえず性別が男ということだけは分かる。
「今日も相変わらずいいお天気ですね」
栄那がお嬢様が言いそうなことを言い始めた。
「ただ最近は少々気温が高すぎますわね。もし澪未矢さんが熱中症で倒れたりしたらわたくし...」
なんかいきなりシリアスなこと言いだしたな。
これはそんなことないって慰めた方がいいのか?
「だ、大丈夫だよ。俺暑さには強いから」
嘘だけど。
「ええ、澪未矢さんのお身体が強いことは重々承知しておりますわ。ただもし少しでも暑さを感じられたら遠慮なくわたくしに申してくださいね。直ちに学校のあらゆるところに澪未矢さん専用のエアコンを設置するよう申請しますわ」
おそらくだが栄那が言う申請は脅すという意味だと思う。
「本当だったら澪未矢さんには体育を見学なさってほしいぐらいですわ」
それは少しありがたいが。
「ところで澪未矢さん、話は変わるのですけど」
ん?なんか栄那の口調が少し低くなっている気が
「少しばかり澪未矢さんとメイドである芯珠さんの距離が近すぎると思うのですけれど」
そう低い声で言うと、俺の肩に手をのせて俺の顔を覗き込むような体制になった。
完全にホラーである。
「い、いや芯珠さんにはいつも起こしてもらってるし、美味しい料理も作ってもらっているし...」
「ほう...ほう...ほう」
やばい、地雷踏んだかも。
なんか方に手を置かれていたのが掴むという表現に近くなった気がする。
「なるほど、美味しい料理ですか...澪未矢さん、私がいつも澪未矢さんのために作っているお昼ご飯とどっちが美味と感じますの?」
まずい。
俺はまだ栄那が作った昼ご飯を食べていない。
「まぁそれは日によるかな...」
「ほお、つまり芯珠さんの料理の方が美味と感じる日もあると?」
どんどん肩を強く掴まれる。
てか意外と力強いな。
「で、でも最近は栄那の料理も俺の好物がたくさんあるからどちらが美味いかというと栄那よりなのかなー」
「やっぱりそうですわよね!」
口調がさっきのに戻ったのでほっとする。
「ええ、ええ、澪未矢さんならそう言っていただけると信じておりましたわ!」
テンション高いな。
「もし芯珠さんの料理の方が美味だなんて言ったら私自分で自分を抑える自信がありませんでしたもの」
何しようとしてたんだこの子。
そんな少し重いやり取りをしていると
「お、あれが学校かな?」
だんだん学校のようなものが見えていた。
...校舎は意外と普通だな。
もっとお城みたいなのを期待していたのだが。
「ああ、もうついてしまいましたか」
栄那が残念そうにつぶやく。
「もう少し澪未矢さんとの二人だけの時間を堪能したかったのですけれど...まぁしょうがないですわね」
正直俺は早くこの二人だけの時間が終わってほしいと思っている。
校門の前に停車し外に出る。
「それじゃ澪未矢さん、教室まで手をつないでいきましょう」
「!?」
それはちょっと大胆過ぎないですかね?
「...本当になんでわたくしと澪未矢さんが別のクラスになってしまったんでしょうか。これが神様のいたずらというものかしら」
いや多分ゲームのストーリー上の問題だと思う。
「さ、ゆっくり歩きながら教室に向かいますわよ」
俺の手を握る。
相変わらず力が強い。
まさか主人公がめっちゃ病弱でヒロインがパワー系ってこと?
まぁそれはそれで俺の性癖に引っかかるが。
そんなことを思いながら栄那と手をつなぎながら教室に向かった。
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