妹とメイド

なんで俺が新作エロゲの主人公に転生していると確信したのかは、およそ数日前にさかのぼる。


その日はいつものようにアダルトサイトを閲覧していた。


「どれもこれもハーレム系だけど結局は男が積極的に攻める系なんだよなー。たまには男女逆転みたいな、いうなれば逆NTR系とかないかなー」


前にも説明したかもしれないが、俺はM気質でよくハッシュタグにM向けやドMホイホイと書いてあるSSや画像やASMRを聴いている。

ただエロゲはあまりドM向けの作品が少ない。

だから俺はM向けゲームを探すべくいつもアダルトサイトでエロゲの新作のトレーラーを見ているのだ。


「ん?今逆NTRっていうキーワードが見えたぞ!」


急いでページを戻る。


「これか。まだタイトルは決まっていないようだな」


本当に完成したばかりなのであろう。

ただ説明欄のところにある程度の設定は公開されていた。


「どれどれ...え、オープンワールド型!?エロゲで!?」


何回も言うがエロゲでオープンワールドは前代未聞だ。


「えっと主人公の名前は夜崎澪未矢よざきれみや。親が金持ちで屋敷に住んでいて妹とメイドがいる...」


まさに俺好みの内容だった。

しかもこれで逆NTR系ときた。

もうこれは買わない理由がない!


と、ここまでが俺が新作エロゲの主人公に転生していると確信した理由だ。


「...まぁエロゲ転生っていうのも悪くないな。いい人生経験になるし」


そう自分を無理やり納得させ、さっきのメイドが言っていたように早く下に降りようと思う。


「と、その前に着替えなくては」


制服と言っていたがこのバカでかいクローゼットにあるのだろうか?


クローゼットを開けるとすごい数の服が並んでいた。

しかもすべてがブランドもの。


「...この中だと学校の制服が一番安っぽいな」


こんな豪邸に住んでいる人間が通うのだから恐れく金持ち私立高校なのだろうが制服が安く見える。


「なんだこれ、ボタンじゃなくてネクタイなのか。結べないぞ俺」


恥ずかしい話なのだが、俺は一人ではネクタイが結べずいつも親や友達にやってもらっていた。


「後でメイドさんにやってもらうか」


部屋を出て一回に向かう。

廊下もずいぶん広く油断すると迷子になってしまいそうだ。


「別に絨毯じゅうたん引く必要ないだろ」


床には赤いこれまた高級そうなジュータンが引かれていた。


「それにしてもさっきのメイドさんスタイルよかったよな」


身長は俺より高く、胸もそこそこにあり、髪も長く、女性にしては少し低い感じで、それと少しスーツっぽいメイド服ときた。


「見た目はドSぽかったな//」


そう妄想していると階段が見えてきた。


「階段も広いな」


階段を降りると、左側に広い居間が見え、そこに確かトレーラーで見た妹らしき女の子が座っていた。


「あ、兄さん。起きたんですか?」


俺の顔を見るなり妹は微笑む。


「う...」


その神々しさに思わずあとずさりしそうになる。


「兄さん?どうしたんですか?」


今度は心配そうに見つめてくる。


「い、いや何でもないんだ」


「ならいいんですけど...もし体調が悪くなったりしたら遠慮なく私や芯珠しんじゅに言ってくださいね」


「ああ、分かった」


そうだ、メイドさんは芯珠っていう名前だった。それと確か妹は...


神楽かぐら様、そろそろお迎えが来る時間かと」


「あ、そうだったわ。私も準備しないと」


夜崎神楽よざきかぐらか。これまた美しい名前だな。


神楽もまたいい体系をしている。まさに妹って感じだ。

髪は少しピンクっぽい紫で、お淑やかという言葉がよく似合う


「それで気になったんですけど兄さん。なぜネクタイを結ばないのですか?」


「え?、あ!」


そうだった。芯珠に結んでもらうんだった。


「あ、あの芯珠さん?む、結んでもらうことってできるかな?」


「え?」


俺がそう言うと神楽が目を見開いて驚いた。


「あの、兄さん?本当に今日は大丈夫なんですか?どこか悪いとかは?」


そんなにネクタイ結べないって重症なの!?


「かまいません。ネクタイを結べばよいのですね?」


「ああ頼む」


流石メイド。

ネクタイを結んでほしいって頼んでも顔色一つ変えずやってくれる。


「......」


メイドにネクタイを結ばれる男子高校生。

何だろ、このシチュエーションも悪くない気がする。


「そういえば澪未矢様。もうそろそろ栄那えいな様が迎えに来る時間かと」


ネクタイを結べ終わるなり芯珠がそんなことを言ってきた。


「え、栄那えいなとは?」


「そういえばそろそろですね、栄那さんが迎えに来るの」


神楽が少し不機嫌そうにそう呟く。

さっきからその栄那って人が誰か分からないのだが。


「もう朝食は出来上がっています。どうぞこちらへ」


今度は右側の食堂に案内される。


居間を出ようとしたとき


「...私はあの女嫌いだな」


「え?」


今何かものすごく低い声で神楽が何か言った気がしたのだが。


「それでは兄さん。私はもう行ってきますね」


「あ、ああ、いってらっしゃい」


神楽が玄関を開けると高級車が止まっており、そこに乗っていく神楽の姿が見えた。

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