第8話 乗船条件

※数字の表記が統一されていません。すみません※


昨夜の間に船長と船員が誘拐されてしまった

らしい。


「船は動かないのかい?」


「この川の走行は難しくて、あの船長がいないと

とても船は出せないんだ。」


船を利用したい人々で辺りは騒然としていた。


「船に乗れないんだ……」


ラビとジルは主のいない船を見つめた。

その時。


「ダメだ!やられたらしい!」


少し離れた所で小さく騒いでいる集団があった。

ラビは様子を伺いにいき、ジルも付いていった。


「全員やられたのか?」


「8人で取り囲んだが、4人負傷したところで

撤退だ。撤退中にも2人撃たれた。」


「ダメだったかあ……」


周りから一斉にため息が漏れる。


「6人もやられちゃあ、残ってる警官は……」


「7人だけど、1人はすごい歳とってんだよな。」


「わあ…厳しいなあ。」


「それにその人達がやられちゃったら

この街の自警能力が無くなっちゃうし……」


「応援は呼べないのか?」


「ワシアに応援を呼んだら船長を殺すって。」


「橋がないし、船が近付いたらバレるでしょう?」


「かつては今の倍……いや、その倍以上の警官が

この街にもいたのに……こんな数で治安が守れる

筈がないか…」


周りの人達は口々に色々な噂話をしていたが、

次第に船が動かないことを諦めて去っていった。




残されている船員と警官達は頭を抱えていた。


「要求は飲めないんですか?」


「奴らの要求通り武器と金品を渡したら

益々この街は危険になってしまう。」


「船長はあの橋ができる前からずっと

ワシアとソージの街を繋ぎ続けてきた

両方の街の功労者です。どうか見捨てないで

下さい!」


「見捨てたりはしない、見捨てたりはしないさ……」


年長の警官はとても歯切れ悪く答えていた。


「取り敢えず策を練ります、

あなた方は引き続きワシアへ緊急連絡を

続けて下さい。くれぐれもこちらへ

船を出航させる気配は見せないように。」


「ワシアから援軍が来ると分かると

船長達が殺されてしまうので……」


「分かりました。」と船員達は船室へ

戻っていった。


残った警官達は深刻な顔でどう動くべきか

対策を講じることとなった。


「残りの我々で救出しましょう!」


若そうな警官が声を上げる。


「今朝の救出作戦は熟練の警官らで決行して

それでも成果ゼロだったんだ!軍隊経験者もいた。

お前ら若僧に何ができる。」


年長の警官は苦々しく吐き捨てた。


「大体、俺以外みんな新米かワシアからの

若手派遣員だ。戦える面子ではない。」


「じゃあどうするんですか?

武器を渡して開放してもらうしかないですよ!」


「武器など渡せるか!そんなことしたら

この街の人が被害に遭う、そんな判断できるか!」


重々しい空気が流れ、しばらく静まり返った。


「失礼。」


離れた所で様子を伺っていたラビが

不意に声を掛けた。


「君達、警官とやらは

立てこもり犯の殲滅と人質救出のプランが

ないのかい?」


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