第3話 幼い息子が語った不思議

現在、大学生の息子は幼い時、少しだけ不思議なことを言ったり、したことがある。

3歳頃だったか、ふいに「ボクの神様は、金色の衣を着て、お空にいる、お坊さんなんだ」と言ったことがある。

私の父方の祖母の父は檀家寺の僧侶で、その宗派では位の高い、紫色の衣を許された人だったと聞いていた。

祖母に「お祖父ちゃんって、金色の衣を着てた?」と息子の話をしたら、祖母は「金色の衣は僧侶の正装やわ。お祖父ちゃんのことかもしれへん」と驚いていた。

息子は私の両親にとっては、いわゆる外孫で、夫の両親にとっては跡取りなのに、どうやら息子を見守ってくれているのは、私の曾祖父らしい。

私は「ルーシー・イン・ザ・スカイ・ウィズ・ダイアモンズ」みたいな空想かな? とちょっと不思議に思った。

息子はもちろん、自分がそんなことを言ったのは全く覚えていない。

「でも、なんだか、守ってもらってる気はするんだよな」と今の息子は言うのだった。曾祖父かどうかは分からないが、誰か神様が息子を守ってくださっているのなら、本当にありがたいと思う。


やはり、息子が3歳頃、夏に実家に帰省した時の話である。

実家では来客用の寝室は本来、二階にある洋室のベッドルームで、一階の和室で仏壇のある部屋は両親の寝室である。だが、幼い孫に階段を登り降りさせるのは心配だと両親が言って、両親が二階のベッドで寝て、その夏、私と息子は一階の和室に布団を敷いて寝た。

イタズラ好きな息子は和室にある窓の障子を全部破って、お化け屋敷のようにしてしまった。私の母は「孫くんに好きなだけ破らせて、孫くんが帰ったら張り直すわ」と言い、そのお化け屋敷みたいな仏間で、私たちは眠ることになったわけである。息子が障子だけ破って、出入り口や布団をしまうふすまを破かなかっただけ助かったのかもしれない。

ある晩、20時頃だったと思う。二人で電気を消した薄暗い和室で横になっていると、まだ眠っていなかった息子が、ふいに天井の隅のほうを指さして、「おほしさま!」と言った。次に、出入り口の、しっかり閉まっている、戸ふすまを指さして、「おほしさま、出て行ったね! バイバイ!」と手を振った。

『おほしさま』が全く見えなかった私は震え上がった。ここは仏間。しかも、窓は全部、破れた障子紙がぶら下がっている状態、更にお盆の時期の帰省である。

いや、多分、『おほしさま』も、自分が息子に見つかるとは思っておらず、慌てて、ふすまから逃げ出したに違いないと思った。

息子は全く怖がっておらず、私のほうが怖くて電気を点けたままで寝ていたら、22時頃に私の母が和室の電気がついたままなことに気づいて、顔を出した。事情を話したら、電気を消して、母が一緒に寝てくれたので、おかげでその夜はぐっすり眠れた。

それ以後、息子が『おほしさま』を見つけることはなかった。

息子が見たのは、どんな姿をした『おほしさま』だったのか、今でも不思議である。

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