第3話 チュートリアルその1

「……ん、んん。ここ、は?」


 目線の先に広がっていたのは一面の緑。しかし、舗装された道はあるようで少し目を凝らしてみてみると道の先には城壁のようなものが見える。


「と、その前に所持品とステータスでも確認してみよう。『ステータスオープン』」


――――――


名前:ファントム Lv1

種族:人間 職業:剣士

HP:26 MP:18 SP:19

STR:24[+1] DEF:3 AGI:21

INT:9 MND:3 DEX:3 LUK:3

装備一覧

 武器:木の剣[帯剣中] 頭:なし 胴:初心の服 腕:なし 

 脚:初心のズボン 靴:初心の靴 アクセサリー1:なし アクセサリー2:なし

スキル:【剣術Lv1】【加速Lv1】【魔力操作Lv1】【鑑定Lv1】

所持金:10000ギレ


――――――


「うん、設定した通りのステータスバランスになってるな」


 ステータスと、いつの間にか腰に提げられていた木剣を見ながらそう言う。この剣と、スキルの【剣術】が職業:剣士の特典というわけだろう。スキル選択のときにほかの【体術】やら【槍術】はあるのに剣系のスキルだけなかったのはこれがあるからだったのだ。


「そろそろ行こうかな」


 そう口にしたあとゆっくりと街への一歩を踏み出し始めた。


♢♢♢♢♢♢


「ここが……」


 歩き始めて数分が経ったとき。僕は城壁の近くへと到着していた。中からはがやがやと住民たちらしき人らの声が聞こえる。と、どこから入るのかを探すため城壁周りをうろちょろしていると全身を鎧で覆った兵士のような人に声をかけられる。


「なんだ、お前もこの街に来たのか。今日はやけに人が多いな。……と、お前に言っても仕方がない。身分証はあるか?」

「あはは……身分証はないですね」

「そうか、ならこれに触ってくれ」


 人が多い原因を知ってる身としては心が若干痛むが、ゲームの中だししょうがないと割り切ろう。

 僕は、門番さんの言う通りに水晶玉に触る。すると、その水晶玉は青く光り、それを見た門番さんは手を差し出す。


「じゃあ1000ギレはあるか? ないならまあ一応借金って形にはなるが建て替えられるが」

「1000ギレですね……と、これでいいですかね?」

「よし、これが仮の身分証になる。早いところ正規の身分証を取るんだな。通っていいぞ」

「ありがとうございます~」


 通ってよしとの許可が出たので、街の中へと入る。街の中へ入ると、頭の中に声が流れてきた。


《街への到着を確認。チュートリアルクエストを受注しますか?》


 チュートリアルクエスト?

 そんなものがあるのか、と驚くがゲームだしまああるかと納得する。そしてクエストの受注をした。


《チュートリアルクエストの受注を確認。まずは冒険者協会へと向かってください》


 冒険者協会か……やっぱりそういうのがこの世界にもあるんだな。でも、どこにあるかわからないよな……聞いてみるか。

 僕は、そう思って近くを通りがかったガタイの良い男性に話しかけた。


「すいませーん、冒険者協会ってどこにありますか?」

「あ? って、見たことない顔だな。そういや今日は外からたくさん人が来てるって言ってたな……ああ、悪い。冒険者協会だな。ここをまっすぐ行って右に曲がったあとの右手側にあるぞ。」

「ありがとうございます!」

「へへっ、敬語はやめてくれ。元とはいえ同業者になるんだ。気になることがあったら全然聞きに来てくれていいからよ。あ、そうだ。クロムって名前を協会内で出してみろ、ちょっとはよくしてくれるやつがいるかもしれねぇぞ」

「わかり……わかった。ありがとう、クロム!」

「おう、じゃあな! 頑張れよ!」


 いい人だったな……NPCと話すとこういう情報を手に入れられるかもしれないってことか。積極的に会話はするべきかもしれないな。


「えーっと……ここでいいよな?」


 教えてもらった通りの道順を辿ると、かなり大きい建物がそこにはあった。看板には大きく冒険者協会、と書かれており、非常に目立っている。似たような服のおそらくプレイヤーであろう人たちが入るのをためらっているなか、僕は迷わず協会の戸を開けた。

 それと同時に、中に備え付けられている酒場らしき場所で酒を吞みかわし、大声でマウントを取り合い、煽りあっている人らがこちらを見る。しかし、特に興味が湧かなかったのか、すぐに目線は元に戻った。


「ようこそ、冒険者協会カルティエ支部へ。どのようなご用件ですか?」

「冒険者になりにきたんですけど、どうすればいいですか?」

「冒険者登録ですね、身分証はお持ちでしょうか?」

「仮のものなら持ってます。これ、どうぞ」

「……はい、承知しました。では、こちらの書類に必要事項の記入をお願いします。あ、文字は書けますか? 代筆も可能ですが」

「書けるので大丈夫です」


 そして少し離れた位置にある机へ行って書類への記入を始める。記入するのは名前とレベル、種族と職業くらいだった。深いところまで聞くのはマナー違反……的なやつなのか?


「書けました」

「……えー、では少々お待ちください」


 書き終えて先ほどと同じ人のところへ持っていく。そしたら受付?の人は奥の方へと消えていった。十分ほど待っていると、名前が呼ばれた。


「ファントムさんですね、あなたの冒険者カードです。身分証替わりにもなるので失くさないようにお願いします。それでは、冒険者についての説明が必要ですか?」

「あ、お願いします」


 そこから、とても簡単な冒険者についての講座が始まった。依頼の受け方や達成報告の仕方、協会内の設備についても軽く説明があったが、一番は冒険者のランク制度の話だろう。F~Sの7段階あって、登録したばかりの僕はFランク。やっぱり目指すならSランクを目指してみたいと思っている。なんてったって


「よーっす!!!」


 これからどうしようか、なんてことを考えていると後ろからドン! と人がぶつかってきた。


「……ファル?」

「へっへっへ、よくわかったな!」


 ファル。それは周斗がゲームでよく使っている名前だ。一応MMOゲームで本名とか特定されかねない名前を言うのはご法度だと、そう聞いていたので言ってみたのだが、やはりあっていたようだ。会って早々突撃をかましてきたファルの後ろには、同じ幼馴染である彩音あやねに似たプレイヤーや、慶太けいたに似たプレイヤーが顔を見せている。


「はぁ……とりあえず、ぶつかってきたことくらい謝れ馬鹿!!!」


♢♢♢♢♢♢


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