戦時中のおとぎ話

 Side 木里 翔太郎


 これは戦時中の話。

 

 奇跡のようなお話だ。


 敵の陸上戦艦の大部隊を装備は良いとは言え、少年兵だけのグループが撃退したと言うお話。


 それを成し遂げたのは俺達と彼達だった。


 

 =戦時中・真っ昼間の廃墟の市街地=

 

 俺達は廃墟の市街地に立て籠もり、敵の攻撃を凌いでいた。


『上の連中、俺達を捨て駒にするつもりか!?』


『あんな数相手にしてられるか!!』


『クソッ!! こんな事なら反乱でも起こしとけばよかった!!』


 味方――と言っても俺と同い年の少年兵が口々に言う。

 他の基地の少年、少女兵連中もいるが戦力として数えられるか――


 廃墟となった市街地に立て籠もり、陸上戦艦を中心とした敵の大部隊と交戦中だ。

 パワーローダーだけでなく、戦車や戦闘機、戦闘ヘリなど大判振る舞いだ。


 他の友軍――大人連中は俺達を囮にするか見捨てたかのどちらか考えるのが妥当だろう。

 

『手毬――生き延びられそうか?』


 物陰に隠れながら傍にいる手毬に言う。

 ピンク色のピッチリスーツでフライトユニットを搭載し、重武装の桜色のネイキッドローダー、桜花で武装している。


 他にも友人達が傍に控えていた。 


「今回ばかりは無茶ね。戦闘機に戦闘ヘリ、戦車――陸上戦艦までいる。味方は遥か後方よ――つまり見捨てるつもりね」


『よしんば上手く生き延びても纏めて始末されそうだな』


「同感――敵の懐に潜り込んだ方が生存率高いってどんな作戦よ」


『そうだな――悪いな手毬。俺のせいだ』


 流石にこれで最後かと思った。

 

「私も同罪よ。あの時――社会科見学の時に戦っていなければその場で死んでたし」


『そうだな――悪い。弱気になってた。足掻けるところまで足掻いてやる。それが俺達の誓いだったな』


「そうよ――ミク、ツカサ、タツヤ――あんたらは万が一の退路の確保よろしく。私達はあの戦艦に突っ込んでいくわ」


 友人達にそう言い残して俺達は飛び込んだ。



 たった二人に大した弾幕だ。

 手毬も俺も近付けやしねえ。

 やはり無茶があったか――


『他校にも無謀な馬鹿がいたもんだ――』


『ははは。そうですね』


 などと言ってると――漆黒とグレーのパワーローダー。両方とも恐らくアインブラッドタイプ。

 背後にも新型と思わしきアインブラッドタイプ混じりのパワーローダーがいた。

 

『俺は荒木 将一だ。あの社会科見学以来だな』


 と漆黒のパワーローダーが言う。


 荒木 将一と言うらしい。

両肩の上にブースター。

 背中の右側にバズーカで左側には折りたたみ式のキャノン砲だ。

 右手にはガンブレード。左手にはピストルを持つ。

 左手の側面には小さなシールドがついていた。


『ウチの比良坂学園もそっちの竹宮高校となんとか歯を食いしばって頑張ってるよ』


 と、将一が言いながら近付く敵を片付けて行く。


『こちら比良坂学園チーム、どうにか持ち堪えてまーす』


『竹宮高校チームもです!! だけど長くは持ちません!!』


 と後方の無線から危機的状況なのかどうなのかよくわからん明るい声が出てきた。

 俺は内心で(馬鹿野郎どもが・・・・・・)愚痴りながら言った。


『協力してくれ。せめて陸上戦艦をどうにかしないと』


『あいよ――なんか他人のような気がしないな』


『奇遇だな。俺もだ』


 お互い軽口を飛ばし合いながら両校合同の作戦がはじまる。

 不思議と息がピッタリ合った。

 

 お互いチーム単位で、時に個人同士でカバーしながら突き進んでいく。


「すみません!! 来ちゃいました」

 

 牛島 ミク:ネイキッドパワーローダー 桜花 フライト装備


『カッコイイところはとりっこなしですよ』


 和泉 ツカサ:アインブラッド・フルアーマータイプ


『こっちもアインブラッドタイプです。やれない事はないでしょう』


 相川 タツヤ:アインブラッド・ウイング


 などと――ウチの高校――主に俺達の学校の友人達だが――馬鹿はいたらしい。

 増援が来てよりやすくなった。


 敵のパワーローダーや無人機を蹴散らし、戦車や戦闘ヘリを破壊し、戦闘機を撃墜しつつ陸上戦艦に散開、包囲しつつ肉薄する。


 

 夕暮れ。

 

 今日を生き延びるために大勢の敵を殺した。

 見知った顔がいる味方も死んだ。


 ヴァイスハイト帝国の陸上戦艦が巨大な墓標のように黒煙を挙げて佇んでいる。


 戦場の跡地となったこの場所で大人達がまるで我が物顔のように歩き回っていた。


 こちらに目を合わそうとしない。


 たぶんも何も心が痛むからだろう。


「本当に子供だけでこれだけの戦果を――」


「俺達、なんのにために自衛隊にいるのかな――」


「子供だけにこんな事させ続けて本当にいいのか?」


 などと言っていた。

 だがどうでもいい。


 最近は日本よりもヴァイスハイト帝国の人間に対して親近感を抱くようになっていた。


 いっそヴァイスハイト帝国に寝返って一緒に日本を滅ぼすかと言う悪魔の考えが頭を過ぎるが――自分にも守りたい人がいる。


 家族や友人がいる。


 今は喜ぼう。


 生き延びられたことを。 

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