第4話


第??話


【竹花楽都side】


一高ワン子!」


俺は彼女の名を叫んだ。


部室へ続く廊下で、一高ワン子は振り返る。


「先輩……?

どうしたのだよ、こんなところで」


学校中を走り回ったせいで、俺の息は上がりきっている。


言葉を継ぐのに、ひどく時間がかかった。


「お願いだから、今は部室に行くな。

……藤先生に会うな」


「……何のことなのだよ……?」


俺は手の中の手紙を握りつぶした。


……言うべきなのか、藤先生のことを。


彼が一高ワン子を監視するために、全てを起こしたということを。


そして彼は俺を一度殺したのだということを。


ズキリ、と頭が痛む。


分かっている。

本当は言うべきとかそんな事を考えているのではないんだと。


言いたくないから、言わない理由を探しているだけなのだと。


それでも、彼女を傷つけやしまいかと思案してしまう。


「……先輩?」


黙りこくってしまった俺に向けて、彼女が心配そうに声をかける。


___夢術管理協会ってところに引き渡されて、きっとそこから出られない。


前回、彼女はそう言った。


そう覚悟していた。


……今更。


今更綺麗な言葉を並べ立てて、彼女を守って、それでどうする?

何を守れる?

何が進む?


現に彼女は全てを覚悟して、今ここにいるんだ。

彼女の足は、ほんの僅かに震えていた。


俺が、俺が覚悟を決めなくてどうする。


俺は唇を結んだ。


一高ワン子、お前はのことを覚えてるんだよな?

……伝えなくちゃいけない事がある」


彼女は“前回”という言葉に目を見開く。


どうか信じてくれ。

そう願いながら、俺は続けた。


「俺たちを騙しているのは———誰でもない、藤先生だ」

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