「紫の液体」
僕は夏休みの課題に追われていた。
「こんなん、絶対終わんねえよー!」
夏休みはあと一週間とちょっと。僕は今日という日まで課題に手を付けていなかった。僕が開始したのが遅かったのはあるけど、友達はもう終わっていて、僕だけになってしまった。
「やべえよぉ…母さんにも先生にも怒られるよ…」
課題に苦しんでいる時、僕の目の前に神が現れた。
「夏休みの課題に苦しんでいる君に、宿題がとっても簡単に終わるこの液体を授けよう。液体と言ったが、課題が濡れるわけではないぞ。この液体を課題に少しだけかけると答えが浮かび上がってくる。これで課題は終えられるぞ。ただし、使い過ぎには注意しなさい。あまり使いすぎると…おっと、時間が来てしまったようだ。では頑張れ、お主。」
神はそう言うと、僕に紫の液体が入った瓶を渡してきた。
「こんなのが本当に答えを出してくれんのかよ…」
半信半疑で、課題のプリントに液体を少しかける。
すると、本当に答えが出てきた。
「うわ!まじかよ!最高じゃねえか!ありがとう、神様!」
僕はもっとその液体の効果を欲してしまった。
「全部の空欄に液体を〜♪」
僕は埋まっていない空欄全てに紫の液体をかけた。
「おお!全部埋まった!よっしゃ!これで課題終わりだ!遊びいってきまーす!!」
僕は友達の家に遊びに行った。
帰ったのは17時くらいだった。僕は課題をファイルにしまっていないことを
思い出し、部屋に行った。すると驚きの光景が僕の目に写った。
「…え?」
課題のプリントが全て真っ白になっていたのだ。空欄だらけになっていたんじゃない。紙自体が真っ白になっていて、空欄どころか問題文さえもなくなっていた。跡形もなく全てが消えてしまった。
「ヤバイヤバイヤバイ!さすがにこれは先生激怒案件だ…!!」
僕はあることを思い出した。
「そういえばこれ、神様にもらったじゃん!おい、神!これはどういうことだ!課題を終わらせられると言っていたじゃないか!」
すると神は僕の元へ戻って、言った。
「だから言ったじゃないか。使いすぎには注意しなさいと。私は忠告してあげましたよ。」
「でも、使いすぎたら何が起こるのか、僕聞いてない!」
神は僕を見てため息を付いた。
「もっと周りをよく見なさい。視野が狭いからこのようなことになるのだ。その瓶の後ろ側に書いてあるだろう。何が起こるのか。」
「え…?」
僕は急いで瓶の後ろ側を見た。そこにはこう書いてあった。
「『使いすぎると跡形もなく消え去ります』…?」
「ほらな。言ったであろう。わしは悪くない。視野が狭い君の過失だよ。恨むなら自分を恨みなさい。これ以上は私が君に言うことはない。もう君のもとには現れないだろう。」
神はそう言うと徐々に姿を消していった。
「ごめんなさいごめんなさい!!!!!!!!!」
多分僕の声は神に届くことはなかっただろう。
翌日、僕が目覚めたときには課題は元通りになっていた。あの神様は僕の幻だったのだろうか。僕は、あの、現実だったのか夢だったのかもわからない出来事を振り返って、しっかり課題を進めることにした。
※この話はフィクションですが最後の文はノンフィクションであってほしいと願う作者凪なのでした。
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