3000字以内の一話完結型短編小説

凪@執筆休息中

「今の旦那さん」

 私は、いつものように買い物をして、帰ろうとしていた状態でした。

 いつものように、と言ったものの、大学時代とはまた少し違って、

 元夫との子を授かったあと、元夫は不倫をしました。当然離婚をしました。


 不倫をされたときには既に出産一週間前。私はあの人が許せなかった。

 ですが、お腹の子に元気のままで私と出会うためにはやはり栄養も大切ですし、

 ストレス等を貯めてはいけません。なので、私は夫のことなど頭から追い出して

 自分のために生活をしていました。


 出産三日前。私はすぐにでも病院に入院したかったのですが、あの時は既に親は

 他界していたので、頼れる人もおらず、かといって、タクシーを呼ぶ気力もほぼありませんでした。そんなとき、私は買い物を終え、よし、早く帰って体を休めよう、そう思っていた時、突然お腹に激しい痛みが私を襲いました。私はその場に座り込み、少しすれば歩けるようになって帰れるだろう、そんな甘い考えを持っていました。でも今回の腹痛は今までと違いました。


 私はすぐそこにあった木に身を委ね、腹痛と戦っていました。すると、下半身からなにやら水が出てきて、私はその場で死にそうになりました。破水が起こったのです。

 私は誰かに助けを求めたかったのですが、声が出ませんでした。痛みで意識が朦朧もうろうとしている中、ある男性が大丈夫ですか、今すぐ救急車呼びますね、と言ってくださいました。


 救急車が到着した頃には、私はほぼ意識がなく、母子ともに大変な状況下に置かれていました。


 目が覚めた頃には、私はいつの間にか病院のベッドに寝ていました。私は安心しました。その時私は赤ちゃんについて頭に浮かびました。


 ちょうどその時、お医者様がこちらに来てくれました。ですが、私は、そのお医者様に見覚えがあったのです。ですが、それよりも先に赤ちゃんが心配になりました。


「先生…。私の赤ちゃんは…?無事ですか…?」


 私がそう言うと、先生は微笑んで、


「ええ。早乙女さおとめさんの赤ちゃん、無事に産まれましたよ。元気な男の子ですよ。」


 私はその言葉を聞いた瞬間、涙が止まりませんでした。私は、もう一つ先生に聞きたいことがあったということを思い出しました。


「せ、先生…?私、先生の顔に見覚えがあるのですけど、どこかでお会いしましたか…?なぜか、とても最近会ったように感じるのですが…」


 先生は、私の手を強く握ってこう言いました。


「ええ。私は、木のそばでうずくまっていた早乙女さんを見つけ、救急車を呼んだ者です。あなたが無事でほんとに良かった。破水していたということはもう出産日も近かっただろうに、なぜ病院に行かなかったのですか?」


「ごめんなさい…。夫に不倫をされて、一人で赤ちゃんと私の世話をしていたんです…。あのときも…買い物に出かけていたら急に腹痛が襲ってきたんです…。本当に…先生があの場にいなかったら私…どうなっていたことか…感謝しかありません。私の我が子を救ってくれてありがとうございました。」


 その後も、先生は私の担当をしてくださいました。我が子の名前を一緒に考えてくれたり、我が子の成長を見届けてくれたり、一緒に我が子と散歩に連れて行ってくれました。そうしていくうちに、私達はお互い惹かれ合って、なんと先生から告白されました。私は喜んでその告白を受け入れました。


 そして、私達は3年後に結婚をし、今は息子のあきらと夫と一緒に仲良く幸せに暮らしています。








 ※この話はフィクションです。

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