第3話 ふたりだけのオフ会

 先日、キャシーさんのところへ行ってきました。彼女と出会ったアドベンチャーゲームはもうだいぶ前にサービス終了してしまいましたが今でも定期的にオフ会が開かれ彼女と話をするのが楽しみになっていますが、今回は珍しく彼女の仕事場に向かいます。あれからもうだいぶたちますが、もうそろそろお姉ちゃんに注ぎ込まれた薬液の交換をしたほうがいいかな、と思って。それで彼女に前日に撮ってきたお姉ちゃんの写真を見せました。

「見た感じは大丈夫そうね。でも万が一顔色が変わったりといった良くない変化があったらすぐに連絡してくださいね」

 それを聞いて私はほっと安心しました。キャシーさんは続けて、

「もともとこのプランの始まりは祖父の息子、つまり私のおじですが、私が生まれる前の彼がまだ小さい頃、突然交通事故で亡くなって、あまりの喪失感が祖父を襲って当時の技術を注ぎ込んで腕によりをかけて処置して式が終わった後に、家までこっそり移動し、ガラスケースに入れて寝かせたり、たまにリビングやダイニングにある椅子に座らせたことが始まりなの。私もそんな彼に何回か会ったことがあるの」

「あの日ね、エミリーさんを病院からうちに連れて行くときね、仕事柄、絶対に顔に出せないけど、心の中ではそれこそ号泣していたの。あなたの立ちすくんだ姿を見て。そして帰社してから悲しい気持ちを振り切って仕事を始めたの。処置作業が終わったらエミリーさんをうちのホールの奥に用意した椅子に座らせてあなたの友人や親戚一同を出迎えたの。普通、箱に入れると思うでしょ?うちはそんなにアコギじゃないの。あの箱は2千ドルくらいするから。埋めるんだったら当然必要だけどそうじゃないですよね」

「そしてエミリーさんをバンで家に送ってやっと仕事が一段落、というところでほっとしたの。大事な娘さんを預かっている以上失敗は許されないのでここでようやく一息つけたの」

「改めていろいろとお世話していただいてありがとうございました」

私はそれを聞いてキャシーさんには頭が上がらないと思ってしまいました。

「いえいえ、私たちはプロ中のプロですからそんなのは当たり前のことですの」

彼女はこう返しました。そして、

「あなた、確か今ゲーム会社でエンジニアをしているんだったよね?ギルド仲間にアルバイトに誘われたのをきっかけにして卒業後はそのまま入社したのでしたよね。お互い大変な仕事だと思うの。だから一緒に頑張りましょうね」

逆に彼女に励まされました。そう、私は今コンピューターサイエンスの修士を出た駆け出しITエンジニアなのです。


 私は家に帰った後いつものようにアクリル板越しにお姉ちゃんの寝顔を眺めてほっとした気分になりました。

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