これでも私は、頂に君臨する魔法士なんです

とすごい

第1話 ユースティア・グレイス

「はぁ。俺が行ったところでだよなー」


そんな言葉をこぼすのは、世界最強の魔法士であるユースティア・グレイスだった。


 彼が最強と呼ばれる所以は希少な氷属性を扱い、マナ制限なしで魔法を発動できるためであった。

 この世界では、どんな人間でも体中にマナをわずかでも持っており、マナを変換して「火、水、風、大地」の中から適正がある1属性の魔法を扱うことができるようになっている。ごく稀に4属性以外の「雷、氷、光」属性などに適正がある者もいる。

 また、各個人の戦闘力を自動で判断するシステム内の序列が高順位の者は、体内に保有しているマナだけでなく自然に存在するマナを変換して魔法を発動できるため、マナ枯渇が起きず威力も大きくなる。


 そして本日は3年に1度行われる天頂会議、各国を代表する序列上位の魔法士たちが国の情勢や魔法に関する問題などを話し合う日であった。


「そんなこと言っちゃって。ユースちゃんがいないと天頂会議は始まらないでしょ。」


「母さん、俺まだ13歳だよ?あんな重い空気の場所は流石にしんどいよ~。」


会議に参加する魔法士たちの中でもユースティアは圧倒的に若く、他の参加者は各国を代表している有名人ばかりで正直とても辛い。自分宛てに届いた招待状も母さんに勝手に返事されたし、重い腰をあげ身支度を始める。


「ユースちゃん?会議にはお父さんが用意してくれたローブを着ていくのよね?」


「そうだよ~。流石にあの人たちの前で普段着は、ねぇ?」


父さんが用意してくれたローブは、13歳の誕生日の日にプレゼントでいただいたものだ。ローブは黒をベースに俺の特徴である氷属性をイメージした青白いラインがあり、めちゃくちゃかっこいい!


 ローブに着替えた俺は招待状をもって玄関に向かう。


「じゃあ、母さん行ってくるね~」


「気をつけていってらっしゃい~。」


 開催場所は王宮の近くにある記念ドームだったよな~。始まるまで後1時間以上あるし、ゆっくり歩いて行こうか。にしても天頂会議が行われる期間なだけあって普段より街の人が多い。大通りにはどうやら出店があるらしく、好物のココアを探しながら歩いているが、見当たらないので葡萄のジュースを購入し記念ドームに向かって大通りを進む。


 しばらく歩いていると、王国の騎士団がちらほら見えたので「いつも守ってくれてありがとう!」と心の中でお礼をする。流石に人が多すぎるので、ちょっと遠回りになるけど会議の時間は余裕だし、路地裏を通って向かうことに決めた。


 路地裏を数分歩いていると、前からザ・犯罪者な見た目の3人組がこっちに走りながら怒鳴りつけてきた。


「どけっ!クソガキッッ!!」


「リーダー!前にいるガキはどうしやしょうか?」


「お前ら、ちょっと待て。計画には無かったがこのガキも攫うぞ。高そうな服きてるしよぉ~?今日のおれはツイてるなぁ!?ガイン、できるだけ傷つけずに捕まえろ」


「うっす、リーダー!そういうことだクソガキッ!恨むなら自分の悪運を恨むんだな」


 いまどき誘拐とかどうせ捕まるんだし、まともに働けばいいのに。そんなことより布に巻かれてる人がいるなぁ。大通りにいた騎士団たちは何をやっているんだ?面倒くさいけど、とりあえず会話してみるかぁ。


「ねぇ、おじさん達。犯罪は良くないと思うよ?あと後ろで担がれている人を渡してくれない?」


「なんだぁ?この状況分かってるのかクソガキ。まぁ今は気分がいいから特別に教えてやるよ。攫ったこいつはなぁ、珍しい髪色だったんだぜ??」


 そう言うとリーダーと呼ばれていた男は、誘拐されていた人に巻かれていた布を勢いよく剥がした。布で覆われていたため見えていなかったが、誘拐されていたのは自分と同じくらいの歳できれいな金髪の少女であった。


 金髪?金髪といえばこの国の王族の特徴だよな。でも、なんで王族が誘拐なんかされているんだ?


「おじさん、今ならまだ死刑で済むと思うから自首したほうがいいよ。その方が誰か知らないんでしょ?」


「あ?こんなガキ知らねぇよ。僕、おじさんに教えてくれるかな?」


「はぁ。俺も名前までは覚えていないけどここリフレット王国の王女様だよ。だから怪我の1つでもさせてしまったら分かるよね?俺もこの後予定あるし、はやく王女様を渡してもらえる?」


「そっかぁ、この国の王女だったのか~。やっぱ今日はツイてるなぁ。高く売れそうだ」


「はい、リーダー!これで俺らも一攫千金ですねぇ!」


「そろそろ移動してーし、もうやっちまえ。」


 リーダーの男がそういうと、手下と思われる男がナイフをこちらに向けながら走ってきた。俺は、忠告したのになぁ。


「――――コキュートス。」


 3人の男たちは自分たちが今、何をされたのか理解する間もなく、氷塊に閉じ込められたのであった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

これでも私は、頂に君臨する魔法士なんです とすごい @tosugoi

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ