それならいっそ来世は虫に

千千

『嫌よ嫌よも好きのうち』では絶対にない

 わたしは虫が大、大大嫌いだ。天敵といってもいい。

 だから虫が謳歌おうかしてそうな夏も苦手だ。

 秋生まれのわたしは、“やはり”というか“定め”というか、秋が好き。ついで春に冬。

 秋>春≧冬>>>>~~~~>夏、となるだろうか。

 汗をかくのがいやだとか、日に焼けるとなにかともう取り返しがつかなくなりそうだとか、前のマンションに住んでいたときだと大通りに面していたため『パラリラ、パラリラ』が増えてうるさいとか、などがあるが、それらよりも断然いちばんの理由は、『虫が多いから』だ。


 ………………………………。


 なぜ、きみたちは、こんなに嫌っているわたしに寄ってくるのか…………。


 思い起こせば、

 子供のころ、夏休みに田舎のおばあちゃんの家に泊まりにいったある日のこと。

 裏山のお墓に参った帰り、あぜ道で、うしろから来るおばあちゃんたちを待っていた。

 そのとき、足元になにか感じるものがあり、目を向けると――――


 履いていたビーチサンダルに、足に、無数のアリが群がっていた。


 わたし、大号泣。

 おばあちゃんが慌てて払ってくれた。


 お墓参りに行けば、ひとりだけ蚊に刺される。いくつも刺される。


 地下鉄に乗っているとき頭にが、道を歩いているとき眉間にはえが、止まった。


 テレビを観ていて、気づくと、ふくらはぎをムカデがはっていた。


 別の日。気づくと、Gが足元に寄り添っていた。


 使い魔か。


 親戚がやっている畑でできた白菜を切れば、ミミズ真っ二つ。一匹のミミズが二匹に増えた。どちらも、まな板の上でウゴウゴ動いている。


 ギャーーーー。


「目が悪いので、○○駅に着いたらトイレまで連れていってください」と、よくわからない証明書のようなカードを見せられながら男性に言われた電車の中。

 じっくり見せてもらってないからなんともいえないけれど、困っているというのなら、お手伝いするべきだと思ったが……。

 そのときは、○○駅よりも、いくつも手前の駅で降りる予定だったので、薄情かとも思いつつ、トイレに行きたいのならと、


「△△駅だったらお連れしますよ」

「………………」


 ぷいっと、次に停車した駅で降りていった。


 しっかり歩いてるやん。


 またあるときは、帰宅途中、線路沿いを歩いていると、車が横にスススとやってきて、窓がウィーン。


「□□駅までの道を教えてほしいんですけど」


 と、男性。


「このまま線路沿いを行くと着きますよ」


 と、わたし。


「よかったら一緒に行ってくれませんか?車に乗って」

「まっすぐですよ。ほぼまっすぐ。ここまっすぐ」

「………………」


 ブロロロロロ。


 こういうのも、虫、というのだろうか。変態と書いてムシと呼ぶってか。

 でもこの手の“虫”は、獲物の年齢制限があるようだ。最近では…………。

 うれしいような悲しいような、少々複雑である。


 このあいだ気まぐれで、来世がわかる心理テストなるものをやってみた。


 結果、わたしは、



 だった。


 なにも無い、の、『む』。


 人間でもなく、天国に行くでもなく――――


 はっ!


 …………むしの、『む』なのか?


 考えてみれば、自分が虫だと、怖いだの気持ち悪いだのと感じることはないかもしれない。


 プイ~ンと飛んで、華麗なステップで攻撃を避ける。

 悲鳴を上げて逃げ回る人を追いかける。


 えっへっへ。


 一周回って、虫になってしまうのもアリかもしれない。



                   <おしまい>


                      ありがとうございました。



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それならいっそ来世は虫に 千千 @rinosensqou

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