第15話 お昼休み

「じゃあ、わたしはこれくらいで行くよ」


 連絡のために俺とスマホで連絡先を交換すると山川先輩は部室に戻るようだった。


「あれ、ご飯一緒に食べませんか?」


「うん。ちょっと調べなくちゃならないことができたからな。部室で食べながら調べることにする」


 きっと部室に篭ってパソコンで由奈のことを調べるのだろう。いや、それよりも仕事の斡旋か。仕事を探してる山川先輩の姿が容易に想像できてしまい俺は思わず首を振った。


「どうしたんだよ、山川先輩に会えたか?」


「はい、由奈のことを色々聞いてもらえました」


 俺は雅人に今の説明をした。雅人は腕を組んでうんうんと聞いていた。


「そうか山川先輩でも分からないのか。それにしてもそれは不味いな」


「仕事の斡旋だろ」


「オカルトメインのな」


「はっ!?」


「あの先輩の仕事だぞ、まともなものが来るわけあるかよ」


 俺はそれ聞いて底知れず不安になってきた。


「まあ、食おうや、それにしても由奈ちゃんの弁当美味そうだな」


「食べますか?」


「ダメだ!」


「はい!?」


 由奈、女の子が自分の弁当食べさせるのは好きな男だけだぞ。色々とややこしくなるんだから。


「雅人、中身は俺も同じだ。どれが食いたい?」


「じゃあ、卵をもらうわ」


 雅人はひょいと俺の卵焼きを一つとって口に放り込んだ。


「うわ、無茶苦茶美味いじゃねえか。由奈ちゃんいいお嫁さんになれそうだよ」


「本当ですか! 嬉しいです」


 由奈は嬉しそうに手を打って俺を見た。目が輝いている。


「ブライダルフェアとか……」


「行かない」


「何故ですか!?」


 由奈が頬を膨らませて俺を見る。


「俺は由奈が幽霊なのか違うのか、それも含めて調べないとならない。そもそも順番がおかしいだろ」


「じゃあ、全てが終わったら、もらってもらえますか?」


 俺を見る無垢な視線を見て、俺は目を逸らした。


「まあ、考えとく」


「なんだよ、拓人連れないじゃねえか。そこは、当たり前だろ、だろ」


「そうですよ、たっくん冷たいんですよ。雅人さんも言ってやってくださいね」


 数日前に会った女の子をいきなり好きになると言うほど、俺は単純じゃない。そりゃさ、いい娘だと思うよ。でも、今はもっと重要なことあるだろ。それが解決したら、その時に考えるさ。


 雅人を見ると俺を揶揄っているのがハッキリと分かる笑みを浮かべていた。今の俺の状況を楽しんでるのかよ。


「まあまあ、拓人はツンデレだからよ」


「ツンデレ!?」


「アニメとかにあるだろ。初めはツンツンしてるんだけど、一度デレると一気に落ちていく女の子」


「たっくんは女の子なのですか?」


「うーん、どうなんだろうな」


 いや、そこは悩むところでは無いはずだろ。俺はどう見ても男だろ。それにツンデレっていつデレるんだよ。


 こうして昼の貴重な休憩時間は、雅人のボケと由奈の天然のボケで終わった。


「あー、美味かった」


「本当、最高だねえ。羨ましいよ」


「由美ちゃんは作ってくれないのか?」


「まだ、昨日のデートが初めてだぞ。そんなの頼めるかよ」


 確かにそうか。普通ならこんなに急接近するわけないよな。


 次の授業のチャイムが鳴る。


「あっ、やべえ。行かないとな」


「由奈は少し待ってて。これからゼミだから多分由奈入れないと思う」


「ここで待ってたらいいですか?」


「うん、変な人に声をかけられてもついていかないこと!」


「おいおい、小さい女の子じゃあるまいし」


 俺が心配そうに由奈に言うと雅人が俺の肩を叩いた。


 確かにそうなのだが、由奈ならあり得ないわけじゃない。


「それとあの能力は俺の許可なく使ったらダメだぞ」


「わかりました」


 本当に分かってるのか分からないがニッコリと笑った。




◇◇◇


 

 結局、ゼミの先生に長いこと捕まって終わった時には30分も予定時間を超過していた。


「由奈のところに行くわ」


「おっ、そうだな。じゃあ、バイト先で会おうや」


 俺は由奈を送ってからバイトに行くのでシフトを1時間遅らせてもらった。土地勘のない由奈を一人で帰すことはできない。


 家についてバイト先に行こうとすると由奈が聞いてきた。


「今日は何時くらいになりますか?」


「多分、11時くらいになると思う。遅くなるから先に寝ておいてくれていいよ」


「そんなわけにはいきませんよ」


 由奈が真剣な表情で言う。


「まあ、眠たくなったら寝てていいからな」


 俺はそれだけ言うとバイト先に飛び出した。


 バイトは月曜日から客も多く忙しかった。土日外してもらってるんだから文句は言えないが、ここの店、客多すぎだろ。


「拓人、休憩入っていいぞ」


「ありがてえ」


 俺は休憩中にスマホを確認した。由奈にはまだスマホを持たせてないから、連絡はない。そうだ休みに由奈のスマホも買っておいた方がいいだろう。連絡が取れないのは不便だ。


 それでなくても一人でいさせることは心配だ。大丈夫だろうか?


 そう思ってスマホを見ると山川先輩から、連絡が来ていた。

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好きだと告白され幽霊と同棲することになったのだが。もしかして、取り憑かれてる!? 楽園 @rakuen3

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