第5項

元来真面目な性格だった主人公には親の言いつけで娶ることとなった婚約者がいた。

入籍の直前、異国の地への期間限定赴任を命ぜられる。


赴任先で本当の愛を求める美しい女性との邂逅、お互いを求め合う日々、婚約者の存在に葛藤する日々。


凡庸ながらも堅実に生きてきた主人公の心の葛藤と

エキゾチックな情景が心を奪う作品だった。


結局、主人公は婚約者を手離した。

初めて自分の意思で自分の人生を選択したのであった。


決められたレールに乗っているようで

そのレールは誰に決められたものでもない。


誰もが自分の選択が勝手に作り出した道の上なのである。

不満を言えど、誰に届くわけでもない。その道には自分しかいないのだ。


見終わった後、自分が好きだったものに囲まれていた頃の自分を思い出した。


「ここはきっとまだ途中なんだって信じたい。」


徐々にではあるが薄く、だが確実に彼女の世界は色づきを取り戻していった。

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