第4項

ひんやりとした暗い空気が鼻を抜ける。

白い吐息が電灯に照らされている。

空にはやたらと目立つ星があった。

その隣に見える小さな光をやけに気に入った。


今日も特別なことはなかった。


家に着くと、おもむろに部屋着に着替える。

厚手の靴下のおかげでフラミンゴのような動きは必要ない。


ダイニングチェアに腰を下ろす。

帰り道買ってきた総菜とビールを片手に雑誌に手を伸ばす。


「モノクローム現代」


パラパラとページをめくる。


昔、好きだった映画の特集ページで手が止まる。


「1990年代の隠れた名作映画10選」


この映画、自分の周りで好きという人に出会ったことがなかった。

今になって流行りだしたことに嬉しさの反面、悲しさを覚えた。


「この映画、最後に見たのいつだっけか。」


好きだったこと以外、途端には思い出せないでいた。

週末、時間を設けて映画を見てみることにした。


不意に外に目をやる。

変わらず光を放つ目立つ星がある。

その隣に小さな光はない。


またひとつ、空から星が消えたようだった。

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