第4話 もう一人の自分
あれから数十分ほど経ったら痛みが和らいできた。
「ふぅ……。やっと治まった。」
川の水をそのまま飲んでしまったため、激しい腹痛や嘔吐に襲われて数十分程苦しむことになったが、やっと治ったので行動を起こす。
食中毒はなかなか辛かったな。初めて体験したから、どれくらい苦しいのかわからなかったので、いい経験になった。
……他の人もこれを経験しているのかな。そう考えたら、僕が一般の人に近づいてきている気がする。
よし。せっかく健康になったことだし、『普通』の人生を歩んでいこう。今はまさに、僕が『普通』の人になっていく記念の一本を歩んだと言っても過言ではないはずだ。
……そもそも普通の人生とは何だ?
結論が出ない
この短時間(?)でいろいろなことが起きたので、状況整理をする。
川を発見して水分補給をした。その後に食料探しをしていたら、川の水をそのまま飲んだために食中毒になり、貴重な時間を失ってしまった。だから、速やかに食料探しを始めなければならない。これが現在だ。
「ならば、何か考えてないで早く食料を探しなよ!」と思うかもしれないが、ここら辺には食料になるものがないようなので、近場を探索しても意味がない。つまり、更に奥に行かなければならないのだ。
そして、この「更に奥」というのが僕を悩ましている原因である。この奥は、より一層樹木が生い茂っており、ここより暗い。ただ、これだけでは悩む必要がない。たかが少し暗い程度であり、夜目が
しかし、奥には何やら嫌な感じがする。「危険だ」と、「蜷ク陦鬯シ」としての本能が告げているのだ。「ただの勘」で済ませてしまうのは簡単だろうが、「莠コ髢」の本能は馬鹿にできないので悩んでいる。
あれ? 何だか違和感があるな……。気のせいか?
……それはともかく、この先に行くかどうかを決めよう。奥に行かなければ食料を得られる可能性は低いだろう。だが、現在はリスクを冒してまで奥に行かなればならない状況ではないはずだ。
そんなことを考えていたら、頭の中でもう一人の自分が囁いてきたような気がした。
――テメェは勘違いをしているようだが、今はリスクとかを気にして行動するような状況じゃねぇんだよ。そんなときにこんな単純なことで迷っているのはおかしいぞ。考えてみればわかることだ。このまま安全なところで食い物を探して、見つからなかったときに、「はい、何もありませんでした~」と言って果てるのか?それとも、腹が減りすぎて碌に動けねぇ状態で奥に行くのか?そんな愚かなことをするぐらいなら
そうか。迷っている暇はない。僕は生きたいんだ。僕が生まれた理由を探したいんだ! そうだろ? 黒雨零。
そうと決まれば出発だ。悩みも
そう思った僕は森の奥に足を踏み入れた。
――このとき、常識的に考えるならおかしいことを、僕は少しも違和感を抱くことがなかった。
……これが幸となるのかは、神のみぞ知る。
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今回の話はこれから重要になってくるかもしれません。
……最後の文を書いていて「
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