第22話 凛音の正体

 


 それでは先ず、菊池凛音ちゃんにはどんな秘密が隠されているのか?


 実は…凛音は女の子ではない。理生でX君だった。それでは何故女の子の変装をする必要が有ったのか?


(その理由は簡単だ。男の子が男の子を好きになる事が異様な事だと周りからイヤと言うほど思い知らされていた。さりとて、学校でも自分が男の子に思い詰めて、やっとの事告白しても学校中の注目の的では無くて、学校中の誹謗中傷をもろに浴びる事になる。それは、今までも幾度となく味わってきた苦い思い出だった。でも……俺にだって欲望は有る。高校生の俺は只の親の自慢の息子で人生を送る事に疲れた。勿論学業にも専念するが、自分の想いのままの恋だってしたい。そのくらい許してくれたって良いじゃないか?)


 

 理生は自分がゲイである事を両親に打ち明けられずにいる。それはどうしてかと言うと、周りからの理生に対する期待度の高さが尋常じゃないという事が言える。そんな羨望を一身に浴びていた子が、ゲイだなんて到底言える筈がない。


 小さい頃から可愛い子供の代名詞のように周りから称賛されて、両親はそれが当然であり、当たり前と有頂天になっている。


 それでも…物心ついた3歳ぐらいの頃は、どんなヤンチャをしても失敗をしても全て許され、子供の盾になり損得抜きの真実の愛を全身全霊で浴びていられたのに………。


 いつから変わったのだろうか?

 

 やがてそんなやんちゃな子供が、家で閉じ込めておいては悪さが増長し爆発するので思いっきり遊ばせれば、満足するだろうと只々子供可愛さに屋外に連れ出していたのだったが、どこに連れ出しても「わ~な~んて可愛い子供」最初のうちは只のおべんちゃらと喜んだふりをしていた母だったが、その称賛は小さな子供からお年寄りまで世代を超えて誰しもが感じる美しい少年だと悟った母。


 やがては、赤ちゃん子役、幼児子役にとまで言われる始末。


 こうして…母は子供をいつくしむ母から、やがては高価なアクセサリ-として理生を連れて歩くようになって行った。



 小学校に上がると今度は、両親には自慢がまたひとつ増えた。それは成績がズバ抜けて優秀な事。更には小学生の高学年になるとまたひとつスポ-ツ万能と言う武器が備わった。その両親の増長ぶり、のぼせぶりは相当なもので、人に会いさえすれば息子を見せびらかし人様に自慢するのが、何よりもの至福の時間となって行った。


 また。ご近所のマダムたちも、これが女の子だと自分との対比にコンプレックスで鼻につくのだが、美少年は別だ。美しい少年を目の前に只々目を輝かせて羨望の眼差しで、まるで手の届かない憧れのスタ-に有った時の少女のような、表情を理生に向ける有り様。


 こんな羨望称賛の嵐の坊やの母は息子と一緒に出歩くのが何よりもの幸せ。そんな母にこんなとんでもない「LGBT」の話なんか口が裂けても言えない。


「ワ~な~んて可愛い坊や💛💛💛」


「本当に綺麗な坊や」

 益々増長する母


「オ-ッホッホッホ」

 

 だが、理生は幼少期から人に言えない違和感を感じていた。女の子に全くと言って魅力を感じない。そして……男の子の事が気になって仕方がない。だが、正直に男の子に自分の想いを告白しても気味悪がられるだけ。


 そんな時に、同じクラスの大親友19歳の少年友樹に【レンタル恋人】恋人代行で彼氏・彼女とデートや恋愛してお金が貰えるサービスを聞いた。


 理生は「これだ!」とピンと来た。自分自身の恋愛感情を誰に偏見も持たれずに伸び伸びと、今までの良い子の仮面を脱ぎ捨て、本能のままに生きれる場所はここだと確信した。


 だが、レンタル彼氏に従業員登録すれば相手は女性が対象になる。俺は女には恋愛感情は湧かない。


 だが、「レンタル彼女」に従業員登録すればお客様は男という事になる。こうして変装して両方に登録していた。


 それでも……面接の時ばれなかったのか?まぁ最初は女装をしている時に、店長にスカウトされた身だったので、案外甘々だった。だが身元がしっかりしている事だけは要求されたが、それは全く問題なし。父親は一流企業の部長だ。


 最初は、ありのままの男の理生でレンタル彼氏として、女性のお客様とデートをしていたが、これでは本来の目的が達成できない。


(俺は男が好きなんだ!)


 こうして…長い髪の桂を被りお化粧をして、束の間の自由を謳歌していた。そんな時に余りの完璧なスタイルと美しい容姿に、恋人代行サービス社長に声を掛けられた。


 そして…レンタル彼女として働き出した。だが、恐ろしい事件が起きる………。






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