第19話 魔性の女

 

 

 銀さんと田淵両刑事は今日もこの猟奇的殺人事件で四方八方飛び回っている。


「最初に起きた首なし死体事件は、廃墟となっていた民家から発見された豊明市の43歳の男性Tさんだが、被害者だとばかり思っていたがとんでもないスケコマシだったらしい」


「銀さんそれは一体どういう意味ですか?」


「それが……どうも……女絡みの線も捨てきれぬ」


「エエ——ッ!高校生同士の「LGBT」ゲイを暴露された事への復讐心から起こった事件では無かったのですか?」


「だから言ったではないか?「LGBT」問題にばかり固執してはならぬと……」


「銀さん、詳しく教えて下さい」


「そうそうワシもその話を聞いた時はビックリしてしまった。嗚呼……おうじょうこいたアッ!ゴホン!共通語!共通語!……ところでだ。最初に起きた首なし死体事件を深く掘り下げて行こう。最初の事件は廃墟となっていた民家から発見された豊明市の43歳の男性Tさんだが、Tさんは父親の経営する「博多玉露抹茶バウム」の副社長で岡崎市にあったⅯ百貨店と名古屋駅前のT百貨店を任されていたが、2010年に岡崎市のⅯ百貨店が閉店した事によって、名古屋駅前のT百貨店一店だけに力を注いでいたらしい。だから……最初は岡崎の賃貸マンションで生活していたが、最初のうちは両方の店を行き来しなければいけなかったので、中間地点豊明市に一戸建てを購入した。そして…豊明市の廃墟となっていた民家から首なし死体で見付かった。更に犯人のものなのか、イヤリングが見付かったその事件だが、岡崎市にある「菊乃屋」と言う和菓子屋社長とも顔見知りで長男同士が同い年ということもあり、親しく付き合っていたと言う情報を耳にした。そして…「菊乃屋」の社長夫人とTさんが抜き差しならぬ関係になり、現場に落ちていたのは「菊乃屋」の社長夫人の物では無いのかという憶測まで飛んでいる。エライ話に発展したものだ。ともかくその社長夫人がどえりゃあベッピンさんらしい。アッ!また言うてしもうた……共通語!共通語!早速当たって見るとしよう」


「嗚呼……このイヤリングは重要な手掛かりになりますね、社長夫人の物なのかはまだ分かりませんが、重要な物的証拠のひとつには違いありませんね。嗚呼……でも……?既に離婚しているらしいですが?って事は「菊乃屋」の社長が2人の関係に気付いて離婚になったのかも知れませんね?それでも……離婚したのはもう2年も前の事……何か……釈然としませんね?」こうして2人は元社長夫人の元に向かった。



  ***


 岡崎市の「菊乃屋」の息子流星の住むマンションにやって来た銀さんと田淵両刑事は早速インタ―ホンを押した。すると噂にたがわぬ美しい女性が玄関先に姿を現した。

「警察の者だが?チョットお聞きしたい事がありまして……あなた首なし死体で発見されたTさんの事ご存じですよね?」


「アッ!ご近所様に……聞かれでもしたら……チョット……ともかく……お上がり下さい」


 ご近所さんに醜態を晒したくなかった流星の母梨華は、慌てて両刑事を家の中に招き入れた。


「それでは早速お聞きしますが、あなたとTさん(隆史さん)が不倫関係にあったのは事実ですか?ハッキリ言って下さい!」


「いえ……そのような事はありません」


「それでも……あなたの元夫で「菊乃屋」の社長が、あなたとTさん(隆史さん)が不倫している事に凄く心を痛めていたと言う情報を聞きつけましてね?それで離婚になったのだと「菊乃屋」の番頭頭から情報を入手しました」


「それは……それは……違います。それは……離婚の原因は夫の浮気です。豊田店の女店長との浮気が原因で離婚になったのです」


「へえ—?変ですね。豊田店の女店長は確かに仕事の良く出来る優秀な人材ですが、あなたと離婚してからの関係だと聞いています。あなた達2人が、中々切れない関係に業を煮やして我慢の限界を通り越して、遂に別れたのだと聞きましたが?」


「そして…このイヤリングが現場に落ちていましたが、このイヤリング奥さんの物ですか?」


「……い…い…いえ……チチ違います」


「ですが、「菊乃屋」岡崎本店の従業員の1人が奥様の物だとハッキリ言っていました。どうしてそのイヤリングが奥様の物だと気付いたのかというと、『奥様はこのルビーのイヤリングが大層お気に入りで、慰安旅行にも何度かお付けになっていらっしゃいました』と言うのです。この話はどう説明が付くのですか?いい加減な噓はいけません」


「ウウウウッシクシク(´;ω;`)ウゥゥ実は…実は…あの夜私は隆史さんとドライブを楽しみ帰路に着こうとしていました。ウウウ(ノД`)・゜・。ウウウワァ~~ン😭ワァ~~ン😭その時……私達の車の後ろを執拗に付けてくる車が有ったのです。何か気味が悪いと不安に思っていると、私の携帯電話が鳴り響いたのです。電話を掛けて来たのはズバリ英会話の講師。そして『絶対に許さない』と言って来たのです。私も独身になった身の上、お金は元夫が生活面と養育費を支払ってくれていますので時間が空くとお友達と海外旅行を楽しんでおりました。ですが人間とは欲深いもので、お友達が英語ペラペラなのが羨ましく思いまして……時々英会話の先生から個人レッスンを受けておりました。そんな時に時間も延長して頂いたりして、それこそお金に換算したらかなりなものになります。そんな時に……そんな時に……お恥ずかしい話ですが、先生が……私を求めて来たのです。元夫との別れた原因が私にあるので、夫も必要以上のお金は援助してくれません。ですが……息子が『ママと生活したい』と言ってくれたので夫も息子に会いたさに必要最低限度は払ってくれます。でも……英会話の個人レッスンもバカになりません。そんなものまで元夫は払ってくれません。それで……求めに応じたら英会話の延長分は要らないと言って来たのです。それで……ついつい求めに応じたのです。そして…スッカリ羽を伸ばして先生に誘われるがまま出来心で、先生とも深い関係になってしまったのです。でも……それは一瞬の気の迷いだったのです。私が本当に愛していたのは隆史さんだけです。でも……先生の方は私に夢中になったのです。ウウウウッシクシク(´;ω;`)ウゥゥ……私の不審な行動に気付き、こっそり跡を付けていたみたいで……そして…私達の車の後ろを走って来て私の携帯電話に掛けて来て『絶対に許さない』と言って来たのです。英会話の講師とは出来心です。だから本当に愛していたのは隆史さんです。それで……怖くなって喫茶店で暫く3人で話し合ったのです。それでも……埒が明かなく、そして喫茶店から出て先生の方が私を強引に自分の車に乗せようとしたのです。その時3人はもみ合いになり私のイヤリングが、何かのはずみで車の中に入ったのか、2人の男性のバックかポケットに入ったかしたのだと思います。私はその後隆史さんに送って貰いマンションに帰りました。ウウウッ(´;ω;`)ウゥそして…朝のニュースで聞いて私は……私は……ウウウ(ノД`)・゜・。ウウウワァ~~ン😭ワァ~~ン😭目の前が真っ暗になりました。ウウウ(ノД`)・゜・。」


「……という事は犯人は、犯人は英会話の講師という事?」


「それでも……あなたのような魅力的な方が好きになる隆史さんは、相当魅力的な男性とお見受けします。そんな旦那さんを夫に持つ奥様が2人の関係を、知らないという事があるのでしょうか?」


「嗚呼……嫉妬深い奥様らしいのですが、受験を控えたお嬢さんと高校生同士の「LGBT」ゲイ暴露問題で息子さんの勝君が大変な状態ですから、それ所では無いんじゃないですかね?」


 銀さんと田淵両刑事は早速英会話教室の講師に聞き取りに行った。

 魔性の女梨華を巡っての争いの果ての殺人なのか?全く見えて来ない犯行動機。


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