夢幻のリインカネーション

トロすけ

初めまして

 虹を見た夢を見ていた。

 一人でだったか、はたまた誰かが傍らに居たのかも知れない。

 はっきりと覚えているのは、自分の頬に温もりを一筋感じた事だった。


 夢と感じたのは、まるで幻でも見たかの様に唐突に消えたからだ。


 今認識できるのは、何も感じない、黒とも透明ともとれる『無』のみ。




「おはよう、良い夢は見られたかい?」



 ゆらりと揺れる小さな光。

 ソレから唐突に挨拶された。

「………ッ。……!?」

 挨拶を返そうとしたが、声が出ない。

 状況が掴めず混乱しアタフタするも、そもそも手や足、いや、身体が……無い?

 加速する混乱、何も出来ない虚無感に頭が痛くなりそうだ。頭も無いし痛くもならないけど…


「あぁ、ごめんね?キミは今、眠っているんだよ。更に言えば、精神だけ来たって感じかな?そしてココは…うん、『夢と幻の空間世界』とでも言っておくよ。」


 なるほど、眠っていたのか。光の言葉がやけにすんなりと沁み、納得してしまう。

 しかし、夢の中で夢を見るとは、中々珍しい…のかもしれない。いや、そもそも夢なのかも怪しく感じる。目の前の喋る小さな光も、ソレが言っている言葉の意味もよく分からん。


「自己紹介が遅れたね。初めまして、ボクはカミサマだ。」


 ぁ、はい。カミサマですか。

 ………めっちゃ胡散臭い。

 警戒しつつ、カミサマと名乗る光に不信感を募らせる。

「うん、胡散臭いとかヤラしいは褒め言葉だ。でもね、正真正銘のキミ達の言うところの神なんだよ、ボク」


 エヘンと胸を張って(るような気がする)堂々と言われ、少し呆れてしまった。変人かつ偏人で変態なのか、コレは。


 しかし、声も出せないのでは話の転換も悪態をつくのも、そもそも話すら出来ない。

 困っていると、カミサマが「大丈夫!」と言う。

「キミの思ってる事は分かるし、ボクもキミにこうして言葉を伝えられる。それで十分さ!」


 つまり、思った事が全て筒抜け。

 流石は変……神様だ。


「さて、自己紹介も済んだ事だし、そろそろ本題に入ろうかな。」

 飄々とした態度から一変、真面目な雰囲気が漂う。

 すると、パチンと指を鳴らす様な音と共に、暗闇の空間に情景が拡がった。


 ビルが生え、人や車が忙しなく行き交う様子。

 ドラゴンが青空を飛び、広大な森林が広がる景色。

 鈍く光る鎧を身に付ける人、異形の存在と闘い舞い散る血飛沫。

 手を繋ぎ笑顔で道を歩く親子の幸福そうなひと時。


 目まぐるしく変化する色彩。そのどれもが覚えのある景色だった。

 それらを懐かしく、しかし初めて目の当たりにしたかの様な高揚感に心を任せて浸る。


 不意に、クスッと小さな笑い声。

 そして少し間が空き…


「キミに一つ問おう。」

 楽しそうな声で尋ねられる。




「『夢』とは一体、何だと思う?」




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