第6話 旅行へ

「ご飯に行こうかニカイドウ」

「それよりさっきの 旅行に行く気ある? ってなんなんですか?」

「食堂についたら話すからさ」

「頼むからクラスが低いものであってくれ・・・」

嫌な思いを胸に食堂へ向かう2人。

食堂へ着き朝からがっつりとした物を食べるよう言われ普段の夕食レベルで量を取りもぐもぐと無心で食べ続けるニカイドウ。


「今日も美味い」

「あはは じゃあ本題に入ろっか」

「お ようやくですか」

「・・・旅行だったらどこでも嬉しいタイプ?」

「へ?まあ旅行なんて行ってないから行きたいですねえ」

「じゃあこれ」

さっきから持っていたバッグの中身を見せてきた。

いつの間にか用意されてるパスポートや水など1週間は暮らせる程度の食料品などが入っており旅行とは到底思えない説明が行われた。

またナイフなどもあり何かあってもいいようにと催涙スプレーや救難信号を送るための機械なども渡された。


「もしかして・・・地球のどこかにテレポートとかじゃ・・・」

「ビンゴ!ニカイドウは流石だね!」

「このデカいバッグに食料はあるからいいにしても砂漠とかに出たらどうするんです?」

「まあ・・・何とか耐えてよ位置情報を確認出来たら関係者の人間がヘリとかで迎えにいくからさ」

「本当無茶ぶりがすぎますよ」

「大丈夫大丈夫 がんばろ!」

「その笑顔が怖い!」

料理を食べ終え少し休憩した後に詳細情報を聞いてみると以下の事が分かった。

・どこかにテレポートする

・一日だけ生存してもらい滞在が1日経つと同時にヘリがつくように手配してある

・SCP-249の500回目の特性を生かした実験だから死なないように有益な情報を取ってもらう

・とにかくどこでも過ごせるように装備品、紙幣は渡してある

・健闘を祈る


「あーどこに行くんだろう まあ一日旅行と思えばいいか」

「そうだね 君の私服のスーツに着替えて行ってね」

「了解です」

着替えを終えトウマの元へ行き無線機などをセットし座標の位置を確認しSCP-249の元へ向かう。


「到着しました あー・・・博士」

「うん トウマくん来てくれたね 横の彼が今回の調査員かな?」

「そうです 博士の要望通りの装備、紙幣を渡してあります」

「まあ一か月以上生き延びているし教育の程度も悪く無さそうだから大丈夫だね」

「彼は日本語しか話せませんがそこは承知してありますよね?」

「もちろん そのために翻訳装置も入れてあるしね そのぶら下がってる奴ね」

「配慮ありがとうございます では早速とりかかりますか?」

「いや説明をしておこう」

ニカイドウがいない状態でとんとん拍子で話が進んでいくものの博士の方から説明があるようで何とか話についていけそうであった。


「基本情報を聞いているかな?」

「ええ どこかへワープするSCPだという事は」

「正しいがそれは特例だ 普段こいつはこの研究所内のどこかにしかワープしない だが今回で4000回目 次でどこかへ繋がるはずなんだ」

「一体どこなんですか・・・って聞いても分からないんですよね」

「まあ申し訳ないがそれが実情だ 解明のため君に協力してもらう」

「疑問なんですが扉を閉めずそこに待機するだけではどうです?そうした方が確実ですし安全なはずでは?」

「うーん そうしたいんだけど君側から開けた場合を知りたいんだ」

「あー なるほど いつもどうなるんです?」

「そうだね 大抵はただその空間にドアがあるだけ 一定時間経つと扉が消える」

「それだけですか」

「そうだね まあ危険性があると判断された場所であれば引き返して構わないがそれは火山の上や上空などの場合のみだ 砂漠や密林程度ではそのまま居てもらう」

「了解です ナビゲートはどうするんです?」

「ナビゲートは現地スタッフに繋がるようにしてあるからその無線機が自動で合うから彼らのナビゲートに従うといい もちろん日本人スタッフを派遣済みだ」

「偉く丁寧ですね」

「まあ私は少しこういう所まで気を使うんだ 人間の命だしね」

「ははは 久々に言われました」

「じゃあ準備はいいかい?」

「ええ」

「じゃあ頼んだ」

消毒を行い部屋の中へ入ると古びたドアを見つけた。

普通のボロいドアではあるがこの機械的な空間にある事自体が酷く違和感を発生させていた。


「良い旅を!」

「はは・・・行ってきます」


ガチャ


「いやーどう見ても砂漠なんですけど」

「そうだねー・・・早く入ってカメラに収めてね」

「では・・・」


バタン


「始まったか―・・・」


「あーここで開始か?RECって出てるしいいだろ 撮影開始 2023年9月14日 えー・・・14時35分 撮影者ニカイドウ」


映像記録 撮影者ニカイドウ

●REC 2023/09/14 14:36~19:00

「どこの砂漠だ?現在地は・・・ここ スマフォが熱すぎる あー・・・サハラ?デザート?あーサハラ砂漠だそうです 位置は{削除済み}です」

「扉を開けてみます 何もない扉です とにかく熱い・・・カメラ越しでもただ砂漠が広がってる」


3時間経過


「日が落ちてきてテント内部じゃなくてもなんとか耐えれそう・・・扉はそのまま」

「30分間隔で開け閉めをしていますが以前変化はありません」

「現在地を送ったので扉消滅後ヘリで迎えに来てもらえるとのことです 一度バッテリーを交換します」

「バッテリー交換後も扉に変化無し・・・あー・・・今分かりましたが扉の金属部分の温度変化は見られません」


1時間経過


「扉を映しているカメラに異常あり こちらのカメラのバッテリーは70%あるため変更します バッテリー変更作業に移ります」

映像乱れあり


「あ え お み・・・ み ・・・みえてますか?扉が消えました それと同時に映していたカメラ2台ともノイズ発生 扉は瞬時に消えました 映像記録をそちらに一度送ります 電波は繋がっているので今全データを書き込みそちらに送ります 現在時刻は18時52分です これから夕食を取りたいと思います」


15分後データの受信を確認。

この後元あった場所を送還まで映していたが変化は無し。

記録は検閲したものの異常は見られなかったが途中のノイズについてはこちらで除去など行えないか試した所不可能という事が分かった。

他については「熱い」「変化無し」の発言のみのため万が一の資料という事で残しておく前回の実験同様変化は見られなかったが何かしらの意思を持ち合わせている可能性があるため本データについては■■■博士のみ現状閲覧可能とする。


「んー サハラ砂漠なんだかんだ自由で良かったなあ」

「まあジャングルとかじゃなくて良かったね 私は外をあまり知らないから今度は私が立候補しようかな?」

「でもレベルの低い奴を掃除して一日が終わる方がよっぽど楽ですけどね 熱中症で死ぬ可能性もありますし」

「まあそうだね でも旅行かー・・・休暇取って今度行こうかな」

「お どこ行くんですか?」

「んー ここ日本だから日本かな?私は・・・あー・・・秘密だった」

「聞かなくてよかったですよ本当に」

「たはは まあ日本旅行だったら付き合ってよ お金はタンマリ持ってるからさ」

「えー・・・いくらほど?」

「1200万とへそくりで100万ほど」

「いくらでも遊べますよ なんなら貰いましょうか?」

「馬鹿言ってんじゃないの まあ旅行一緒に行こうか」

「そうですね~」

旅行に妄想を膨らませながら帰宅して早々ご飯を2人でパクパクと食べていた。

休暇を早々取れない職場なので出来たらいいなの妄想なのがまた虚しいが娑婆の空気というのを2人とも味わいたくなっており珍しくニカイドウの話にトウマが食らいつき話が盛り上がった。


「~で、ですね?トウマさん東京には東京タワーやスカイツリーといったものがあったり寺などがあったり観光し放題なんです とにかく行ってみるべきですよ 浅草の蕎麦が美味いんですから本当に」

「はー ジャパンってのは本当に色々あるねえ すっかり私も主食が米だけど麺を食べまくるのもいいねえ」

「ラーメンってのもまた種類があってですねぇ」

「私ラーメン大好き!たまにしかないけどアレ最高に美味いんだ!」

「もっと味が濃いのもあれば薄口で上品な物もあったりと最高ですよ」

「いいなーニカイドウちゃんとしてれば一杯食べれたんでしょ?勿体ないよ」

「んー そうですねー それ以上の快楽がありすぎたというかなんというか」

「色々怖いな~娑婆は」

「そうですね~」

そんなことを言いながら食事を終え寮へ帰っていった。


「いて!日焼けした所がシャワーで染みる!」

ニカイドウの叫びは誰にも届かなかった。




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