第5話 視線と死線

「あー ご飯が今日も美味い」

「ステーキよく飽きないね 君は」

「トウマさんも美味しそうに食べてるじゃないですか」

「まあね 肉は元気の源だよ 私推定30代だけど」

「元が10代ってだけありますなぁ」

「次言ったら絞め殺すよ~」

「冗談ですから・・・」

いつも通り2人は朝食を食べていた。

トウマ曰く今日はかなり危険なため美味しく味わえとのことで朝食の時間もいつもより長く設けられておりステーキをガツガツと食べていた。


「にしてもこの肉ってなんなんですかね?」

「私も知らない牛の肉じゃない?」

「なんか嫌な予感が・・・」

「みんな食べてるし大丈夫だよ」

「まあ そっか 気にせず食べよ」

「そうそう それでいいんだよ」

美味しく食べ最近ハマっている付け合わせのポテトを完食する。


「ごちそうさまでした」

「ごちそうさまー」

「時間ありますし軽く運動でもしときます?」

「んー 今日は目をよく使うから目薬いい奴つかって時間まで寝ときな」

「? わかりました」

「ほらこれ暖かくなるアイマスク 配布されてる目薬をつけた後によく温めときな」

「今日のはどういう奴なんです?」

「あー 近づかれたら死亡 視線を誰かが外すと死亡 とにかく視線で拘束しながら一人が掃除をするって感じだね」

「厄介ですね~」

「今日はもう2人来るからそこまで心配しなくていいけど君は完全に視線を使うだけだからとにかく 目を休めておいて」

「あー 頭痛いんでやすみm」

「今の内に殺しとくのもありかな?」

「嘘ですよ!」

「よろしい では部屋で休んでおいて」

いつもの寮に戻り部屋で休むことにしたニカイドウ。

目元を目薬で綺麗にしアイマスクでタイマーをかけておき休息をする。

1時間ほどあるためうろうととしながら深い眠りに入る。

夢の中で好きだった現実の喫茶店を見てしまい目元から目薬か涙が一滴零れ落ちるが、そこに気づくものはいなかった。


ピピピピピ


「うおっ!?・・・あー・・・よくねたー 目がさっぱり」

飛び起きシャワーを浴びドライヤーをかけ気分をサッパリさせ集合場所へと急ぐ。

缶コーヒーをちびちびと飲みながら場所へ向かうとたまにすれ違う2人組と研究員のような白衣をきた人物がいた。


「あ ニカイドウ来たね 今日研究員の人も来るから絶対に失敗しないでね」

「マニュアル通りに覚悟を持って仕事に挑む ですよね?」

「よろしい」


「こちらアサツキさんとメジロさんね 後研究員さんのナガラさん 二人ともレベル2の職員だし失敗しないと思うけど声を掛けるときに便利だから名前は憶えてね 研究員さんは私が保護するから実質的に君たちでやってもらうよ」

「分かりました よろしくお願いします」

「君がトウマさんの荷物持ちで有名なニカイドウ君か」

「いやー トウマさんと一緒に居て1か月持つのって久々じゃないか?」

「「いやー 運がいいねー」」

「止してくださいよ 怖くなってきた」

「まあ僕たちは何度もやってるから従ってくれれば大丈夫」

「そうそう 気は抜かないでやってくれればすぐ終わるよ」

「そうだといいんですが・・・気は抜かずにやりますね」

「じゃあ行こうか 付いてきて下さい」

5人で管理棟へと向かう。


ナガラという研究員とトウマが何かを話しているが理系のような話で何を言っているかさっぱり分からなかった。

アサツキとメジロと話しているととにかく目を三人同時に閉じたら誰かが死にリスクも高まり全滅もあるから中に入ったら異物がいるからそれを見て置くのが仕事とのことだった。

今日の夕飯は何にするかなど話していると着いたようだ。


SCP-173


「ここですか?」

「そうだよ じゃあいつも通り服を着替えて除菌してね」

「「「了解です」」」

「ナガラさんはこちらで対応するから素早くお願いね」

「トウマさんお願いします」

「いえいえ ではお願いします」

扉を開きいつも通り開くと何かがカリカリと擦る音が聞こえた。

一旦気にせず着替え除菌を終えた。


「あのひっかく音なんなんです?アサツキさん」

「あーあれは173が正常な状態って事だよ 気にしないで」

「ヤバそうだな 覚悟しとこ」

「そうだね よしじゃあ 掃除係は私がやるね メジロとニカイドウ君が監視役で」

「危険なら俺がやるべきなんじゃ?」

「いやいや何かあった時フラットに動ける人間がいい 私みたいに歴が長い方が非常事態にナガラさんやトウマさんの盾になれる」

「すいません・・・よろしくお願いします」

「ははは いいんだ 君も何れ私みたいな役回りになるだろうからさ」

「アサツキ 気をつけろよ」

「うん メジロ頼んだよ」

「ああ」

いいコンビだな~とニカイドウは関心していた。

目を今の内に癒しておきベンチに座り休んでいた。


「お 着替え終わってるね 行きましょうかナガラさん」

「そうですね トウマさんよろしくお願いします」


予想はしていたが3人で掃除を行い2人は研究を行うようだ。


「いい?中に入ったら奥にいるのがレーダーで分かっているから部屋全体を見て奥の方に人型のSCPがいるからそれを見ておいて 瞬きをするときは宣言してからね」

全員が頷き中に入る。


扉が開き鉄製の部屋が広がっていた。

コンテナがありコンテナを開ける。

だが奥に何か明らかにこの世の物ではない物がいた。

あれが今回のSCPだろう。

確実に言いつけを守らなければ死ぬというのが分かった。

とにかく目を休ませながらバランスよく全員で見ておかねば死ぬ。


「いい?私たち2人は研究に徹するからそっち頼りだからね 頼んだよ アサツキさんとメジロさんお願いします」

「分かりました」

一瞬の瞬きで死ぬかもしれないと思ったのは初めての感覚だが目を休ませなければやられてしまう。

一瞬が命取りという事を認識していた。


「じゃあ掃除するね 2人で見といて」

無言で返事をする。

余計な体力を使わないように無言で返事を行う。

アサツキが掃除を始める。


記入:2023/09/07 17:10


2023/09/07 13:23

測定開始

清掃員3人 研究員2人での調査

視線を向ける事で一切の動きを封じることはできているようだ

以前排泄物のようながあるため研究にかけるために採取。

赤色であるがアンモニアの匂いと金属の匂いがする鑑定を前回出しているが判明するのかは不明

体に近寄り刺激を与えない様20mほど離れた位置からサーモグラフィ、CR検査器具などで調べると内部は以前変わらず鉄、コンクリートなどで作られており生物としては定義できないだろう


測定開始から30分

清掃員3人 研究員2人

目元がキツくなってきた事もあり研究員は出る事に

最後に排泄物をもう1つ予備で採取しSCP-173の監視を清掃員の内1人ニカイドウに持たせ記録映像を撮ってもらうことに

映像を見るにこちらを認識しているようだが呼吸や微細な体の動きなどは一切動かない事が分かる。

映像の揺れを無くし比べてみるが30秒近く全くと言っていいほど動きどころか呼吸すらしていない事が分かった。


測定開始から41分

清掃員3人 研究員2人

清掃員アサツキ死亡

ただちにコンテナを閉め後日死体の回収を行うことに。

監視カメラの映像を拡大し2人の映像を見た所無意識下での瞬きが重なり視界の拘束が解けてしまったものとみられる。

コンテナを閉める際体の一部がかけたのか何かが落ちたため持って帰ってきてもらう事になりSCP-173の生体の解明に役立つことだろう。

※この欠け落ちた部分から■■■■■と■■■■■が検出 このことから{削除済み}という事が■■■と思われる。(2023/10/23記述)


測定開始から45分

清掃員2人 研究員2人

犠牲は出たものの大きな収穫があった。

本資料記録後研究を早急にする必要があると思われる。

■■博士と共に行う。

※SCP-173の近くにあった死体は腐敗しており別段何も変化はなかったため焼却処分を行った。



「ア、アサツキ・・・あぁ・・・なんで・・・」

「まあ元気出しなよ ここなんてそんなもんじゃない」

「うぅ・・・あぁうぅ・・・」

「まー長かったしねー・・・」

「ちょっとトウマさん!」

「何言ってんの 目を離したのは2人でしょ?それなのに励ましてるんだからさ」

「そ、そんな事いわなくても!」

「甘いよニカイドウ これはよくある事でここじゃ普通なの アサツキの死体も有効活用できるかもだし悲しんでいたらどうしようもないよ?」

「それでも言っていい事t」

「いい?まだ分かってない様だから言っておくね 悲しいのは当たり前 それでも感情を殺して次の仕事に取り掛からないと死ぬの いい?死にたくなければ仕事では感情を出さない それが鉄則」

「そんな・・・」

「まあ私がいるから死ににくいしね そういう甘い考えにもなるかな?でもね 相方が死んでも泣きながら止まるか進むかで生死を分けるの だからニカイドウは進んでね もうメジロは止まっちゃった たぶん次の簡単な死線で死んじゃう」

メジロは3年ほど連れ添った相方に涙を流していた。まだ若いという事もあるが前やった事のある仕事であるという事で覚悟を見誤っていた。

最大限覚悟を出さなければいけない仕事で覚悟を見誤ったのがアサツキの死因となった。死因という点で言えばこの3日後にメジロは普段なら安全な業務で死んでしまったため、覚悟の見誤りで実質この日死んでしまっていた。


「じゃあ行こうか メジロはここにいる?」

「はい・・・うぅ・・・」

「お先にすいません・・・」

もう答える気力も無いのか泣きながら項垂れていたメジロを置き3人は去った。


「それでは私はここで大変貴重なデータになると思います」

「ありがとうございました お役に立てて光栄です」

「では」

「・・・」


「どーしたのー 怒られたから拗ねてるの?」

「いや 目の前であっけなく死んで何も出来ずに・・・俺・・・」

「いやーだからさー・・・あー・・・ご飯食べよっか」

「いや 内臓とかを思い出すととても・・・」

「いやいや 駄目だよそれじゃあ明日絶対に死ぬ」

「食べます」

「よろしい」

食堂に向かいご飯を食べる。


「どうしたの泣きながら食べて」

「・・・」

「ほら あーん」

「あー・・・」

「元気出た?」

「はい・・・」

何ともシュールな光景だが食事を美味しく食べていた。

トウマの言葉を聞いてしまい泣きながらでもガツガツと食べていた。

食べ終わるころに戻しそうになるが必死に抑え込む。

ニカイドウはいつもの調子で食べている。


「アサツキ・・・アサツキさんは運がなかった それだけ」

「そうなんすかね・・・」

「そう 二人ともかわいそうだけどしょうがない 生き残れたなら2人を忘れちゃだめだよ?メジロ・・・メジロさんもきっと死ぬから忘れないであげて?」

「はい・・・うぅ・・・くそ・・・俺が・・・」

「ははは 純真無垢だねギャンブル好きにしては」

「くそ・・・くそ・・・」

「大丈夫だよ 安心してそうやってご飯を食べて覚悟をしていれば死なないから」

「はい・・・」

「まあ帰ろうか」

「はい・・・」

2人は手を振って別れ部屋に戻った。


メジロは3日後簡単な仕事で死んだことをニカイドウは知る事になったが覚悟の決まった顔でその事実を受け止めた。

トウマは成長したニカイドウを見て一安心した事に驚きを覚えていた。


「私が駒に同情しちゃうなんて 本当に体にひっぱられてるのかもね トウマ・・・トウマ・・・ははは 次は何をしてくれるかな?」

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