第7話 貸家で

今日は、貸家の下見に来た





アパートから引っ越して、夫婦二人で静かに暮らせる場所を探している





田舎の、昔ながらの建物で、市が援助をしているため、5年間は家賃がかからない





「ねえ、あれは仏壇かしら?」





妻がそういうと、畳の一室に扉が見える





立会人は、鍵を開けると、お好きにどうぞと外で待っているため、ここにはいない





黒い扉を開けると、中は空洞だった





「何もないな」





俺はそういって扉を閉めると、どこかでふすまの開く音がした





「担当者の人も来たのかしら?」





妻はそういうが、玄関の開いた音はしなかったはずだ





俺たちは続いて奥の部屋に行くと、障子の後ろに誰かが立っているような気がした





「誰かいるのか?」





そういうと、影が動いた気がした





障子を開けると、奥に一本の木が見えた





もしかしたら、その影だったのかもしれない





2階へ行き、窓から景色を見る





左手は山が見え、右手は海が見える





「いい景色ね」





妻は気に入ったようだ





俺は、ふとさっきの庭の木を見ると、何かがぶら下がっているように見えた





「あれはなんだ?」





俺が指さすが、妻は「どれ?」と分からないようだ





気のせいかと思い、窓を閉めると、ドサリという音がした





「何の音だ?」





「え?何も聞こえなかったわよ?」





それから数年、俺たちはこの家で暮らしている





ただ、庭の木にぶら下がっている首つり死体は俺にしか見えないらしい


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(黒髪指定しました)


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