配信7:これからどうしよう

 手足どころか思考が止まった。

 えっと……ナニが起きた?


 ここまでの一連の流れを整理したいところだが、もうそれどころでもなかった。胡桃はどうなった……? なにが起きた?


 ……あぁ、そうか。


 アカウントがBANされたんだ。


 つまり、規約違反によって停止させられたんだ。それどころか削除。復活不可能の永久BANだろうなあ……。


 そりゃ美少女の――しかも女子高生の乳房がポロリしたんだ……運営も黙っちゃいませんわな。


 呆然としているとメッセージアプリに通知が入った。これは田村さんだ。



 田村さん:バ、バンされちゃった……(泣)


 猪狩:いいもの拝ませてもらった


 田村さん:あああああああああああああああああ!! 恥ずかしい、死にたい、いやああああ、もう学校行けない!!


 猪狩:落ち着けって。明日また話そう


 田村さん:明日は学校に行けないよ……。そうだ、電話で相談させて!



 すると、すぐにアプリ電話が飛んできた。

 マジかよ!

 心の準備がまったくできていないし、俺は女子と電話だなんて初めてで……緊張が!! しかしもう【応答】か【拒否】の画面が出てしまっていた。嘘だろ……。


 ええい、仕方ない。

 ここは【応答】しよう。


 タップすると、すぐに声が聞こえた。



「うあああああああああああん……」

「ぬわッ!?」

「わたしもう人生終わりよおおおお!」


 いきなり号泣しているし。さっきのポロリがよっぽどショックだったんだろうなあ。ここは、せめて慰めてやろう。うん。


「その、なんだ……元気出せよ。今日は二重、三重の意味で伝説になったし、まだまだ話題になる。このまま鋼のメンタルで挑めばきっと俺より凄いインフルエンサーになれるさ」

「…………ぐすっ」


 だめだこりゃ!

 田村さん、かなり落ち込んでいる様子。

 よくよく考えれば五万人近くに、無修正の胸を見られたわけだからな。とんでもないことだ。これからもっと拡散すると思うと、かなりヤバイ状況になりそうだが。


 ともかく、今は田村さんの心のケアをしてやらないとな。このままじゃ、精神的に参って飛び込みとかされかねん。そうはさせない。


「すまん。俺が悪かった。でも、俺は純粋に田村さんを応援したかったんだ」

「え……それホント?」

「そうだよ。かなり前から配信を見ていたし、こっそり応援していた。エロ配信多めだったからね」

「ちょぉー! 最後台無しじゃん。……まあいいか、おかげで少しは気が晴れたわ」


 おや、少しは元気を取り戻したらしい。復活早いな。


「もういいのか?」

「気分は最悪よ。でもね、今日はたくさんの人に見て貰えて嬉しかったよ」

「胸?」

「……針で刺すよ?」

「す、すまん。冗談だ」

「分かればよろしい。今日のところは横になって今後を考えるよ」


 なんだかちょっと弱々しい感じがした。大丈夫かな、心配だ。このまま不登校とかになったら俺が困るぞ。そうだ、もっと突っ込んでやった方がいい。そう思って俺は親切心で田村さんに激励の言葉を贈った。



「田村さん。これからも、えっちな配信を続けてくれ! なんだったら、PPVとか――」



 そこでブチッと電話を切れてしまった。


 あ!!


 なんてこった。こりゃ嫌われたかな。明日改めて謝ろうと俺はベッドへ身を投げ、横になった。心配だけど、田村さんの強さを俺は知っている。ずっと昔から見守り続けていたし、きっと。


 おや、アプリにメッセージが。



 田村さん:今日はありがと。また明日学校で!



 良かった。これなら明日は会えそうだ。

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