雨情

ひとしずくの鯨

第1話 雨情

 私は雨女。

 そんなにうっとおしがらないで。

 乾いた女より濡れた女の方が好きでしょう。

 ここは日本よ。梅雨が無ければ、稲も育たないわ。

 あなたの大好きなご飯も食べられないのよ。

 それに雨はすべてを洗い流してくれる。

 私の血も。殺した記憶も。

 ほら、降ってる。一緒に当たってくれるでしょう。

 ずぶ濡れの私たちはきっと美しく魅力的だから。

 たとえ、もう息をしていないとしてもね。

 だから、お願い。

 私を忘れて。

 そしてあなたを忘れさせて。

 死後の交情なんて愚かしく醜いわ。 

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雨情 ひとしずくの鯨 @hitoshizukunokon

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