キャンプはみんなで 3

『毒沼ダンジョン』

初心者向けのダンジョンの中で、抜群に不人気なダンジョンだ。


ティファたちはこっそり王宮を抜け出した身である。あまり目立ちたくない。

だから、レオナの発案でこの毒沼ダンジョンにやってきた。


何故不人気か。

名前の通りである。

『毒』と『沼』だ。


毒状態になるトラップや毒攻撃をしてくるモンスターが多数ある。

毒は解毒薬を使用しなければならない。

毒状態のままダンジョン探索を続けるなんてあり得ない。回復が必要だ

つまり、解毒薬を使うという出費が発生するのだ。

金欠になりやすい冒険者にとっては大きな痛手だ。



更に沼。

単純に汚れるのだ。

服、鎧、ブーツ、武器、体、全てが汚れる。

洗濯機のような便利な家電は無い。

手洗いだ。

ダンジョン探索を終えて疲れて帰ってきたら、その後に延々手洗いをする羽目になる。

それに浴室の無い宿屋だって多い。

井戸水を汲んで頭から被るだけ、なんてのも普通だ。


これだけ冒険者が嫌がる要素が揃っているのだ。冒険者が集まるはずがない。

この毒沼ダンジョンを探索するのは穴場狙いの物好きだけだ。

大抵の冒険者はレベルが上がれば他のダンジョンに移動していく。



そんな寂れたダンジョンに隣接する寂れたトロンコ村の冒険者ギルドに3人はやってきた。

明らかに浮いている。

ピカピカの装備に綺麗な輝く髪、そんな冒険者はこの村にはいない。

そんなことには気付かない3人は冒険者ギルドの窓口で移動の手続きと宿の紹介を依頼した。


冒険者ギルドはその街にどんな冒険者がいるのかを把握する必要がある。

緊急時に召集をかけたりするためだ。

そのため、ある程度の期間滞在する場合は冒険者ギルドに登録することになっている。



ギルドに入ると中は閑散としていた。

窓口に立つとレオナが、

「こんにちは。

しばらく滞在する予定だから、登録と宿屋の斡旋をお願いしたいんだけど。」


窓口のおばさん、

「あら、珍しいわね。

冒険者カードを出してね。

トロンコダンジョンに挑戦するの?」


3人が出したカードを受け取り処理をしながらも窓口おばさんのトークは続く。


「トロンコダンジョンは人気無いからね~。

なんでまた、ここ選んだの?

他にもいいダンジョンあったでしょ?

それとも何か訳有り?」


質問ばかりだが、こちらの回答を待たずに話続けている。


「はい、これで処理は終わり。

宿屋はこことここがオススメね。

こっちは一番安いけど、女の子ばっかりのパーティーにはオススメしないわ。」


「ありがとうございます。」

話を終えてギルドを出ようとした時、


「やめてください!」


トラブルの気配がした。

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