第49話 屋敷にて
お屋敷に到着した後、不安な気持ちを抑えつつ、フラウ姫達と燃え盛る森の方を見ていると、巨大な水の壁が炎を挟むように両側にそそり立つのが見えた。
何だあれは、魔法か!?凄い!!
『『おぉぉ!』』
『あの圧倒的な水量と安定感はミズハ隊長か!』
『さすがだな!』
周りから歓声と感嘆の声が沸き起こった。こちらの基準でも凄いみたいだ
危機感と焦りから重苦しかった空気が、少し光が差したようになった
引き続き注目していると、水の壁が炎を押しつぶすように動き始めた
『む、左右で微妙に速度や動きが違うな』
『さすがにミズハ隊長でも2つは無理だろう』
『それはそうか…しかしそうすると、もう一つの壁は誰がやっているんだ?』
『あの規模を扱える者が向かった中に他に居たかな?』
ん?話してた者たちが周りを見渡し、こちらに目を留めたあと固まったが…
『リュノか!?』
『あの暴発娘か!?』
『確かに規模はいけるだろうが、無謀すぎるだろ!』
おおぅ…胃が痛くなりそうな声が聞こえる…
少し顔が引きつったが…
いやどんな状況か分からんけど、せめて俺だけでもリュノを信じて待ってないとな
そう思って、水の壁を強い気持ちを込めながら見ると、フラウ姫が寄ってきて、
『リュノなら大丈夫ですよ。ミズハも居ますし、上手くやるでしょう』
と安心させるように微笑んでくれた。
…こういうところ、さすがだよな。
『そうですね。ありがとうございます。私もリュノを信じて待ちます』
とこちらも微笑んで返すと、
『まぁ!…思ってる以上に信頼関係が…』
とフラウ姫は目を少し見開いた後、フフフッと笑っていた。
さらに朱里ちゃんも、
『リュノさんはやる時やるでしょ!』
とこちらの肩をポンっと叩いてきたので、それに頷きながら、皆で成り行きを見守っていた。
そうして誰もが固唾を飲んで見守り、ジリジリと長く感じた時間が経ったあと、遂に水の壁が合わさって炎が消えると、お屋敷に割れんばかりの歓声が上がった!
しばらくすると伝令が来て、ミズハ隊長とリュノの活躍により火が消し止められたことが報告された。
改めて歓声が上がったのだが…またドンッという激しい音と炎が上がって騒然とし、さらに凄まじい水の魔法が発動して、最終的にミズハ隊長とリュノにより溶岩竜が仕留められたと報告が上がってきた時には、あまりの目まぐるしさにお祭り騒ぎのようになっていた。
ミズハ隊長とリュノが近衛隊のメンバーと共に里に戻ってくると、大歓声で迎えられた。
それに手を挙げて応えていたミズハ隊長とリュノと隊員が、そのままお屋敷の前に到着し、里長が消火と討伐の偉業をたたえ感謝を述べると、集まっていた里の人達から今までで最大の歓声が上がったのだった。
その後、ミズハ隊長をはじめとした近衛隊とリュノは、里長やフラウ姫達とお屋敷に入ってきた。
リュノが俺の姿を見て、満面の笑顔でビューンと飛んできたので、抱き止めてハイタッチをした
『凄かったなリュノ!』
『えへへへ~』
そして、朱里ちゃんとリュノをわいのわいのと褒めたたえていると、フラウ姫やミズハ隊長もその光景を見て、微笑ましそうに微笑んでいた。
そうして少しの間ゆるんだ和やかな空気だったのだが…ミズハ隊長が真面目な顔になり、里長や姫様に何かを手にもって説明を始めると、深刻な雰囲気となっていた。
『何かあったのか?』
『うん、結界の魔道具が壊れていてね…簡単に壊れるようなものじゃないのだけど…』
雰囲気の変化に気づきリュノに聞いていると
『すみません、カズマ様、私に魔力譲渡をお願いできないでしょうか?』
とフラウ姫が申し訳なさそうにお願いしてきた。
フラウ姫が説明してくれた話をまとめると、
今までフーリル族の里とマリョの木の森は、フーリル族が結界で覆って守っていたのだが、それを構成している魔道具の一つが壊れてしまっていたようで、その結果溶岩竜が入り込み、今回の事件が起こってしまったらしい。
そこで壊れた結界を直すために、壊れた魔道具を交換して魔力を込め直す必要があり、それはフラウ姫の得意分野なのだが、とにかく大量の魔力が必要になるので手伝って欲しいとのことだった。
ただ…その壊れた魔道具を調べると不備ではなく力で壊されているみたいなのだが、魔道具自体が結界の中にあり、このようなことが起こらないように厳重に隠されて、定期的なチェックと周辺の巡回が行われていたので、何が隠していた場所に入り込んで魔道具を壊したのかは分からないらしい。
…不穏な感じだ。深刻な雰囲気になるのも分かるよね…とりあえず俺ができることはしてあげよう
『魔力譲渡はもちろん良いですよ。お役に立てるなら良かったです』
『カズマ様、本当にありがとうございます。本当にお世話になってばっかりで…このご恩は必ず報いますので』
『既に沢山頂いているのでその気持ちだけで十分ですよ…それより直ぐに向かいますか?』
『そうですね。できれば早く対応したいので、可能でしたら是非お願いします』
そうやって話を進めていると、ダダダダンッと里の周囲の巡回に出ていた攻撃隊の隊員が、慌てた様子でお屋敷に駆け込んできて
『大変です!
と危急を告げたのだった!
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