第35話 アパートへの帰宅

フラウ姫にそろそろ家に帰ることを伝えると


『私達もご一緒させて頂いても宜しいでしょうか?』


と聞いてきた。…うーん、別に良いんだけど、時間的に厳しくないかな…


『来られること自体は良いのですが、もうすぐ日が暮れますし、少し離れているので、今日中に帰れなくなると思いますよ?』


『あ、それは大丈夫です。出る時に、帰りは明日になるかもしれないと言っておりますので』


…マジか、さすがフラウ姫、抜け目がないな。


まぁそれなら、ってことで一緒に帰ろうとすると、里でやり過ぎた感がある朱里ちゃんが逃げるようにシレッと付いてこようとして…大樹さんに首根っこを掴まえられていた。


「朱里、どこに行くつもりだ?」

「…えーと、フラウ姫やリュノさんたちの護衛に…」

「ってことらしいけど和真君、危険はあるかな?」


…朱里ちゃんが助けてと目で訴えかけてくるけど…フラウ姫たちは姿が見えず素通りするからなぁ

「えーと、……」

答えられずにいると、大樹さんは

「うん、あまり危険はなさそうなので、報告を優先させてもらおうかな。朱里、随分とはっちゃけていたようだな?」

とにっこり笑って、朱里ちゃんを捕まえたまま頭を下げて

『では私共はこれで。今回は大変お世話になりました。お困りなことや必要なことがありましたら、いつでもご連絡くださいね。今後とも宜しくお願いします』

とお見送りをしてくれた。


朱里ちゃんの悲壮な表情をみて、何となく状況を察したミズハ隊長が

『仕合については私どもの里の攻撃隊長が言い出したことで、朱里さんにはお受け頂いた形ですから…』

ってフォローしてたけど、朱里ちゃんの生死判定はどうなるかなー?



・・・・・・・・

 そんなわけで朱里ちゃんと別れ、リュノとフラウ姫とミズハ隊長と共に、夕飯の買い出しにスーパーにやってきた。

しかし、ここに来るまでの3人を乗せてのスクーターの運転はハードだった…

フラウ姫を筆頭にはしゃぐものだから、ふらふら~!ふらふら~!ってしてたからなぁ;

田舎道じゃなければ事故ってもおかしくなかったな…


さて、おそらくこのスーパーでもはしゃぎ回るだろうから、ちゃっちゃと決め打ちで買ってしまうぞ!


……まぁ結局のところ、気になる物を1人1個ずつ選んでもらって手を打とうとしたところ、このスーパーに入っていたケーキ屋さんのケーキにフラウ姫が目を奪われ、その様子に気付いたリュノとミズハ隊長も目をキラキラさせていたので、今が旬のサクランボとメロンとイチゴが沢山乗った小さめのホールケーキを買うことで落ち着いた。


なお、スーパーからアパートへの帰り道は『揺れるとケーキが崩れるよ』と伝えたら、すごーく大人しく乗ってくれた(笑)



・・・・・・・・

 アパートに着いて部屋に入ると、フラウ姫とミズハ隊長は興味深そうに部屋の中をキョロキョロ見渡していた。

リュノはパソコンをチラチラ見て俺の顔を伺っているが…いやリュノ、絶対電源入れないからね!?


リュノの要望?を無視して

『その壁から向こうは別の人の部屋なので気をつけて下さいね』

と言うと、フラウ姫がスーッと壁の向こうに通り抜けていき

『ひゃっ!』

っていう声が聞こえてきた!慌ててミズハ隊長とリュノが追いかけて、

『うわっ』

て声をあげながら、フラウ姫を連れて3人で直ぐに戻ってきたのだけれど…3人とも結構驚いた表情をしているな…

『リュノどうしたの?』

『うん、何か独特の空間で…その、この前見た人(先輩)が、ちょっと怪しいリアルに動く絵を見ててね…』

…うわー先輩、どんな部屋で何見てたんだ…?


 とりあえず隣人の先輩はちょっと変人と説明して(人間の名誉のためにしょうがないよね。笑)、3人ともきょろきょろ具合が落ち着いてきたので、クッションとベッド、座卓に魔力コーティングをして、座ってもらった。

そして、夕飯が出来上がるまでのつなぎとして、リュノが大絶賛していた枝豆とビールのセットもコーティングして出したのだった。

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