第22話 リュノ里へ転移

 土曜日の早朝、大樹さんに行ってきますと挨拶をして、意気揚々いきようようと扉を開け、異世界に向け第一歩を踏み出した!!……のだが、いきなりつまずいた。


な、な、なんと、朱里ちゃんが転移装置に認識されず!!(笑)


いや、まさかだったね…何が起こったのかを順番に説明すると…

・-・-・-・-・-・

 まず、リュノがほこらの中にマジックポーチから取り出した転移装置(魔方陣が書かれた台)を設置した。これはリンク付けされた同じような転移装置に移動できるものだけれど、その人が一度行って登録した所にしか行けないらしい。

そして設置された転移装置に3人で乗った後、転移装置に接続された赤色の宝石のような部分にリュノが魔力を通すと、転移装置の魔方陣が輝き出し、一際眩しく輝いたと思ったら、リュノの里?に辿り着いていた!


 転移した瞬間、目の前には背丈を超える程の巨大な赤色の宝石柱があり、「「「わあっー!!」」」という歓声が上がったので周りを見渡すと、俺が立っている場所はお堂のようになっており、宝石のある方向以外の3方は壁のない開放的な造りになっていた。そして3方向に広がる周りの広場には、リュノと同じように背中に透明の羽の生えた歓声を上げる人達がいた。


 周りに居る人達はこちらを好奇心にあふれた目で見ながら笑顔になったり、歓声を上げたりしていて、また続々と人が集まってこようとしていた。


そんな中ふと、朱里ちゃんがいないことに気がついた。


集まってくる人達に対応しようと踏み出しかけたリュノに、

『リュノ、朱里ちゃんがいないぞ!』

と伝えると

『えぇーー!ちょっちょっと待って!!』

と言って、集まっている人の中でちょっと豪華な服を着た人と少し話し合った後戻ってきて、

『一旦急いで戻って見ましょう!』

と言うので、巨大な赤色の宝石柱に魔力を流し、転移装置で戻ってみると…



転移装置の前で膝を抱えて三角座り(体育座り)をして、いじけている朱里ちゃんがいた。

・-・-・-・-・-・

……ってことが起こったんだよね。


「非道い…」

「いや、まさか転移装置に認識されないとはなぁ」

「私行けないの?」

「う~ん…」


 道具とかはコーティングした袋の中に入れておいたら、袋の中身ごと転送されてたので問題なかったんだよな…そういえばリュノが持っているマジックポーチも、コーティングした箱の中に入れておけば中身がなくなることはないし…


「『道具は大丈夫だったから、朱里ちゃんにコーティングした袋に入ってもらうか、魔力譲渡して認識されるか試すかかな?』」

『そうね。どっちが良いかだけど…さっきもう一人来る予定が来れなかったから一旦戻るって伝えたし、紹介しといた方が今後の活動もスムーズだと思うから、魔力譲渡して認識してもらった方が良いかも』

「『里の人達も歓迎してる感じで直ぐに危険はなさそうだったし…じゃあ朱里ちゃん、大樹さんに説明して許可貰おうか』」

「うん」


ということで、涙目の朱里ちゃんと共に大樹さんを説得して、最初の2時間だけという条件でなんとか了承を貰い、再度リュノの里に転移することになった。



 そして、朱里ちゃんに魔力譲渡と服の魔力コーティングをした後、リュノの里に転移してみると、転移装置のお堂の前の広場には沢山の人が集まり、さらに手前には直立不動できっちりと整列をしている人達がいた。


『うわっさっきと全然違う!どういうこと!?』


こちらが驚いていると整列していた人達が割れて、中央から明らかに他の人とは違う、華を感じるような雰囲気を持つ女性が現れた。


『あ、あの方が姫様です』

とリュノが伝えてくれる中、その女性は美しい所作で頭を下げると、


『ようこそおいで下さいました。ありがとうございます。あなた方は私達の希望です』

と念話を届けられ、愛らしい笑顔で微笑まれた。


『いえ、とんでもございません!』

思わず、60度くらいの最敬礼をしていた。

…これが姫様か、いや、リュノがめちゃくちゃ可憐と言ってたけど…想像を絶する美しさとオーラなんだけど…


俺が固まっていると、リュノが俺と朱里ちゃんを里の人達に紹介してくれて、その間に何とか平常心を取り戻した俺と朱里ちゃんは、里の人達に自己紹介をしたのだった。


すると周りに集まった人達からは歓声が上がり、里の人達は皆一様に歓待してくれた。

なおこの広場には、俺たちが戻っている間に、全体に念話が行き渡るように準備がされていたらしい。


ちなみに朱里ちゃんは俺の護衛 兼 侍女として紹介した。

あと2時間くらいで姿が見えなくなることを説明すると、里の皆は驚いていた。



歓声と驚きの声でさざめく中、鎧を着込んだ人が一歩前に出てきて

『護衛ということなら一つ手合わせをお願い出来ないだろうか?』

と朱里ちゃんに申し出ていた。


『こら、またお前は!隙あらば戦おうとするな!救世主様だぞ!…すいません、この脳筋が』

姫様の隣にいた立派な服を着た威厳のある人が、鎧の人を捕まえて止めようとしたが、


『良いですよ、私で良ければ。私もこの世界の強い人がどれ位強いのか興味ありますし、手合わせしてみたいです』

と朱里ちゃんが受けてしまっていた。


『姫様、宜しいですか?』

『お互いの意向であり、怪我がないように済むのであれば、良いですよ。私もこういう場面はなかなか見る機会がないので興味があります』

立派な服を着た威厳のある人が姫様にお伺いすると、姫様のお許しが出て、広場は思ってもみない展開に歓声に包まれた…それにしても姫様、凄く目を輝かせているし思ったより好奇心旺盛なのかな?


そうこうしている内に広場が整えられて、朱里ちゃんと騎士(どうも里の攻撃隊の隊長らしい)がそれぞれ木刀を持ち、仕合が始まったのだった!

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