第16話 タイムリミット

もうスピードで汽笛をあげる運河鉄道は等々モンテリリオ橋の上へを通過した、その頃6号車に乗車していた青葉は列車内に設置されている個室トイレの中に閉じ籠っていた、「そろそろ時間だな、」再び腕時計で時間を確認した青葉は、予定の時刻を差していることに気がつくと、床に置いていたスプレー缶を素早く手に取った、すると青葉は一度息を深く吐き、次の瞬間青葉は個室トイレの天井に設置された換気扇からスプレー缶を流し込み始めた、手にしていた一つの睡眠ガスが尽きると青葉はすぐさまボストンバックに閉まってあったガスマスクを取り出し、顔に装着した、ふと睡眠ガスが流し込まれた換気扇の方を見上げると、思わず青葉は息を深く呑み込んだ、「急がないと、」青葉は不安を考える暇もなく別の車両へと移りだした、次に5号車へと乗り移った青葉はガスマスクを着けていることに不審な目を向ける乗客の視線を気にすることなく、5号車と4号車の連結部分である廊下へと駆け足で向かった、廊下へと向かう途中、5号車の天井に設置されていた換気口から先程青葉が流し込んだ睡眠ガスが突如として漏れてきた、その数秒後には青葉に視線を向けていた乗客達は一気に眠りへと落ちていった、「間に合ってくれよ南条さん、」緊張が募るなか青葉は無我夢中で列車内を走り出した。




「君には何があっても任務を果たしてくれよ、あのムシーナの様な失態はもう二度とごめんだ」ロバートは険しい表情で窓の外を眺めながらそう呟いた、南条は作戦の合図であるモンテリリオ橋を今まさに通過している時点であることに焦りを感じ始めていた、南条は意を決してロバートに話しかけた、「少しお手洗いに行ってくる」  「あぁ、」ロバートは小さく呟いて応えた、南条は席から立ち上がり車両から出ようとしたその時、突然ロバートが南条に一言問いかけてきた、「ちょっと待って、お前のその右腕にある物は何だ?」その言葉に南条は思わず驚きを隠せなかった、「一体何の事だ?」南条は冷静にロバートに問いかけるが、ロバートはじっと睨みを効かせていた、「確認しろ!」次の瞬間ロバートとの後ろに着いていたボディーガードの二人が南条の方へと近付いてきた、南条は抵抗する事なくボディーガードに腕を掴まれた、されるがままにボディーガードに腕を抑えつけられチップが埋め込まれている右腕をロバートに見せつけられた、すると右腕を見たロバートは突然顔色を変えた、「お前、まさか!?」すると突然、腕を抑えつけられていた南条が動き出し、ボディーガードを殴り始めた、南条に後ろから蹴られたボディーガードの一人は勢いよく車内にあったテーブルの方へと倒れ、もう一人のボディーガードはすぐに南条に拳を挙げたが、南条は素早く交わして相手に二発パンチを浴びせた、思わず痛さで顔を抑えたボディーガードをその後も躊躇なく攻撃を浴びせると敵はその場で気絶した、「貴様やっぱり裏があったかぁ!」隙をついて銃を抜こうとしたロバートを素早く南条は拳銃を向けて動きを止めたる事が出来た、しばらくロバートは黙り込んだままじっと南条を睨み続けた、銃口をロバートに向けたまま一息ついていたその時、突如として1号車の換気口から睡眠ガスが流れ込んできた、南条は咄嗟の判断で素早く拳銃を下ろし車両のドアへと走り出した、「ガスを吸ったら不味いことになる!」焦りながら南条はドアの手すりを掴んだ、その時銃口を向けられ動けなかったロバートは南条が離れた瞬間に懐へ隠し持っていた銃を抜き取った、逃げられる事に焦りを見せたロバートはすかさず南条に向けて引き金を引こうとしたその瞬間、突如としてロバートは深い眠りへと落ちてしまい、握っていた銃は列車の床へと落ちていった、必死に車両を出ようとする南条は後ろを振り向くことなくドアを開いて慌てて廊下へと出ていった、「はぁ…はぁ…危なかった、」南条は急いでドアを閉めると休む暇なく青葉が話していたガスマスクが置いてある個室トイレへと向かった、「どうやら廊下には睡眠ガスが流れないようだな」南条は小さく呟きながら個室トイレの前へと辿り着くと、ポケットに閉まっていた携帯から着信が鳴っていることに気がついた、「俺だ、今どこにいる?」その頃青葉はガスマスクを装着した状態で、乗客皆睡眠ガスで眠っている中順調にこちらへと向かっていた、「良かった~もし眠っていたらどうなっていたか心配しましたよ、今は3号車の中に今ます、もうすぐそちらに辿り着くと思います」 「そうか、なるべく早く来いよ」

南条は落ち着いた様子で青葉に話すと携帯を切って、すぐに個室トイレのドアを開いた、すると、「どういう事だ!?」青葉が話していた個室トイレの中にはガスマスクの姿が無かった、南条は唖然としてしばらくその場で立ち止まってしまった、「マスクが無いぞ、青葉の奴一体どういう事何だ?」南条が混乱に陥ってるなか、睡眠ガスが流れているのにも関わらず何者かが2号車の車両からこちらに歩いてくる気配を咄嗟に感じだした、青葉が来たのだと思った南条はすぐにドアの方を振り向くと、そこにはゆっくりとドアを開けながらこちらを睨み付ける、ロバートとの側近であったゼインの姿があった、よく見るとゼインは顔に南条用のガスマスクを装着していた、「チッ、面倒な事になっちまった」南条は思わず息を呑み、ゼインに警戒な姿勢を取った、ゼインはじっと南条の顔を睨み付けたままゆっくりと首を回し始めた、「Until the traitor is erased、(裏切り者は消すまでだ、) 列車の廊下には緊張が走りるなか、次の瞬間ゼインが南条に飛びかかってきた。





やがて3号車の車両を抜けた青葉はすぐに2号車の車両へと乗り移った、「後はここを抜ければ、」順調に車両を進んでいた青葉だったが、突然何故か青葉の足が立ち止まった、思わず青葉は目付きを変えて素早く拳銃を抜いた、「どうしてお前がいる?」青葉の前で待っていたのは、二人にとっては厄介な人物である同業者の佐竹であった、佐竹は何故か作戦を知っていたかのようにガスマスクを装着しており座席へと足を組んで座っていたのだ、「USBは何処にある?今すぐ応えろ」そう言い放つと佐竹は膝を抑えながらゆっくりと座席から立ち上がり、姿勢が戻った瞬間に銃が抜き取られ、青葉の方へと銃口が向けられた、佐竹は不吉な笑みを浮かべながら圧をかけてきた。

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