第4話「"ライム睡眠導入"で、"アイムスイッチオフ"って感じー?」

「……もしもーし、もしもーし」


「……あ、やっと起きたっ」


「ほーら、起きて」


「……ふふ、よだれ垂れてる、ちょっと待っててね」


「えーと、ティッシュ、ティッシュ」


「……あー、あった、あった」


「って、二枚取れちゃったっ」


「まっ、いっかっ」


「動いちゃダメだよー」


「はーい、ごしごーしっ、ごしごーしっ」


「……うんっ、綺麗になった」


「これで、君が閉店まで眠りこけてたなんて、誰にも気付かれないねっ」


「そう、君、寝ちゃったんだよ?」


「人がさぁ、せっかく耳元で韻を沢山踏んであげたのにさぁ」


「すぐに、お目トローンってしちゃって、ぐっすり」


「君って、もしかして……ライムを耳元で聞くと眠くなっちゃう変わり者?」


「ふふっ、変なのっ」


「"ライム睡眠導入"で、"アイムスイッチオフ"って感じー?」


「ふふっ、それでさっ」


「随分と気持ち良さそうに寝てたからさぁ、お店の人に言って、寝かせといてあげたのっ」


「感謝してよねー」


「……んー? あっ、お金?」


「お金なら、寝ちゃったところまででいーよ」


「だって、"韻踏み喫茶"、"ミンスキ六花"は、ライムを聞かせる喫茶店だからねー」


「寝てる人からは、お金は取りませんっ」


「でも、そろそろ閉店なので、シャキッとしてねっ」


「……あっ、ねえねえっ、私のライムどうだった?」


「……凄かったっ? ほんと?」


「やったぜっ」


「ふふ、途中で寝ちゃったのは、"想定外"だったし、"余計な韻"も踏んじゃったかもだけど、満足してくれたなら、良かったよー」


「それにぃ」


「ライム睡眠導入という、新境地も開拓できたしっ」


「これからは睡眠不足や、中々寝付けないって人向けに、"耳元"に"聞き心"地の"いい言葉"、ライムを聞かせて、寝かしつけラップをします!」


「……えっ」


「……ちょっと、その反応はなくない!?」


「いやいや、絶対流行るって、これからは睡眠導入ラップの時代が"来るって"!」


「"狂ってない"! "ふるって"るだけ!」


「……ふんっ、じゃあ、いいもーん、もうしてあげませーんっ」


「…………」


「……ちらっ」


「ちらちらっ」


「……あ、ちょっとだけまたして欲しそうな顔してるー」


「じゃあさ、じゃあさっ」


「しばらくは君だけに、寝かしつけラップしてあげるっ」


「それならさっ、私の練習にもなるしっ」


「はーい、もう決定でーすっ」


「じゃないと、閉店まで居眠りしていた分もお金取っちゃいますよ?」


「……ふふっ、はーい、リピーター、一人ゲットっ!」


「また来てね、"常連さん"、返事はもちろん––––」


「"当然さっ"」

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ようこそ、韻踏み喫茶へ! ラッパー少女があなたの耳元で韻を踏みまくります! 赤眼鏡の小説家先生 @ero_shosetukasensei

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