またアツい日がやって来る

そうざ

A Hot Day is Coming Again

 近頃は何処も彼処かしこもカメラカメラカメラだな。店舗から施設から街の隅から隅まで、全く鬱陶しいったらありゃしないね。

 しかも映像が撮れちゃうんだから、もう活動写真みたいなもんだな、驚いちゃうよ。

 そこへ持って来て今は一人一人がカメラを携帯してるだろ。そうそうスマホ、寝ても覚めてもスマホスマホスマホの世の中だもんな。何でこんな厄介な事になったんだろうねぇ。


 ところがさ、若い世代の中にはカメラなんて屁とも思ってない連中も居るらしいな。怖い物知らずと言うか、恥知らずと言うか、俺達には信じられないよ。やった者勝ち、目立った者勝ちってご時世か、時代は変わったねぇ。


 言いたかないけど昔は良かったよ。外灯の数も高が知れてたから、日が暮れりゃもう俺達の独擅場だった。夜陰に紛れて神出鬼没、証拠も残さずドロンだよ。

 今でも人里離れた場所なら外灯もカメラもないんだろうけど、それじゃ何の意味もない、人様あっての俺達なんだからな。


 しかし何だな、俺達は嫌われてるのかねぇ。そんじょそこらのご同類とは違うと思ってるんだけど、おごりなのかなぁ。

 確かにもう何の奉仕もせず、税金も納めず、世間様にとっては価値がないかも知れない。だけど、ご同類には引く手数多あまたの連中が沢山居るからさ、こっちとしては納得が行かない訳よ。連中はちょっとばかり強面こわおもてだからって、映画や小説や芝居で持て囃されちゃってさぁ。


 そりゃあ、俺達だって夏になれば話題になるけどさ。娯楽……今はエンタメって言うのか、そういう取り上げられ方じゃなくて、お涙頂戴って言うか、説教臭いって言うか。

 俺達の中にも、短気だったり、助兵衛だったり、底意地が悪かったり、嫉妬深かったり、恨みがましかったり、色んなのが居るよ。なのに一括りに善人扱いされるよなぁ。


 おっ、そろそろ式典が始まる。

 テレビ局から一般人までカメラがいっぱいだ。偶には映り込んでみるかなぁ、やっぱり不謹慎かなぁ。

 はっきり姿を見せ付けた方が、もっと話題になって、世界平和に貢献出来ると思うけど、やっぱり俺達は永遠にエンタメと距離を置かなきゃならないんだろうねぇ。

 今年で何回目の夏だろ。

 あの日も暑かった。

 あれは本当に熱かった。

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