異世界生活・10日目

女神像から放たれる光が街中に届くようになってから、女神像へお祈りに来る方が明らかに増えました。どうやら街の外からもお祈りに来ているようで、街の中がとても賑やかになりました。


そんな時に、エドさんから別の街の教会へ行ってみないか?と言われました。なんでも、隣街の教会へ行く用事があるので、私も同行させてもらえる事になったのです。

この世界に来てから、他の街へ行くのは初めてなので、近所の奥様達があれやこれやと旅支度の手伝いをしてくださいました。


シスター服以外を持っていないと奥様達に伝えた所、その日の内に可愛い服や下着までが私宛に届けられたのには驚きました。とても申し訳なくて、なにか御礼を…と申し出たのですが「御礼なら、もう充分もらっているしこれは教会への寄附だから気にしなくていいのよ!」と言われました。


エドさんも「有り難く受け取りなさい。その分、皆の健康と幸せを女神様にお祈りしておくれ」と言われました。そこまで言われたら断るのも失礼になってしまうので、素直に受け取ります。


この世界の女性はほとんどの人がスカートで、パンツスタイルの女性は珍しいそうです。下着は日本でも馴染みのある形をしています。ゴムが普及しているのには驚きましたが、異世界なのでそういう事もあるのでしょう。


隣街までは馬車に乗ります。教会に立ち寄ってくれる商人さんが馬車用のクッションを用意してくださいました。なんでも、馬車に乗り慣れてる人でも、長時間乗るとお尻が痛くなっちゃうんだそう。確かに、椅子やベッドも固いですもんね。スプリング?コイル?マットレスのようなものはこの世界には無いようです。


さて、隣街では3日ほど滞在するらしくその間にあちらの孤児院にも立ち寄るという話なので日持ちするお菓子を持っていくことにしました。少し荷物は増えますが、商人さんに は「もう少し増えても大丈夫」と言っていただきました。商人さん用のお酒もこっそり買っておきました。帰りは別の馬車なので、お別れする時に女神様に飾ったお花と一緒に渡そうと思います。


さて、いよいよ出発日です。

朝の礼拝を終えて出発します。近所のパン屋さんが道中で食べるようにお昼ごはんを持たせて下さいました。

馬車に乗り込み出発します。街の外に出ると豊かな自然が広がっています。所々に林のようなものがありますが、気持ちの良い草原が広がっています。馬車が通る道は舗装のされてない道です。平らにはなっていますが、確かに振動があってお尻が痛くなりそうでした。クッションがなかったらお尻が割れていたかもしれません。


街道は定期的に魔道士が道を平らにしているそうです。馬車の轍で土が削れるから、定期的に整備が必要なのだとか。石畳にすればいいのでは?と聞くと、割れたりすると車輪が引っ掛かって危険なのだそうです。街中なら、すぐに補修が出来るけど街道は難しいのだと教えてもらいました。


整備は大変ですね。と言ったら、魔力の低い者でも就ける仕事だから人気なのだそうです。魔法のある世界ですが、それを活かした職に就くのは大変なのですね。こういった事は世界が違っても同じなのかと勉強になりました。


街道の途中には休憩場所があり、馬車が数台止められるような広さの空き地があります。街道から休憩地へ馬車を入れて、車内でお昼ごはんを頂きます。

近所の奥様が持たせてくれたのは、甘辛く味付けされたロロンという鳥の肉を挟んだサンドイッチにアププとフルーツとナッツのパウンドケーキが入っていました。

革で出来た水筒にはリモネというオレンジの甘さとレモンの酸味がある果実水が入っていて、口に含むとさっぱりとした甘みと酸味があり、渇いた喉を潤してくれます。


ガサガサっと音がしたので見てみると、なんとウサギが顔を出していました。可愛いです!目が合うとすぐに逃げてしまったのが残念です。

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