第3話 洞窟
シャリン—
シャリン—
シャリン—
真っ黒な空には月明かりはおろか、ただ一つの星影も見当たらない。
金属が
その漆黒の闇の中で、凸凹の白い影の行列がぼんやりと浮かんであった。
それは
白い影の正体は、崩れ
その先頭を行く者が持つ
列に並ぶ者達の背丈は
その行列の背の低い者は、まだ年端もゆかぬ子供の様に見て取れた。その
皆、足元は
苔むした石段は
只。
一言の言葉も聴こえては来ない。
小刻みで荒い息の音は聞こえるが、その中から
只。
シャリン—
シャリン—
シャリン—
錫杖の
白い行列は黙って真っ暗な暗闇の中を黙々と昇る。
シャリン—
シャリン—
シャリン—
どれほどその石段を登った頃だろうか音が止む。
真っ暗な暗闇の中で白い列の歩みも止まった。
そして、先頭で杖を持っていた者がゆっくりと振り返り、
「着きました…」
消え入りそうな声がそう言う。
矢張りその声は女のそれであった。
静かで、無感情で、呟くような女の声。
その声に石段に並ぶ白い頭巾が、ゆっくりと思い思いに上を向く。
先頭で杖を持つ女は石段の向こうの暗闇へと消える。
石段で待つ白い着物を着た者達にその先は見えない。
皆、黙ってそこで待っている。
その白い着物の胸元のふくらみに手をのせる者や、その前で両手を合わせる者もいるが、皆黙って、真っ暗な上を
シャリン—
石段の上で再び錫杖の音が
その音に続いて、
「…行きましょう」
暗闇の向から先程の女の声が、静かに白い着物の列を
白い着物から覗く薄い素足がそれぞれ、一段一段と石段の苔を踏みしめながらゆっくりと、その声を追って昇って行く。
踏まれた苔からじんわりと透きとおった水がにじみ出て、素足を濡らす。
急勾配の石段を登り切ったそこには、小さな洞窟が口を開いる。その入り口の手前に錫杖を携えた白い着物の者が立っていた。
その洞窟の口は決して大きくはない。
その大きくはない口には、太く厚い木の
子供でも身を
その格子の奥は真っ暗な壁の様な闇。
錫杖を
ゆっくりと。
黙々と身を屈め。
膝をつき、その両手を着いて四つん這いになりながら、格子の小さな入り口を潜って行く。
背の低い者達もそれに習い、入り口を潜って行く。
随分と
それでも、ゆっくりと、黙々と格子の小さな入り口を潜って行く。
誰一人、一つの愚痴もこぼすことは無い。
最後の者が石段を登り切り暗い洞窟に消えると、それを確かめてから錫杖を
その後。
暗闇の壁から、白い二本の腕が現れる。
その手は開いた格子の入り口を閉める。
カチャン。
器用に格子の外側に鍵をかける。
それの鍵が
それから、
シャリン—
洞窟の暗闇から、あの錫杖が踊る最後の
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます