第1章第3話

彼は学級委員だった。

もちろん叶人にそんな素質はなく、クラスに押し付けられた形だった。

今日は特に仕事が多く、下校が遅くなってしまっていた。駅までのバスはとうに無い。肩を落としながら西門をくぐり、スマホに目を落とす。

『LINE1件:東門で待ってる』

咲からだった。叶人は直ぐに返信する。

『西門にて待っている。』

『だまって。』


無駄に立派な東門の柱には、目を瞑ったボブカットの美少女が寄りかかっている。通行人の目を毎度奪うそのたたずまい、まさに天使だった。

「ごめん待たせた。ほら」

叶人は自販機で購入したミルクティーを咲に投げつける。

「わっ、強く投げないでよ。あんた野球やってんだから。」

「ああごめん。てか野球なんて中学の途中に辞めたろ。」

野球のことについてあまり触れられたくないので、早く飲めよ、と催促する。

「なんでこんな時間まで残ってるかきかないの?」

彼女の首を傾げる上目遣いにDK水村は少し怯む。

「べつに気にならないし。」

叶人は続ける。

「俺学校に置チャリあるから、駅まで後ろ乗ってく?」

咲は少し俯き、叶人に視線を戻す。

「ううん。ねぇ叶人、2人で歩いて帰ろ。駅までさ。」

駅まで歩けば30分。無茶では無い距離だが、時刻も時刻である。

「いいけど、時間とか大丈夫?」

「大丈夫だよ、うち今日あたしひとりだから。」

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隣の華は紅い 狐の嫁入り @yanagyzakk

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