月と鏡の女神

第40話 月の都

 城に到着し、衛兵に声をかけ、開けてもらう。すると、いつもの様に偉そうに玉座に座っている王がいなかった。


「じゃあこの書類どうしたら…」


「お困りか?ティーナ。」


「王女様…陛下はどちらに?」


「今は外出中故、妾がその書類を受け取ろう。…ああ、ドラゴンが死んだか。ドラゴン内の反乱…まぁ、想定内か」


 この瞬間の姫だけは、いつものいたずらしそうな感じではない。常時この姿ならさぞモテモテでしょうに。


「よくここまでの騒ぎで被害を少なくしたな。兄上には後で妾から報告しておく。しばらくは休むといいぞ。」


「承知致しました。それでは」


 後ろを振り返り、帰る。なんの罰もないどころか、褒められてしまうだなんてね。


 寮に戻り、ベットに倒れ込む。こちらに帰るまでに結局一日かかったので、まだ昼だけど…徹夜も挟んだしちょうどいいよね。


 みんな寝なさすぎなんだよ、もっと寝なよ。




「ティーナ、起きろ。夕食持ってきたから」


「ん…あれ、私、帰ってきてたんだっけ」


「任務終わって疲れてんだろ。」


 キリさんから食事を受け取り、食べる。引きこもってた頃は味がしなかったけど、最近はちゃんと味がする気がする。


 スープを飲みながら、明日の話をしてみよう。


「明日、月の都に行ってみるね」


「任務か?」


「ヤダヤダ。普通にオフ。」


「そうか、楽しんでこいよ?」


「都会初めてかも〜お土産買ってくる」


 ご馳走様でした、というと、キリさんに頭を撫でられる。もう寝るだけだし髪を乱すのはいいよ、もう。


 そうしてまた眠り、朝が来た。鏡の前に座り、髪を梳かす。バリバリ、と音がしてかなり痛い。ふざけるな、あるあるだけど。


 この髪と目が見えてたら大騒ぎになるかな…せめて瞳だけでも隠したいけど、どうすればいいかなー。


 前髪をこう、前に持ってきたら鈍く見えるよね、うん。こうするしかないか…


「行ってきます」


 箒に横乗りしつつ、空を飛ぶ。朝から出て良かったよね、本当。暑いのは苦手だけどこういう暖かさは好き。


「…なぁんで突然暗くなるわけ??」


 寒、って思った瞬間これですよ真っ暗。なんで?突然夜になったのかな、ってくらいに真っ暗。なんか月だけは綺麗だけどさ…


 やがて、光が見えてきたので降り立つ。カラフルな光だと思ったらやっぱりここが例の『月の都』。なるほどね、だからこの名称がついたのか…


 そう、月光のみが唯一の光源ってことか。


「とりあえずお店でも見るか」


 大都会ってすごい、城下町とはまた違った雰囲気がある。アクセサリーショップとかも量が違うし、服も食べ物も見たことないのが沢山あってワクワクする。


 ベンチに座り、一息つく。そういえば、紫の髪でも全くと言っていいほど騒がれない。瞳を隠しているとはいえ、流石に不思議だ。


 周りを見渡すと、緑の髪が少ない。金髪はまぁいるけど、一般的に強いとされる髪色ばかりだ。


「都会には珍しい髪色や瞳色の者が集まるのかー」


「そうだなぁ、ところでお嬢さん、美味しいスイーツの店を知らないか?」


「…城下町にでもあるんじゃないですか?赤髪のお兄さん」


「おいおい、帰らそうとするでない。」


 何してんだこの国王。暇か?そういえば昨日いなかったなぁ、どうせここで遊んでたんでしょうねぇ全く。


「で、ここに一体どんな御用で?」


「噂を調べにきただけだ。まぁまたデマだとは思うがな」


「へぇ」


「興味がなさそうだ。よければこの町をエスコートしようか?」


「目立ちそうなのでお断りです。それでは」


 立ち上がり、そそくさと逃げようとする。と、腕を掴まれる。そのせいで今私転びかけたんだけど本当に何??キレそう。


「これを被れ、ティーナ。どうせ目立つだろう?」


「…ありがとうございます。」


 真っ白なローブだ。暗いからまぁ助かった。前髪を戻し、ローブを目元までかぶる。流石に学校用の持ってくるわけにはいけなかったけど、ローブは助かる。


 …なんか甘い香りがする。横にケーキ屋さんがあるので、とりあえず突撃。私の目的今回これなので、普通に嬉しい。


「ショートケーキセットを一つお願いします」


 テーブルに座り、いちごをブッ刺す。みんなはちなみにどっち派?いちごって最初に食べるか最後に食べるか。私は圧倒的に最初派。


「美味しい〜…」

 

 なんかまともにこうしてスイーツ食べたの作中初?いやぁ嬉しいね、私本当に甘いもの好きだから。


「あら、こんなところに何故あなたが?」


「お久しぶりです。エフェクターさん」


「…?あーえっと、誰だっけ」


 なんか前もこれやった気がする。そうそう、私が復学した初日に喧嘩売ってきた双子だよね。ボコボコにしてやったけど。


「流石に覚えて頂いても?わたくしはアリス」


「私はリュカです。」


「あー、なんかね、どういう人だったかの印象が強すぎて。ごめんごめん。で、何か用?」


 そういうと、二人が私を同時に見つめてくる。なんかそっくりなのに見つめられると怖い。赤と金とか色味はすごいかっこいいんだけどね。


「エフェクターさんに、聞いていただきたいことが」

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稀代の魔女と魔法学園 白雪ミクズ @ririhahime

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