第37話 またしても

 またしても私が魔法を使う羽目になった。最近魔法を使う頻度が上がって流石に疲れてきた。紫の髪と緑の瞳を持ってる私でさえ疲れるなら、他の人はどうなってることやら。


「で?何してんのドラゴン」


「いや…本当にすまない、俺が…しっかりしてなかったから」


「…そういうのはいいよ。しっかりしてたかどうか、じゃなくてなんでこうなったの?」


「わからない、ただ、また地面が動いた。今度は前の比じゃない。本当に不味かった。どうにかしようとしたが、相性が悪かった…」


 さっきの2匹のドラゴンも恐らく犯人の一人。明らかに大地属性が関係しているのは確かだけど、あの2匹はどちらも全く強くなかった。


 真犯人…恐らく城の地下にいるであろうソイツを殴るのが先かな。


「行くよ。城の地下に多分、全部の元凶がいるから…」


「わかった…なぁ、ドールはまだいないのか?」


「あなたも流石に空間認識くらい使えるでしょ。」


「モードを使わないと出来ないな…」


 そのまましばらく歩いていると、崩れた王宮が見えてきた。随分前にきた時はこの周辺が暑くて暑くて仕方なかったのに、今は涼しいくらいだ。


 やはり、魔力の大元はここだ。


「…これ、一つの魔力が大きいんじゃなくて、何年分かの魔力がずっと蓄積されてるのか…?」


「え…城を出入りできるのは一部の貴族だけだぞ!?俺も確かに出入りはできるが…」


「そっか…大地属性のドラゴンが…ずっとこんなところで…?」


 城の地下じゃない、城に大穴が空いているんだ。誰かが、いる。


「やっぱり…どうして、何してるんですか」



「…ドールさん」


 それは数時間前に見た、目に優しい黄緑色だった。最近こう言うこと多い気がするな、なんて頭の中で現実逃避する。


 こんなことならこのドラゴン連れてくるべきじゃなかった。


「ティーナ・エフェクター…ようやく、今なら何も気にせずに叩き潰せる…」


「…私は『どうしてこんなことを!?』なんて聞かないから。」


 頭の中で、顔のよく見えないがじわじわと浮かんでくる。急速に頭が冷え、私は大きく息を吐く。


「リドのことなら…私だけが背負うから。あなたが直接、私に手出ししなくてよかったのに」


「リドって呼ぶんじゃ無いわよ!人間如きが…!リドに何をしたかわかっているの?なんでこんなことになったの?」


「ドール…リドのことはもう…」


「リュークまでその人間の味方をするの…?」


「…ドラゴン、あなたは帰って。…結局、私が自分で起こした事件だったってことなんだから」


 辺りの地面には、大量の魔力がある。それは私が本気で捌かないといけないレベルの強い強いものだ。


 恐らく、ドールさんがこの1〜2年で貯めたものだ。


 跳ね返すのも、避け続けるのもこの狭い中では出来ない。なら、どうしたらいい?


吸収するしか無い…!


「町を滅ぼしてでも、リドが報われるなら何度でも、なんでもする…!だから、死んでね。ティーナ・エフェクター。


<モード・バーミリオン>」


 まさか…この人までモードを使ってくるなんて。流石にちょっと笑っちゃったよ、冗談じゃ無い、なんで私がこんな面倒なのやらされてんの??


 なんか腹立ってきたよ段々とね!!


「私が氷属性って知ったのは…あのドラゴンが言ったのかな?」


「…!そんな、つもりは…」


「別にどうでも良いよ、私はどうせ全属性だし。」


 ユニーク魔法展開、『転送』。水魔法展開、『水没』。


 転送魔法でドールさんの頭の上に水を落とす。ドラゴンはもう2匹殺してしまっているから、もう殺したくは無い。


 彼女自身が大地属性で、今は炎属性になっている。大地属性の弱点は炎で、炎属性は水属性が弱点。でも水魔法は大地属性に不利…


 考えてられないから、とにかくレベル差で押し切るしかない…髪色とか比べるのは好きじゃ無いけど、こっちは生まれた時から100レベみたいなものだし。


「…ッ!勝てないの…?私じゃ…リュークなら、リドなら勝てるの?」


「無理無理。先代の稀代の魔女様くらいじゃない?私に勝てるの。」


「…」


「…ねぇ、昔話をさせてくれる?どうせ、貴女は私に勝てないんだし」

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