第4話 いらない夢

 また悪夢を見てしまった。頭がかなり痛い。酸欠にでもなっているのだろう。ちらほら悪夢を見るという話を聞くし、最近は色々あるのだろう。

「ティーナ、起きたか?」

「おはよ〜キリさん。朝ごはんは食パン5斤がいいな」

「マジで用意するぞ?」

「ごめんなさい」

 5斤も食べれたら苦労してないよなぁと考えつつ、ベットからのそのそと起き上がる。食堂に行きたくなさすぎる、昨日の奴等全員と遭遇しなくてはいけなくなるから。

 この寮は一応、Bクラスの成績一位とAクラスの全員だけが住むことを許されている。そのため、基本生徒と遭遇することはないが、食堂はそうもいかない。同じ時間にほぼ全員が集まるのだから。

 ちなみに料理はキリさんが用意している。真似できないわ…バイト猫さんがお手伝いしているとはいえ、流石としか言いようがない。

「あーーーーーー」

「静かにしろ…あと寝巻きからは着替えてこいよ?じゃ。」

 引きこもっていた時は基本みんなと違う時間に起きるものだから全然遭遇しなかったけれど、これからはこれも覚悟しなくてはいけないらしい。

「おはようございま…うわ」

 はい、扉を開けたくないこの重圧。死ぬほど嫌なこの空気。…今回の韻は…誰も聞いてないし多分これ失敗だな。

「エフェクターさん?扉の前で何をなさっているの?」

「…いや、別に…えーっと、アナベルさん?」

「アリスですわ。まあ、早くお入りになって。みなさんお待ちかねよ」

 あああそういう空気ね成程了解それはそれで死ぬ程嫌だクソが!もう面倒なので開けると、赤やオレンジの髪と金や青の瞳が並んでいた。

「見て…ティーナ・エフェクターだわ。」

「紫の髪なんて初めて見た、緑の瞳がとても綺麗…」

 はいはい1億回聞きましたとも。そりゃお美しいでしょうね。

 ヒソヒソ声をガン無視して進むと、見慣れた青髪が見えてきた。

「お、ティーナようやくきたか。めっちゃ遅かったな、寝坊か?」

「入りたくなかったんだよねこの部屋。隣いい?視線が痛い」

「おういいぜ」

 二人で淡々と朝食を食べていると、やがて騒ぎが静まり始める。大きく息を吐くと、コリンが私の顔をじっと見た。

 何か口を開こうとするが、それが別の人によって遮られる。

「ティナ。ちゃんと食えたか?学校はどうする?」

「キリさん。ん、一応食べ終わったよ?学校はまあ、仕方ないから行くよ。」

 そう答えると、キリさんが私の頭を撫でて頷いた。これ優しいといえど、やっぱり多少は髪が崩れるんだよな。

「あ…管理人さん。俺がティーナのこと送ります。」

「コリンか。頼んだぞ」

 私はいくつだと思われてるのかな??私これでも16歳なんだけど。私一人でも流石に学校までは行けるよ、5分の距離だもの。

 ふとした瞬間、悪夢を思い出すことはあるだろうか?今私にそれが起きてしまった。最悪だ、こんな時に。

「ごめん…朝の悪夢を思い出した。」

「大丈夫か?」

「…学校で忘れ物に気づいたし遅刻するし腹いせに全員地中に埋めた夢…あれ、最後は正夢かも」

「やめろ!確認してこい今すぐ!」

 キリさんに食堂から追い出された。地中に埋めるくらいで…ていうか、Aクラスは基本チャイム無視してるし自習だからおかしいんだけどね?

 いらない夢だったなあ。

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