人間不信ちゃんとヤンデレちゃん

鏡華

蛇ノ目英理歌の不信論

プロローグ 大事な事

これはただの平凡だった少女の話だ。

普通に青春し、普通に社会に出て、普通に生きる。そんな生活を送る筈だった少女の話だ。暇があれば聞いてくれ。



何かを信じることは自分の弱さを見せることだ。大勢の人は簡単に親しい人物を信じてしまうと思う。

私もその大勢の一人だった。そんなどこにでも居るようなありふれて、平凡だった私は生きて行く上でたった一つの結論に辿り着いた。


「信じるという事は裏切られるという事」


私はこの結論に辿り着くまでに関わってきた人全てに感謝している。最も、そこに誠意なんてないが。あるのは少しの哀れみと形だけの感謝だけで恨みや罪悪感はない。


そして、この結論に至るまでに色々なモノを代償にした。

何かを得るためには何かを犠牲にしなければならない、至極当然の事だ。

君だって何かを買う時は金を払うだろう?私はこの結論を得るために多くのモノを犠牲にした。

それは金だったり、時間だったり、はたまた人間関係だったり。一般的に見れば失ったモノと得たモノの差は天と地ほどの差なのだろう。


そんな私がこの結論に辿り着く上で最も重要だったのは「」だ。


最初は親だ。

あの人達は一般的に見れば善人に分類される人種だったのだろう。あの人達は私に愛情を注いでくれた、人を信じる事を知った。けど、あの人達は当時小学生だった私を裏切った、それも自分達の死という最悪な形で。死因は通り魔殺人だ、恋人に振られ自暴自棄になってやったらしい。


私は大切な人を失った。代わりに別れの悲しさ、怒り、そして人の醜さを知れた。


次は幼馴染だ。

親を失った私は幼馴染の家に引き取られた。当時幼馴染とはとても仲が良かった。何時も一緒に居て、お揃いの服を着て、一緒の中学校に行って。まるで本当の姉妹のようで、親友と居る楽しさを知った。


そんな幸せな生活も長く続かなかった、いつからか幼馴染が余所余所しい態度になっていて、当然私もそれに気づいたんだ、気づいてしまったんだ。

私は思い切って幼馴染に理由を聞いた、そうしたら好きな人ができたと言った。私もそれを当然応援した、そして幼馴染は好きな人に告白した。そうしたら相手はなんて言ったと思う?「私が好きだから、ごめん。幼馴染とは付き合えない」そう言ったんだ。


あの時の空気は最悪だった、そこから地獄が始まったんだ。失恋した幼馴染の悔しさ、虚しさ、怒り、そのような負の感情はどこに向かうと思う?想像に難くないだろう?そうだ、当然振られた原因である私に向かったんだ。


幼馴染はまず自分の親に嘘を吐き私を貶めた。その次は学校だったか?学校については後で話そう。幼馴染はどんどん私に嫌がらせをした。私が反逆、いや、蹂躙や一方的な戦争ワンサイドゲームを始めるまでって言った方が正しいか?まあいい、その結果私は学校でいじめられ家では毎日罵られる日々が続いた。あの時は真面目に自殺を検討したんだったか?


私は信じる意味を失う代わりに人と友好関係を築く愚かさと人の心理、恋愛という自殺行為の結果を知れた。


次は保護者だ。

私には両親の遺産があった。それも結構な額だったよ。私はまだ幼かったし親戚も頼れなかった。だから私の代わりに引き取り先の幼馴染の両親が遺産を継いだ。人は多額の富を手にしたら人柄が変貌してしまうのは有名だろう。保護者達はその金で豪遊していた。最初は私に何か与えていたが幼馴染の策略と醜い本性も相まって私には何も買って貰えなかったな。それどころか前よりも扱いが酷くなったね、500玉を投げつけてきて「これで勝手に買ってこい。」そう言われたときは正気を疑った。当の本人達は回らない寿司を食べに行ったんだけどね。そんなこんなで俗に言うネグレクトを受けたんだ。


私は優しさを疑い、金の恐ろしさと便利さを知れた


次は社会だ。

人は簡単に信用している人からの情報を無条件に信じてしまう習性がある。中学生という幼い年齢で学校という閉鎖空間なら尚更だろう。人の考えがまるでオセロのように白から黒に変わるように、幼馴染の影響でどんどん私を軽蔑する人や避ける人は増えていった。


そうすると私はどうなると思う?当然いじめられたよ、そんな分かりやすい大義名分があり、悪者が居たら当然倒すだろう?ヒーローみたいにな。彼等はきっと自分がヒーローの様に感じていたんだろう。「俺達は悪い奴を懲らしめているんだ、すごいだろう?」と。周囲はニ種類の人間に分かれた、傍観する奴といじめ、いやヒーローごっこに加担する奴だ。


いじめはナルシストカースト上位が自分の存在を更に輝かせ、主張するために、或いはエゴイストカースト底辺が自分の地位を維持するために行うことである。これらの共通点は自分の利益を求めていることである。ナルシストは承認欲求を満たす優越感、エゴイストは自分より弱い者がいる安心感と自らの安全を求めている。そんな状況でいじめの対象絶対的弱者圧倒的な力法律を振りかざし、秩序スクールカーストを崩壊させたら最っ高に気持ちいいと思わないか?


すまない、脱線した。本題に戻そう。

教師も助けてくれなかった。家族は死んでいる。保護者はクズ、友達は居ない、頼れる者なんて存在しない。そんな状況をどうやって打破すればいいと思う?答えは簡単だ、「圧倒的な力を使う」この場合の力は法律だ。どうやってこの道に辿り着いたかは何れ話すとしよう。長くなってしまうからな。そうやって敵を滅ぼした後は転校し一人で静かに過ごしていった。案の定ここでも裏切られるんだがな。


私はここで社会の残酷さと人の意志の虚弱さ、大人の本性を知れた。転校先では人を人柄や言動だけで信じることは不可能であり、優しさには裏がある。そして金と権力が最も信用できると知れた。



私は関わってきた人々に本当に感謝している。なんていったって大事な事を身を以て教えてくれたのだから。

だから、だから私はずっと大事な事を忘れたくないんだ。二度も同じ間違いをするのは愚かだから。

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