第三十話

 掃除そうじも終わってみんながペンションの前で待っていると、マイクロバスがきた。すると草間くさま先生がりてきて、笑顔で言ってくれた。

「うんうん。皆さん、良い表情ひょうじょうをしていますねえ。たくましくなりましたねえ。今日の土曜日と明日の日曜日は、もちろん大海たいかいはお休みです。皆さん自宅じたくで、ゆっくり休んでください。

 それでは帰りましょう。皆さん、マイクロバスに乗ってください」

「はい!」


   ●


 冬休み前に、大海でクリスマスパーティーが行われた。まあ明日から冬休みだから、二学期、お疲れ様でしたパーティーという感じだった。だがやはり明日から冬休み、そして今日はクリスマスパーティーとなると朝からちょっとワクワクした。


 草間先生がサンタクロースの格好かっこうをして、四箱の大きなクリスマスケーキを持ってきた。それを萌乃もえの先生たちが、小学生、中学生、高校生、先生たちの人数分にんずうぶんに切り分けた。クリスマスケーキを食べてジュースを飲んだ後、皆で『ジングルベル』を歌った。明日から皆に会えないかと思うと、少しさびしくなった。


 でもクリスマスパーティーの本番ほんばんは、ここからだった。草間先生は両手で世界地図を広げて持つと、宣言せんげんした。

「今からクリスマスパーティー恒例こうれいの、クイズ大会を始めまーす! 見事に一番最初に正解を答えた生徒には、この世界地図をし上げまーす!

 皆さんには世界で活躍かつやくしてしいので、これを選びましたー!」


 私は、素直すなおに思った。世界地図か……。いらない……。草間先生が広げている世界地図は、横が一メートルくらい、縦が五十センチくらいの大きさだ。あんな大きな物を部屋に、はりたくない。どうせはるなら今人気のアイドルグループ、『なにわ男子だんし』のポスターの方がいい。それに私は別に、世界で活躍したいとは思っていない。私がそう思っていると、宗一郎そういちろうつぶやいた。

「やっぱり今年のクリスマスパーティーのクイズ大会の賞品も、世界地図か……。確か去年きょねんと同じだな……」


 私と宗一郎が、がっかりしていると草間先生はり切ってクイズを出した。

「それではクイズを出題しゅつだいします! 保健所ほけんしょ病院びょういん警察署けいさつしょには、ある共通点きょうつうてんがあります。それは何でしょうか? もちろんスマホを使ってもかまいません。それでは皆さん、考えてください!」


 私は、つい考えてしまった。病院と警察署は分かるけど、保健所って何? 草間先生はスマホを使ってもいいって言ってたから、私は早速さっそくググった。すると『保健所とは、地域住民ちいきじゅうみんの健康や衛生えいせいささえる公的機関こうてききかんの一つ』と、あった。つまり、皆の健康けんこうを守る場所か、と思った。でも保健所と病院と警察署の共通点は、全然分からなかった。ふとまわりを見てみると、小学生は、スマホを操作そうさしていた。何だかんだで、クイズに夢中むちゅうになっているようだった。


 しかし中学生や高校生たちは、おしゃべりをして笑いあっていた。そうだよね、中学生や高校生は世界地図なんかに興味きょうみないよね……。すると草間先生は、ノリノリで大きな声を出した。

「それでは分からない皆には、ヒントを出しまーす! ヒントは、丸と五角形ごかくけいと丸でーす! さあ、皆さん、考えてみてくださーい!」


 私は、ますますわけが分からなくなった。え? 丸と五角形と丸?……。ふと宗一郎と翔真しょうまを見ると、二人ともスマホの画面がめんを見つめていた。やっぱり二人とも、分からないんだろう。すると草間先生は、またノリノリで大きな声を出した。

「それでは皆さんに、大ヒントを出しまーす! 大ヒントは今、私が持っていまーす! さあ皆さん、考えてくださーい!」


 私は少し、考えてみた。草間先生が持っているのは、世界地図。地図……。すると私は、ひらめいた。まさか! そしてスマホで、『地図記号ちずきごう』をググった。やっぱりだ……。

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