第二十九話

 三日目の朝。私は目の前のちゃわんにられたご飯を見て、少し気落きおちしていた。やはり、おかずが無いと物足ものたりないと思ったからだ。すると、ななみさんの挨拶あいさつが始まった。今日の朝食は昨日きのう話した通り、おかずはありません。すみません。でも夕食のおかずは、期待きたいしてください。美味おいしいおかずを食べてもらうことが、できるはずです。それとこの朝食が終わって後片付あとかたづけも終わったら、ペンションのうらに集まってください。見せたいものがあるので。高校生ははんに入らないで食材しょくざいを集めないからズルい、と思われてもこまるので。それでは、いただきます!


 私はおかずが無い朝食で少し気落ちしていたが、『見せたいものがある』と言われて期待した。そして少しワクワクしながら、ご飯を食べた。


 朝食後、後片付けも終わった皆は、ペンションの裏に集まった。そして、見とれていた。私は、となりにいた優希ゆうきさんに聞いた。

「あの、優希さん。これって畑ですか?」

「そうよ。高等部の生徒が手入れをして、育てたの」


 私の目の前には、十メートル四方しほうの畑があった。そして茶色い作物さくもつが育っていた。私は、再び聞いた。

「あの、これは何ですか?」

大豆だいずよ」

「大豆ですか……」

「そう。大豆は『畑の肉』と言われるほど、タンパク質が豊富ほうふなの。そして高等部の生徒たちが、春から作っていたの」


 私は、おどろいて聞いた。

「え? 春からですか?!」

「そう。春に畑をたがやしてたねをまいて、そして草取くさとりなどをして育てたの」


 私は、高等部の生徒の苦労くろう想像そうぞうした。

「そうなんですか……」

「そう。今までの先輩せんぱいたちも、この『おとまかい』でおかずが無くなる経験けいけんをしたの。そしてそれをり切るために、畑をつくったの」


 私は、思いついた疑問ぎもんを聞いてみた。

「なるほど……。でも、大丈夫だいじょうぶなんでしょうか? これは食材は現地調達げんちちょうたつっていうルールに、違反いはんしていないでしょうか?」

「ああ、それは大丈夫よ。この畑の存在は、草間くさま先生も知ってるから。知っていて何も言わないから。だから、これはセーフ」

「なるほど、そうなんですか……」 


 すると、ななみさんが指示しじを出した。それじゃあこの大豆で、お豆腐とうふを作ります。まずは男子の班と女子の班に分かれて、大豆を収穫しゅうかくしてください、と。


 私は優希さんに教えてもらいながら、大豆を収穫した。そして大きななべで大豆をた。さらに大豆をしぼって豆乳とうにゅうを作りそれに、にがりを加えてかためて豆腐を作った。四時間くらいかかった。

 そして、豆腐ステーキを作った。豆腐を切り、全体に薄力粉はくりきこをまぶしてフライパンで焼く。両面りょうめんを焼いたら、しょうゆとみりんで作ったタレを入れて全体をなじませて完成。


 そして、夕食になった。ななみさんが、挨拶あいさつをした。

「えー、みなさんのおかげで、美味おいしそうなおかずができました。ありがとうございました。それでは、いただきます!」


 私は豆腐ステーキを初めて食べたが、予想以上に美味しかった。宗一郎そういちろう翔真しょうまも、美味しそうに食べていた。


 夕食を食べるとお風呂ふろに入って、寝室しんしつに行った。今までのつかれもあったのかも知れない。私は布団ふとんに入ると、すぐにねむりに落ちた。


 最終日。朝食のおかずは昨日きのう豆腐を作る時に出たおからを、しょうゆで味付あじつけした、おから煮だった。ななみさんが、最後の挨拶をした。皆さんのおかげで今年の『お泊り会』も無事に終わりました。ありがとうございました。朝食を食べ終わったらキッチンとリビングと寝室を掃除して、草間先生が迎えにくるのを待ちましょう。それでは、いただきます!

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