理髪店に若くて可愛い女理容師がいるので、常連になることにした
あかせ
第1話 若くて可愛い女理容師
ずいぶん髪伸びたな…。そろそろ切ってもらうか。土曜の朝、鏡を観ながら髭剃りしている時、俺は思った。
しかし、どこで切ってもらうか…。今のところ当てがない。
俺が以前行っていた理髪店は、この間潰れたのだ。人当たりの良いおばちゃん理髪師が経営する個人店だったが、腰の不調を理由に閉店してしまった…。
髭剃りが終わった俺は、ネットで近場の理髪店を調べる。
……店の数自体はあるが、予約制のところも意外にあるな。理髪店は行きたい時に行くもんだ。予約なんて面倒だから、そういうところは除外しよう。
…チェーン展開されてる理髪店も除外だ。昔一度だけ行ったことがあるが、理容師の人数が多く落ち着かなかった。こじんまりとした個人店のほうが俺に合っている。
それに、個人店で頑張っている人を応援したいからな。チェーン店のほうが優秀なケースが多いだろうが、髪を短くしてもらえれば良いから腕前はほぼ気にしない。
冴えない40歳の男にオシャレ感はいらん。
となると、店名と近さで決めるしかないようだ…。
じっくり吟味した結果、“理髪店あかり”が一番俺の興味を引いた。さっき髭剃りしたから、これから行くならカットだけになるか…。
検索では、メニュー料金がわからなかった。カットがめちゃくちゃ高いことはないだろ。万が一を考え、カット前に料金を確認すれば完璧だ。
…ボサボサの髪がうっとうしいし、やっぱり今日行くか。ズボンのポケットに財布を突っ込んだ後、俺は理髪店あかりを目指す。
歩いて数分後。俺は理髪店あかりに着いた。個人店だから駐車場はないと思い歩いてきたが、正解だったな。それぐらいは予想の範囲内だ。
店の入り口横にサインポールが置かれている。あのクルクル回ってるやつだ。それ以外は至って普通だな。感想を言うところはない。
店内と店主はどういう感じなんだろうか? 期待と不安が混在する中、俺は店の扉を開ける…。
「いらっしゃいませ…」
店に入ると、エプロンを着けている女性が小さい声で挨拶してきた。俺とその女性以外に人はいない。
「え…」
思わず声が出てしまった。どう見ても若い。絶対20代だぞ!
「あの…、どうしました?」
首をかしげる女性。
「すまない。…ここの理容師は君1人?」
年下相手でも紳士的な対応を心掛ける。これぐらいは当然だ。
「そうです。今は私1人でやってます」
「今は…?」
「昔は母1人でやっていたんですが、体力的に厳しいみたいで…。なので母に憧れて理容師になった私1人でやることになったんです」
「それは凄いな。経営とかは難しいことが多いだろ?」
面倒なイメージしかない…。
「そういうことは母がやってくれます。私は理容師として頑張るだけです」
「そうか…」
真面目そうで良い子じゃないか。
「失礼ですが、お客様でしょうか…?」
彼女からしたら、急に店に入ってきたおっさんにあれこれ訊かれたことになる。
警戒するのは無理ない。1対1の状況ならなおさらだ。
「そのつもりでこの店に初めて入ったんだが、君のような若い理容師がいるとは思わなくてね。…驚かせてすまない」
「いえ、良いんです」
女性は微笑んでくれた。
「今日はカットだけお願いしたいんだが、いくらになるかな?」
若い女性が頑張ってるとはいえ、値段設定がしっかりしてるとは限らない。
「1500円になります」
やや高いが、この子を応援する意味を含めれば安いな。
「わかった。…お願いしても良いかな?」
「かしこまりました。すぐ始めますので、こちらにどうぞ」
女性が空いている席を手で示す。
俺は案内に従い、席に向かう…。
理髪店に若くて可愛い女理容師がいるので、常連になることにした あかせ @red_blanc
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