後日譚
「――おいしい!」
都内某所にある老舗お寿司屋さんでクロエの声が響きわたる。
いつもは食べられない回らないお寿司なのでクロエの表情も緩みに緩んでいる。
その瞳はまばゆいほどの喜びに輝き、一貫一貫口に入れる度に感嘆の声をあげていた。
「こら、静かに食べなさい」
隣りに座っていた結が慌てて注意するが、眼前の雲丹寿司に意識を持っていかれているクロエの耳には届いてないようだ。
幸いカウンターには結とクロエしか座っておらず、寡黙な大将もクロエの喜び様を見て少し誇らしげに寿司を握っている。
「大将、つぎは大トロで!」
キラキラした瞳でそう告げるクロエを横目に財布の中身を思い浮かべた結は安いお寿司はないかメニューに視線を落とした。
「無事に遠藤夏子を保護したとはいえ大金をポンと出してくれるとは太っ腹だったよね」
大トロを脚をぱたぱたしてルンルン気分で待ちながらクロエは先日の依頼について追憶する。
「ああ、あんな救出劇説明しても信じてもらえないだろうから曖昧な説明になったけど素直に払ってくれて助かったよ」
ようやくかっぱ巻きを頼んだ結も依頼の事後処理を回想しながら返事した。
「あの父親メガバンクの重役だったらしいし、僕ら以外にも探偵を雇ってみたいだよ。まあ偶然にも僕らみたいな専門家を引き当てたんだ、本当についてたね」
「実際に成功報酬は破格だったし、無事に娘さんを連れ帰ったからだろうけど壊れたドローン代金まで出してくれたのは驚いたよ」
「まあ何やかんや言いながらも娘さを可愛さで大金積めるような親父だ。感動の親子再会シーンを見せつけられたしこっちはお腹いっぱいだったよ」
「なら注文するの止めてくれたら嬉しいんだけど…」
大トロもニコニコしながら平らげ、次を注文しようとするクロエに青ざめた結だったがクロエの喜びように仕方無いなと頬を掻きつつ口を閉ざしておく。
「そういえば他の被害者の行方とかあの神社には何が祀られてたとかまだまだ調べたい事が沢山あったんだけどなあ」
悩んだ末に茶碗蒸しを頼んだクロエが何とはなしに心残りを口にするが、結は興味なさげに答える。
「止めておけ。もしかしたらあの異空間にまだ人が取り残されているかもしれないが助ける義理もない。それに力を持った存在に自分から近づいても良いことなんて無いからな。"触らぬ神に祟り無しだ"」
「なんだよ冷たいなー。まあ誰彼構わず助けてたらこっちの身が持たないしお金にもならないのは同意するよ」
「そういうこと。だいたい俺は怪異現象関係の依頼は受けたくないって言ってるのにクロエが…んぐ!」
お説教が始まる空気を察知したクロエは運ばれてきた茶碗蒸しをスプーンで結の口に突っ込んで黙らせる。
「あーもううるさいなあ。無事に生きて帰って来たんだし、報酬で美味しい飯がたべれるんだから結果オーライでしょ」
結のお説教を交わしつつクロエは満足げに茶碗蒸しを口に運ぶ。相棒の嬉しそうな姿を見て怒る気も失せた結もかっぱ巻きを口に運ぶのだった。
――お会計が凄いことになってたのはまた別のお話。
――――――――――――――――――――
更新あきましたがとりあえず第一話完結しましたー!
ホラーって書くの難しいんだなあとつくづく思い知らされましたが、引き続き未来の技術✕ホラーで書いていきたいと思います😆
次回は「メタバースの幽霊」で考えてます!お楽しみに(^^)
先進技術で怪奇現象を解決する話 色 しおり @kohinata_Chinatu
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