第4話 元社会人転じて学生へ

(……ここは…どこだ…?                  

 …俺は狼に食われたんじゃ……)

辺りを見渡してみるが誰もいない

(………誰かが…助けてくれたのか?)

とりあえずベットから起き上がる

(部屋は見た感じ…少し広めのホテルの1室みたいなかんじだな…)

机と椅子、たんすと棚だけが部屋に置いてある

(部屋の外は………)

靴下のまま廊下に出る

(なんかヨーロッパのお屋敷みたいな感じだな…)

片側にはずらーっと部屋が並び、もう片側には窓が並んでいる

(なんか各部屋の前に名札っぽいのが貼ってあるけど………読めないな……見たことない文字だ……)

考えてみればそりゃそうだ。ここは異世界なんだから

(でもそれってまずくないか…最悪人と会話が通じない可能性があるってことだろ…)

…せっかく異世界転生したのに転生してから一度も良いニュースがない…。

(でもまぁ…悲観しててもしょうがないし、とりあえず人探すか…)

とりあえず歩いてみたが昼間なのに建物内に人の気配が感じられない

(…建物の外行ってみるか)

てきとうに階段下って廊下歩いてたら正面玄関みたいなとこから外に出られた

外は庭園が広がっていて、庭園の3辺を囲むように他の建物が建っていた

(向かい側に見えるのは…俺がいま出てきた建物と同じ様な建物だな)

(それで右側に見えるのは…学校?か?   ってことはここは学生寮か…)

(じゃあ…人いそうだし学校の方行ってみるか)

学校の正門みたいな場所まで歩いてみる

「デカイ学校だな…」

「もう動いて大丈夫なの?」

「うわぁぁぁぁああ!」

「ごめんなさい!驚かせる気はなかったの」

「大丈夫大丈夫、俺がぼーっとしてただけだから…」

そんなことを言いつつも俺の心臓はバクバクだ

女子に話し掛けられるなんて何十年ぶりだろう

あと言葉が通じることに思わず感激!

「学校長が貴方のことを入学させたから制服とか必要な物を部屋に届けに行ったのに貴方がいなかったから心配したのよ」

「ごめんごめん、すれ違っちやったみたいだなって……にゅっ入学!?どういうこと??」

「…ごめんなさい。私にもよく分からないわ。校長が貴方を見た時に『こいつを俺の推薦で入学させる』って当然言い出して…」

異世界の学校って校長の推薦あれば入学出来るんだ…

「…色々なんか情報量多いけど、その…校長先生が俺を助けてくれたのか?」

「ううん、校長は…特に何もしてないわ」

「なんやねん!」

「3日前、私達は訓練のために遠征してたんだけどその帰り道に貴方の悲鳴が聞こえたから私達が駆け付けたって感じよ。校長は助け出した貴方を馬車に乗せる時にちらっと貴方のことを見ただけよ」

「駆け付けたってことは…あんたが俺のことを助けてくれたのか!ありがとな!おかげで命拾いした!」

「そっ…そんな、、当たり前のことをしただけだよ」

照れてるのか頬が少し赤くなってる

「それで…何で校長が俺のことを入学させたか考えてみてもまじで意味不だな」

「まぁでも、うちの校長は人を見るがあるから…貴方に才能を感じたんじゃない?」

「いくら人を見抜く才能があっても普通そこまでせんだろ…」

自分で言ってるが少し照れてる

人を見る目がある人に才能を感じられそこまでされると誰だって嬉しい

(まぁ…でも俺のその期待されてる才能は…しょうもないミスのせいで使えないんだけどね…)

「あっ、そういえば貴方、なんて言うの?私は『アイシャ』」

「ん?ああ、俺の名前はユ…」

(いや…まて…早まるな…こいつが転生者だったらどうする?…ユウキなんて明らかに転生者の名前じゃないか…)

(今あっちは剣みたいな物持ってるけど俺は丸腰だ…しかもあっちはチート能力使えるけどこっちは使えない…)

(……偽名を言うか…)

ならば…!!

頭をフル回転させろ!

ゲームと違って途中で名前を変更することなど出来ない!

つまり!ここでどんな名前を出すかで今後の人生全部きまる!

「ユ?」

「ああすまん、俺の名前は『ユーリ』だ」

(これは…まぁ…ギリセーフでは?)

「ユーリ…良い名前ね」

(セーフ…てか自分が付けた名前褒められた!嬉しい!)

「どこから来たの?」

(あ、まずい…流石に『転生しましたー!』とか言えない…変な奴だと思われるし…第一相手も転生者かもしれない…)

(ならば…!!ここは定番の~)

「ごめん…俺、自分の名前以外何も覚えてないんだ…自分が何者で何で森の中にいたのかすら分からない…」

(記憶喪失!)

「そう…なのね…」

アイシャがかける言葉が見つからないのか申し訳なさそうにしている

(あ…ヤバイ重い空気にしちゃった…どうしよう…)

「その…私でよければ何でも相談に乗るから…その…気軽に話し掛けてね」

「!」

「…ユーリの記憶がないのは魔狼に襲われたショックだと思う…だから私がもっと早く助けに気づいてもっと早くユーリを助けていれば貴方は…」 

「いやいや待て待て…何でが申し訳なさそうするんだよ。アイシャは俺の命の恩人だよ?命の恩人様がへりくだってきたら俺はどうすればいいのよ。俺の立つ瀬がなくなっちゃうじゃん」

こんな言葉が意味ないことぐらい分かる

「…ありがとう、ユーリは優しいね」

「…」

「じゃあ、これからよろしくねユーリ。いつでも頼ってね」

「あ…」

アイシャは小走りで行ってしまった

「…」

俺はその後少し立ち尽くしてから部屋に戻った









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