第14話 実力
俺はソフィアとともに扉を開け中へと入る。
立ち入った先に合ったのは一体のゴーレムとおそらくそれを制御するための魔導書らしきものが部屋の中央にあった。
スライムのようなゼリー状のものを魔力で覆った特徴的なもので、かかしのようにその場に突っ立っている。
「じゃあさっそくだけど……」
彼女はそう呟くと自身の足を前へと運ぶ。
魔導書の前までつくと歩みを止め、それをじっくりと眺める。
よし!と声を上げると決心がついたような顔でこちらの方へと振り返る。
「このゴーレムには審判をしてもらいましょう、幸い似たような機能があるみたいだし」
ソフィアの発言を聞いて俺はふざけるなと言わんばかりに抗議する。
「いやいや、俺はやるってまだ決めてないぞ。第一レオンはどうするんだよ」
部屋の奥にある武具などを見つめては、ほーうなどの気色悪い声をあげている龍人の方へと声をかける
「いんや、俺はいいよ一人でやってる。お前ら二人でやってな」
その言葉を待っていたかのようにソフィアは自信有り気な顔をしてこちらの方に体を向ける。
面倒だなと思いながらため息をつくも、彼女の真剣な眼差しを見てその気持ちが一気に消え失せる。
同一の人物とは思えないほどの雰囲気の変わりようの様に思わず身構えてしまう。
以前学院で相対した時の彼女とはまるで違う異様な変化に驚くとともに無意識のうちで口角が吊り上がる。
心の奥底では生徒の質の低さにどこか落胆していたのかもしれない。龍人のレオンや上級生のミリー先輩はともかく同じCクラスの伯爵家であるクロッグ・ハッシュバルトやその取り巻き、一部しか見ていないが二年の先輩方はお世辞無しにも強いといえるほどの実力を感じ取れなかった。
これでは森に籠っていたときのほうがマシだと幾度も思った。
だがここにいる者は違う
今まで見てきた人間の中でも上位の実力を持つのだと瞬時に理解する。
ピリピリとした空気が張り詰め、思わず後退りするほどの気迫。
そしてその身に覆う魔力の濃さ。
すべてが自身の想像を超えてくる。
これがエルフ族……
こいつなら森の魔物たちでも相手取るほどの力量があるだろう。
「どう?これでもまだやらないって言うの?」
ソフィアはそう不敵に笑ってこちらに向けて声をかける
そんなの鼻から決まっている。
「いいぜ、やってやろうじゃねえか」
俺はそう告げると背中に抱えていた剣を抜きその場で構える。
ハーと息を吐き体の底にある魔力を緻密に、そして慎重に練っていく。
準備はできた。
「いつでもかかってこい」
「穿て」
刹那、俺たちの視界は白い闇へと包まれた。
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