恋愛成就の処方箋4(GL編)

Danzig

第1話

恋愛成就の処方箋4 GL編


同期入社の二人

残業を終えて会社からの帰り道

女性1 斎藤 千秋(さいとう ちあき)

女性2 沖田 渚(おきた なぎさ)


渚:もう、随分暖かくなって来たわね


千秋:そうね、そろそろ桜が咲くころよね


渚:桜かぁ・・今年はお花見行きたいなぁ


千秋:そうよね


渚:・・・

渚:そういえばさ、私達、同期入社して5年経つわよね、もう同期は、私達だけになっちゃったよね


千秋:そうよね・・女は結婚、男は転職したりで、結局、残ったのは私達二人だけ


渚:うん・・


渚:そうだ、千秋、今日、晩御飯どうする?

渚:何か食べて帰る?


千秋:うーん、そうね、行こうか

渚:きゃぁ(千秋の声を遮るように)


渚:急に風が・・目に砂が入っちゃって


千秋:大丈夫?


渚:ええ、何とか取れたわ、春の風は突然ふくから・・

渚:私も千秋みたいに眼鏡だったらなぁ


千秋:でも、これはこれで面倒なもんよ


渚:そっか・・で、どうする?


千秋:・・いや、今日は辞めておこうかな


渚:そう・・じゃぁ、また明日ね

渚:私、こっちだから


千秋:う、うん、じゃぁ・・


一人になる千秋


千秋:あああああ

千秋:どうして「行く」って言わなかったのよ、私!


千秋:折角、最初は勇気を出して、行くって言えたのに、あんな所で、風が吹くなんて・・


千秋:でも、改めて聞かれたら言えなくなるなんて・・ホント情けないな


千秋:「いざ」という時に、勇気が出ないなんて

千秋:でも、女の私が渚の事好きだって事、バレちゃうと不味いしな


千秋:あぁーあ、渚との食事が・・仕方ない、コンビニで弁当でも買って帰ろか


古い神社の前を通る


千秋:ん?

千秋:何ここ・・神社?

千秋:何か古い感じだけど・・赤い鳥居がいくつも連なってて、幻想的というか・・

千秋:でも、こんな所に、神社なんてあったかな?


千秋:鳥居がずっと奥まで続いてるのね・・狛犬の代りにキツネ・・

千秋:でも、ここで神社の前を通ったのも、何かの縁だし、拝んでいこうかな・・


パンパン


千秋:渚と友達になって、もう五年

千秋:どうか、今年こそ、出来れば渚とお付き合いがしたいです。

千秋:渚に告白出来るように・・私に勇気をください


パンパン


渚帰宅


渚:ただいまぁ・・はぁ・・疲れた・・


渚:もう、千秋、こっちが、あんなにアピールしているんだからさぁ

渚:ちっとは、気づいてよ


渚:まぁ、私が誘えばいい話なんだけど

渚:やっぱり、女が女を誘うって思うと、声が詰まっちゃうのよねぇ・・意識し過ぎかな


渚:でも、千秋って、私の事どう思ってるんだろう・・


渚:つぅ・・たたた(頭痛)

渚:ここ最近、時折この変な頭痛がするのよね・・ストレスかなぁ・・

渚:もう、今日は薬のんで早く寝よ


千秋帰宅


千秋:ただいまぁ・・はぁ・・疲れた・・


千秋:今日も、渚を誘えなかった・・いざ誘おうと思うと、喉が固まっちゃうのよね

千秋:なんか、蛇に睨まれたカエルというか・・

千秋:それに、タイミングも悪いのよ、急に風が吹いたりとかさ


千秋:でも、今日の、渚の、お花見の話・・

千秋:あれってやっぱり、お花見に一緒に行こうって事かな・・


白狐:そんなもん、そうに決まっとろうが!


千秋:え! なに? 声? どこから?

千秋:えーー!


白狐:まぁ、まぁ、落ち着け


千秋:お、お、落ち着ける訳ないでしょ!

千秋:何よ、この声!


白狐:ワシの声じゃよ、ワシは狐(きつね)、名は白狐

白狐:「びゃっこ」って言うてもトラじゃないからな、あんな猫と、一緒にするでないぞ


千秋:狐? 何で、声だけ聞こえるのよ


白狐:ワシは霊じゃからな、まぁ、そのうち、お主に姿も見せる事もあるじゃろうて


千秋:霊? 幽霊!


白狐:霊って言っても、別にお主を取って食おうってわけじゃない。

白狐:ワシは、お主が頼むから、わざわざ、来てやったのじゃよ


千秋:私は、幽霊なんかに、ものを頼んでないわよ


白狐:ワシは幽霊ではな・・・まぁ、細かい事は面倒じゃ

白狐:お主、今日の帰りに、神社に寄(よ)って、お参りしたろ?

白狐:んでもって、「勇気をください」とかって、願掛(がんか)けしたろ?


千秋:たしかに、したけど・・


白狐:だから、来てやったのじゃ、お主、何とかちゃんと、デートがしたいのじゃろ?

白狐:だったら、ワシが協力してやるぞ


千秋:ホント? でも、私と渚は女同士だけど、白狐的には大丈夫なの?


白狐:はは、そんな事、構やせん。性別なんぞ、小さな話じゃ


千秋:そうなの?


白狐:ああ、そうじゃ、だから大丈夫、ワシが何とかしてやろう

白狐:で、お主、名前は?


千秋:私は千秋


白狐:千秋、お主、勇気が欲しいんじゃったな?

白狐:うーん、じゃが勇気なんぞ、お主次第だでのぉ


千秋:そうなんだけど、何かないの? 道具とか薬とか


白狐:まぁ、そういうのが、あるには、あるんじゃが・・あまりお勧めはせんぞ



千秋:そんなのがあるなら、教えてよ

千秋:どんなの?


白狐:うーん、「武者玉(むしゃだま)」と言うんじゃがな、ほら、こんなやつ


武者玉を見せる白狐


千秋:光る玉が、浮いてる・・


白狐:これを使うと、勇気が千倍になるんじゃ、今は、一つしかないがな


千秋:何それ! 凄いじゃない

千秋:私に使わせてよ!


白狐:ただし、これを使うには、条件がある

白狐:使う人間の魂と交換という条件がな


千秋:魂と交換?

千秋:それって死んじゃうって事?


白狐:そうじゃ。武者玉を使って、事を成した後に、魂を貰(もら)って天に届ける


千秋:それじゃ、意味ないじゃない、誰が使うの、そんなもの


白狐:そう言うけどな、昔は割と使われたんじゃぞ

白狐:そもそも「武者玉」は、大勢の敵を相手に、戦わなきゃならん武者が使うんじゃ

白狐:どうせ死ぬなら、沢山の敵を倒して、武勲(ぶくん)を立ててから死ぬって感じでな


白狐:だから、告白には、お勧めしないって言うたのよ


千秋:そりゃ、恋が成就しても、死んだら意味ないしね

千秋:あぁ、やっぱり、そんな便利なものは無いか


白狐:まぁ、そうガッカリするでない、ワシが長年の経験で、助言してやるから


白狐:いいか千秋、告白というのはな・・


次の日


渚:今日も遅くなっちゃったね


千秋:そうね


千秋:(心の声)渚、遊びに行こう、渚、遊びに行こう、渚、遊びに行こう・・


渚:今日はまだ、木曜日か・・あぁーあ、今週の週末、どうしようかなぁ


千秋:渚!


渚:何?


千秋:今度の日曜日なんだけどさ、私と、あ・・


渚:あ?


千秋:あ・あ・あそ・・あ・・ひぃ・・

千秋:あ・あそこの店って何て言ったっけ?


渚:あそこの店?

渚:あそこって?


千秋:いや・・いいの・・はは

千秋:はぁ(ため息)


渚:そう・・


渚が意を決して


渚:じゃぁさ千秋、週末、私と、あそ・・う(頭痛)・・


千秋:え?


渚:痛ぁ・・


千秋:大丈夫?


渚:うん、大丈夫

渚:今日はもう帰るね、じゃぁ、また


千秋:うん・・


渚の部屋


渚:ただいま・・はぁ(ため息)

渚:もう、千秋!

渚:もうちょっとだったのに


渚:あれは絶対「遊びに行こう!」だったでしょ

渚:こっちはOKの準備して待ってたのに


渚:うっ、痛ぁー(前よりひどい頭痛)

渚:何か、頭痛が、だんだん酷くなってくる・・

渚:嫌だな・・何かの病気かなぁ


千秋の部屋


千秋:ただいま・・


白狐:千秋、どうじゃった? うまく誘えたか?


千秋:ダメだった・・やっぱり「いざ」って時に、どうしても、縮(ちぢ)こまっちゃって


白狐:そうか・・ワシとおる時の千秋は、それほど腰抜けとも思えんがな


千秋:私も不思議なのよ


白狐:まぁでも、こういうのは場数(ばかず)じゃからな、次、頑張ればええよ


千秋:・・うん・・そうね


数日後、会社


千秋:おはようございます。

千秋:あれ? 今日も沖田さん、休みなんですか?

千秋:もう3日ですよね? どうしたんだろう


白狐:千秋、好機じゃ!


千秋:あわわわ、白狐、どうしたのよ突然、会社の人に聞かれたら・・


白狐:大丈夫じゃ、お主以外には聞こえんよ

白狐:それより千秋、好機じゃぞ!


千秋:好機って何がよ、渚は、病気で休んでるのよ


白狐:だから、好機なんじゃ

白狐:千秋、お見舞いに行け、病気で弱っている人間は、落としやすいぞ


千秋:そんな姑息(こそく)な


白狐:そんな事言っててどうする、お見舞いに行け、絶対に行くのじゃ!

白狐:昼間の方がええから、会社は早退じゃ、ワシも付いてってやるから


千秋:えーー分かったよ


渚のアパート付近の公園


千秋:ごめんね、体調悪いのに


渚:ううん、私の方こそ、ごめんね、折角、お見舞いに来てくれたのに、近くの公園でだなんて

渚:部屋にあがって貰えればよかったんだけど、かなり散らかってて


千秋:私の方こそ、ごめんね、突然


渚:ううん、嬉しかった


白狐:(無声音)千秋、今じゃ!


千秋:渚、こんな時に、あれだけどさ


渚:え?


千秋:私、渚の事が好きなの

渚:きゃぁ(言葉を遮るように)急に風が


千秋:また?


渚:千秋、今、何か言った?


千秋:いや、だから・・ひぃ

千秋:・・いや・・なにも・・


渚:そう・・


白狐:なるほど、そういう事か・・


千秋:渚・・えっと・・


渚:ううう・・痛い(激しい頭痛)


千秋:大丈夫?


渚:ちょっと頭痛が・・このところ酷くて、起き上がるのも辛い時があるの

渚:ごめんね、折角、来てくれたのに


千秋:何言ってるのよ、私の方こそ、ごめんね

千秋:もう、部屋に帰ったほうがいいよ


渚:うん、そうさせて貰うね

渚:今日は、ありがとう


千秋:うん、お大事にね


一人残される千秋


千秋:あぁーあ、やっぱり告白できなかった・・

千秋:しかも、渚に悪い事しちゃったな

千秋:白狐! あなたがお見舞いなんて・・


白狐:千秋、あの娘、じきに死ぬぞ


千秋:ちょ、何言ってんのよ

千秋:どういう事?


白狐:お主には、見えんかもしれんがな

白狐:あの娘には、蛇の怪異が付いておる。


千秋:蛇の怪異?


白狐:ああ、蛇の怪異よ

白狐:あの蛇はな「人恋しくて寂しい人間」に取りつくのじゃ

白狐:そして、ジワジワと弱らせて、最後には殺す。

白狐:殺した後、その魂を冥界に連れ去っていき魂を餌にするのじゃ


千秋:そんな・・


白狐:あの娘の体調が悪い理由は、それじゃな

白狐:それと、お主が、あの娘に近づこうとする度(たび)に、あいつが邪魔をしておるようじゃ

白狐:自分の取りついた得物を、お主に渡したくないんじゃな


千秋:だから、突然、風が吹いたりしたのか・・


白狐:そういう事じゃ

白狐:あの娘は、自分の大事な得物(えもの)じゃからな


千秋:渚が得物・・

千秋:白狐、あなたなら、その蛇を何とかできるの?


白狐:ああ、ワシなら問題なく倒せる

白狐:あやつは、それ程強くないからな


千秋:じゃぁ、お願いよ、白狐、渚を助けてあげて


白狐:じゃが、あの娘に取りついている状態では、衝撃が直接、娘にも伝わって、娘も死んじまうな

白狐:奴を倒すには、まず、あの娘から、奴を引き剥(は)がさなきゃならん


千秋:どうやったら、引き剥がせるの?


白狐:千秋が、奴に「こいつは私の得物だ」って見せつけてやればいい

白狐:さすれば、奴は嫉妬に狂って、お主を殺そうと、あの娘から離れる


千秋:でも、見せつけるって、どうやって


白狐:例えばじゃが

白狐:お主があの娘を抱きしめて「千秋の恋人」だって言わせればええんじゃないか?


千秋:でも、蛇が邪魔してくるんでしょ?


白狐:お主が奴に負けないくらいの気合で、あの娘を抱きしめてやれば、ええんじゃないか?

白狐:これは、腕力じゃのうて、勇気の問題じゃからな、女の千秋にだってやれる筈(はず)じゃ


千秋:でも、そんな事・・


白狐:まぁ、お主次第じゃが

白狐:こうしている間にも、あの娘の体力は、どんどん弱っていくぞ


千秋:私にはそんな事・・


暫く考える千秋


千秋:そうだ白狐、私に武者玉を頂戴


白狐:そりゃ、武者玉を使えば、千秋でも引き剥がすくらいは、出来るじゃろうが

白狐:武者玉を使うとは、どういう事か、知っておるじゃろ、お主の魂と交換だぞ


千秋:分かってる


白狐:分かってるって・・それであの娘は助かるじゃろうが、千秋が死んだら、意味がなかろうて


千秋:それでも、渚を、冥界に連れて行かれるよりは、よっぽどましよ


白狐:じゃが、あの娘は悲しむんじゃないのか?


千秋:それは・・渚には、ちゃんと説明するよ

千秋:今は、その方法しかないんでしょ?


白狐:確かにな・・


白狐:わかったわ

白狐:千秋、本当に、それでいいんじゃな?


千秋:うん、いいよ


白狐:千秋、一つ言っておくぞ

白狐:武者玉はな、それを使う人間の勇気を増幅させるものじゃ

白狐:じゃから、元々の勇気がなければ、幾ら武者玉を使ったところで、大した効き目はない

白狐:つまり、お主自身が、しっかり勇気を奮い起こさぬと、奴には勝てんぞ

白狐:出来るか?


千秋:え・・うん・・分かった、

千秋:や、やるよ


白狐:わかった、じゃぁ行くぞ


渚の部屋の前まで来る


白狐:ここが、あの娘の部屋か?


千秋:うん、ここで間違いないはず


白狐:よし、カギはワシが開けてやる

白狐:千秋、覚悟はいいな?

白狐:ワシが「武者玉」入れてやるからな


千秋:うん


白狐:よし、いけ!


パン! 背中をたたく白狐


千秋:よし! いくよ!


白狐が渚の部屋の鍵を開ける

千秋が渚の部屋のドアを開ける


千秋:渚、入るわよ


渚:千秋・・どうして、痛っ頭が・・(ひどい頭痛)


千秋:渚!


渚に近づこうとするが、蛇が姿を現し、千秋を近づけさせないように邪魔をする


千秋:う・・近づけない

千秋:もう・・蛇め・・


白狐:お、正体を現しおったな

白狐:千秋、行け!


千秋:ううう、そんな事いっても・・


白狐:どうした千秋、好きな娘が持っていかれるぞ


千秋:あああ、渚!


渚を抱きしめる千秋


渚:千秋・・ちょっ・・

渚:急にどうしの、抱きついたりして・・


千秋:渚、あなたは、私の恋人よ、いいね!


渚:え?


千秋:あなたは、私の恋人なの


渚:千秋、どうしt・・


千秋:渚、あなたは、私が「死ぬまで」私の恋人よ


渚:千秋・・


千秋:「恋人だ」って言って!


渚:あぁ・・


千秋:言って!


渚:私は千秋の恋人!


渚の身体からスッと何かが抜ける


渚:あ・・体が・・


千秋:渚、どうしたの?

千秋:大丈夫?


渚:あれ?

渚:痛くない・・あの頭痛がまるで嘘みたいに

渚:どうして

渚:これ、千秋のおかげなの?


千秋:ま、まぁ・・


渚:ありがとう


千秋:苦しかったでしょ?

千秋:遅くなってゴメンね


渚:ううん・・


白狐:おい千秋、こっちも仕留めたぞ、見ろ、こんなにでかい蛇じゃ


千秋:そっか、良かった・・って、そんな蛇をこっちに見せないでよ、もう・・


白狐:スマン、スマン、ははは


千秋:でも白狐、あなたって、そんな姿をしてたのね


白狐:ははは、まぁな


渚が大きな蛇を担いだ白狐を見る


渚:きゃぁ!

渚:何っ!


千秋:大丈夫

千秋:あれは、白狐っていう狐の霊よ


渚:白狐?


千秋:渚に取りついていた、あの蛇を見つけてくれて

千秋:退治の仕方まで教えてくれたの


渚:あの蛇が私に・・あんなに大きい


白狐:そうじゃよ、お嬢ちゃん

白狐:もう少しで、お主は、こいつに殺されるところだったんじゃ


白狐:じゃが、千秋が勇気をだして、お主の身体から、この蛇を引っ剥がしたのよ

白狐:そして、ワシが仕留めたという話じゃ


渚:白狐さん

渚:ありがとうございます。


白狐:お礼なら、千秋に言うといい

白狐:まさに命がけで戦ったのじゃからな

白狐:そうじゃろ? 千秋


千秋:う、うん


渚:え?

渚:千秋、どういう事?


千秋:渚・・

千秋:実は、渚に話さないといけない事があるの


渚:話さないといけない事?


千秋:うん

千秋:私が蛇に立ち向かえたのは、その白狐がくれた「武者玉」のおかげなの

千秋:この武者玉を使うと、どんな強大な敵にも、立ち向かう勇気が湧いて来るのよ

千秋:そのかわり・・

千秋:私の魂を、捧げないといけないの


渚:魂って・・まさか


千秋:うん、私はもう、生きていられないんだ


渚:そんな


千秋:でも、渚を助けられてよかったよ

千秋:だから、私の命はもういいの

千秋:どうしても、渚を死なせたくなかったから・・

千秋:ましてや、あんな蛇なんかに、渚を連れて行かせるなんて

千秋:絶対に嫌だったの

千秋:だから、後悔はしてないよ


渚:そんな、

渚:幾ら私に命があったって、千秋がいないなら、同じじゃない

渚:勝手よ、千秋


千秋:渚・・ごめんね


渚:白狐さん!

渚:何とかする方法は、ないんですか?


白狐:うーん

白狐:武者玉が魂と引き換えってのは、ワシではなく、もっと上の神が決めた事じゃでな

白狐:ワシじゃ、何とも出来んのよ


渚:それじゃ、私の魂を、代わりにする事は出来ないんですか!


千秋:渚、ダメよ折角助かった命なんだから


渚:何をいうのよ

渚:こんな勝手なことしておいて

渚:私の気持ちも分からないくせに


白狐:うーん

白狐:武者玉は使った人間の魂と交換じゃからなぁ・・

白狐:代わりの人間って訳にはいかんなぁ


渚:それなら、私にも武者玉をくれませんか!

渚:私も武者玉を使います

渚:それなら、千秋と同じでしょ


千秋:渚、そんな事しちゃダメ

千秋:それに、白狐は武者玉を1つしか持ってないから、渚の分はないよ


渚:そんな・・

渚:私はどうすれば


千秋:渚には、これからずっと

千秋:私の分まで、生きて欲しい


渚:千秋・・


千秋:渚、大好きよ


白狐:えーと・・あれじゃ

白狐:武者玉ならあるぞ

白狐:ほら


武者玉を見せる白狐


渚:白狐さん

渚:それを、私に下さい。


千秋:ダメだって渚

千秋:白狐!

千秋:あなた、武者玉は一つしかないって、言ったじゃないの


白狐:あぁ言ったよ


千秋:だったらどうして、もう一つ持ってるのよ


白狐:だって、お主、武者玉使っとらんもん


千秋:え?


白狐:言葉の通りよ

白狐:どうしてもの時に、投げつけてやろうと思っとったが

白狐:使わずに済んだのよ


千秋:どうして、今まで黙ってたの!


白狐:まぁ・・あれよ

白狐:お主たちが、そんなイチャイチャやってるから

白狐:言い出しにくくてのぉ

白狐:スマン、スマン


白狐:という事じゃ、お嬢ちゃん

白狐:千秋は死なんよ


渚:そう

渚:それはよかった・・


白狐:千秋、これで約束は守れたな

白狐:じゃ、ワシはこいつを持って帰るとするわ


千秋:白狐、あなたのおかげで人生が変わったわ

千秋:本当にありがとう


白狐:これから先も上手くやれよ

白狐:じゃぁな


白狐の身体が消えていく


渚:千秋、

渚:私、なんか、夢を見ているみたい


千秋:これは、夢じゃないよ


渚:そっか

渚:やっぱり夢じゃないんだ


千秋:うん


渚:千秋・・ありがとう


千秋:ううん、渚、これからもよろしくね


渚:うん


千秋:渚、大好きよ


渚:私も


千秋:渚


渚:千秋


チュ(唇に軽いキスをする)


終わり

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