第34話 クラスメイト始めました

「あの、なんで急に編入してきたんですか?」


 次の授業の為、更衣室で学校指定の運動服に着替えながらアオイさんに聞いてみる。


「貴女の護衛の為に決まってるでしょう。ここには、『あの』ロナードがいるのよ」


「……そういえば、そうでした」


 現実を思い出させてくれるアオイさん。


 あの後ロナードは、私を襲ってきたのは別人だったのでは? と思ってしまうぐらい、『いつも通り』になっている。


 今日もダイブしてきたので、とりあえずいつもの背負い投げで念入りに地面に埋めておいた。


 本当に、色々な意味で不気味だ。


(それにしても……)


 隣で、下着姿になっているアオイさんを見る。


「何よ?」


「あ、いや、別に」


 そう言いながら、アオイさんから目を反らす。


 お風呂のときにも見たが、改めて見ると、我が体ながら本当に可愛げがない。


 腕は太く、肌は城とは程遠い美しい白とは程遠い小麦色、腹筋も目立っている。


 別にそれを恥ずかしいと思った事はないが、今は私の体である『理想の体』と比べるとあまりにも差があるので、なんというか、そんな体を押し付けてしまって、申し訳ないとしか思えない。


「……はぁ」


「え、なんで溜息を……わぷっ」


 体操着を被せる様に着せられる。


 首が通ってないので、不格好かつ前がよく見えない状態のまま……


「前にも似たような事を言ったけど、少しは自信を持ちなさい。私が認めている柔道少女さん」


 胸の辺りを指で突かれながら言われる。


 どうやら、私の考えていた事は見透かされていたらしい。


「……えへへ♪」


「何よ、気持ち悪いわね」


「人っていうのは、褒められると嬉しいものなんですよ。私が尊敬する天才令嬢さん」


 それが、私の大好きで、推しでもある人ならなおさらだ。


「……さっさと着替えなさい、お馬鹿」


 そうやって二人で着替え終えた後に、実技訓練が行われるグラウンドへと向かうのであった。


 ///////////////////////////////


 レムリアたちがグラウンドに向かった後、更衣室に残っていた女子たちが集まる。


「……由々しき事態ですわ」


 その言葉に、集まった女子全員が頷き……


「「「あの、アオイ・ヒメカワって子はなんなの!」」」


 まるで打ち合わせをしたかのように、同じ言葉を発する。


「あの美しいレムリア様のお胸を……ゆ、指で……突くなんて! うらやま……破廉恥ですわ! 私たち『レムリア様を遠くから見守る会』は、到底見過ごせません! 次の授業で、ちょっと注意しますわよ!」


「おー!」


 先程といい、息ピッタリのメンバーたち。


 だが……


(レムリア様も素敵だけど、アオイ様も……きゃーきゃー♪)


(レムリア様は、エミル様という方が既にいらっしゃるのだから、これは禁断の三角関係……ああ、いけない事だというのに、なぜ私の胸はこんなにも高鳴っているの?)


(……アオイちゃんって、なんて言うか、『色々』したくなるよね~♪)


 考えている事は、完全にバラバラであった。

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