第25話 家くる?

 トールくんの師匠を始めてから3日。


 長かった私の休み……ではなく、安静にしていろといわれた一週間の最後の日。


「……このぉ!」


「いいよその調子!」


 戦闘スタイルを変えたトールくんは、本当に聖『闘士』の名に相応しくなってきた。


「おらおらぁ~!」


 トールくんが、大剣の闘気剣を振り回す。


 本当に振り回しているだけなのだが、大剣のリーチと速度、化け物みたいなスタミナのせいで永久に振り回してくる。


 これはもはや斬撃の結界であり、付け入る隙がない。


 ……同格の相手なら。


「……そろそろ、いくよ! ですぞよ!」


 そんなものを、平気で破ってくるのが格上の相手だ。


 おそらく、トールくんが超えたいロナードは、この大剣を防御で弾き返してくる。


 そして私は……


「……隙あり!」


 ……スピードで、斬撃の結界を超える!


「くっ……そぉ!」


 だが、私のすぐ横にあった大剣が瞬時に消え……


「……っと!」


 利き手と逆の手に出した短剣で私を寄せ付けず、さらに利き手で本命である長剣の闘気剣で斬撃を放ってくる。


(うん、完璧! どの距離からも攻撃が飛んでくる!)


 間合いによって一番有利な武器を使い分けての一撃を、常に仕掛けてくる。


 自分が倒れるまで攻撃をし続けるその姿は、まさに闘士だ。


(まあでも……)


 トールくんには申し訳ないのだが、同格や格上の相手に、もうひとつあるのだ。


 ……チートというものが。


「なっ……!?」


 闘気剣を振り切った手を、アポカリプスで私の手に吸い寄せ、そのまま組んで払い腰で投げる。


 残念ながら、これは防御不能だ。


「……ぐっ!」


 下は固い地面なので、しっかりとトールくんの体を落ちる寸前に引っ張ってはいるが、やはりダメージはある。


 あるはずなんだが……


「くっ……そぉ! またやれた!」


 すぐ動けるようになるトールくん。


 元気だなぁ、この子(先輩)は。


「うん、本当にいい動きになったね」


「……ですぞはどうしたんだよ」


「あ、ですぞですぞ」


「……緊張感がねえ。馬鹿つええし、とんでもねえ闇の力をまとってるから魔王なんだろうが……本当にお前、なんなんだ?」


「あー、そこはノーコメントで」


 魔王については適当に誤魔化している。


 今は魔王モードで姿かわってますけど、この前あなたを投げちゃった、後輩のレムリアです! というわけにはいかないし、魔王モードで圧倒的な魔力放っているのに、通りすがりの魔王パワー発している見た目魔族っぽい何かです! というわけにもいかない。


「悪さしねえっていうんなら、別にいいさ。まあ、初めてみたときは、とんでもねえ痴女かと思っ……いてててててて!」


「……ひとこと多い」


 手を捻って軽く制裁を入れておく。


「でも、本当に強くなったね。あとは、それぞれの武器の特徴をつかみつつ、常に動いて有利な間合いを確保しつつ攻撃すれば、どんな相手だろう互角に戦えると思うですぞよ。それと……」


「飛び道具対策だろ? さすがにこれだけ教われば分かる」


「よろしい。これでもう、本当に教えることはないかな。」


「え……」


「私、明日からがっ……じゃなくて、用事があるから、毎日ここに来るみたいなことはできなくなるの。トールくんも、学校サボるのはまずいでしょ?」


「そ、そりゃ、そうだけどよ……」


 そう、トールくんは私との修行のせいで学校に行っていない日があった。


 さすがに何日もずる休みはマズイだろう。


 まあ、療養で学校休んでいるのに、平気で抜け出している自分が言うのもあれだが。


「見ず知らずの私の言うことを聞いてくれてありがとう。師匠って感じじゃなかったかもだけど、トールくんが頑張る姿が見られて、私も楽しかった! ですぞよ!」


 推しキャラの声だけでなく、一生懸命頑張っている姿、とても眼福でございました。


 途中、なんど涎垂らしそうになったか分かりません。


「……」


「それじゃあ、私はこれで……」


「……待てよ!」


「え?」


 急に私を呼び止めるトールくん。


 なんだろう、武術関連の質問かな?


 そんなふうに思っていた私に……


「……お前、うちに来い!」


「…………はい?」


 ……とんでもない言葉の剛速球が飛んできた。


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6話辺りまで修正完了!

やっぱり誤字多いなぁ…(´;ω;`)

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