隔絶された夏の世界で。

雪の香り。

第1話 部屋の中。

あたらしい薬が合わず、くらくらとする夏の昼間。

わたしはベッドの上によこたわり、まぶたを閉じて胎児のように丸まる。

暗闇はかすかに薄明るく、エアコンのぶぉんぶぉんという稼働音だけが響く。

ぶぉんぶぉん。

ぶぉんぶぉん。

ときどき温度の調節のためかぴたりと止まって静寂が訪れるが、またぶぉんぶぉん。

その繰り返し。

まるでループしているようなその時間。

わたしはだんだんとまどろみに落ちていく。

ずっと、ずっと、この箱の中が平和だったらいいのに。



おわり

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隔絶された夏の世界で。 雪の香り。 @yukinokaori

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