Fair & Cheating シャラザードの涙 (男2×女版)

Danzig

第1話


ナレーション:世に「シャラザードの涙」と言われる宝石がある

ナレーション:フォーキンス家に代々伝わる、光り輝く伝説の宝石

ナレーション:この宝石は、フォーキンス家21代目当主となる予定である15歳の少女のモノであったが、

ナレーション:とある事情で、ボルグというカジノ王の組織に騙(だま)され奪われてしまう事となる。

ナレーション:この宝石を返す条件としてボルグが出したのは「ボルグとのポーカー勝負で勝つこと」であった


ヴァネッサ:ねぇ、いいでしょ、私に行かせて


クロード:駄目だな

クロード:状況が悪すぎる


ヴァネッサ:だって・・


クロード:奪われたシャラザードの涙を、ミネルヴァちゃんに返してやりたい、ヴァネッサの気持ちはわかる


ヴァネッサ:じゃ、どうして


クロード:ボルグ達は危険すぎる、それに強い

クロード:ヴァネッサじゃ、勝てるかどうかわからない

クロード:負ければ、一生、ボルグ達にひれ伏して生きて行かなきゃならなくなるんだぞ


ヴァネッサ:クロード、あなた、私が負けるっていうの?


クロード:あぁ、言いたくはないけどな、その可能性が高い

クロード:ヴァネッサだって、勝てる自信がある訳じゃないんだろ


ヴァネッサ:それはそうだけど、

ヴァネッサ:でも、ギャンブラーなら受けて立ちたいじゃない


クロード:負ける可能性が高いのに、負けた時の条件が悪すぎるって言ってるんだ

クロード:それに、奴らのカジノで勝負するんだ、どんな仕掛けがあるか分からない

クロード:ましてや、ポーカーじゃ分が悪い


ヴァネッサ:じゃぁ、どうするのよ、宝石は諦めるの?


クロード:いや、そんな事は言ってねぇよ


ヴァネッサ:じゃぁ、どうするのよ


クロード:明日の勝負には俺が行く


ヴァネッサ:なんですって、

ヴァネッサ:あなたなら、ボルグに勝てるっていうの


クロード:あぁ、俺なら勝てる


ヴァネッサ:本気で言ってるの?


クロード:あぁ


ヴァネッサ:・・・わかったわ

ヴァネッサ:じゃ、今から私と勝負しなさいよ!

ヴァネッサ:私に勝ったら認めてあげるわよ


クロード:わかった

クロード:それで納得するんだな


ヴァネッサ:ええ


ナレーション:ポーカー勝負をする二人


ナレーション:1回目


ヴァネッサ:私は、A(エース)とQ(クイーン)のツーペア


クロード:俺は、5のスリーカード


ヴァネッサ:・・・


クロード:どうだい?


ヴァネッサ:まだ始まったばかりよ


クロード:そうだな


ナレーション:2回目の勝負


ヴァネッサ:6からのストレート


クロード:クラブのフラッシュ


ヴァネッサ:次よ、次


クロード:あぁ


ナレーション:そして3回目


ヴァネッサ:7(セブン)のスリーカード


クロード:J(ジャック)のスリーカード


クロード:これで、分かったろ?


ヴァネッサ:まだよ、次が最後の勝負

ヴァネッサ:私は最後にオールインするわ


クロード:・・そうか・・わかった


ヴァネッサ:私は4枚チェンジするわ


クロード:え?


ヴァネッサ:どうしたの?

ヴァネッサ:私が4枚チェンジするのが、そんなに不思議かしら?


クロード:いや・・じゃ、俺は3枚・・


ナレーション:カードを引くクロード


クロード:こ・・


ヴァネッサ:あら、どうしたの?

ヴァネッサ:予定のカードが来なかったような顔してるけど?


クロード:・・・いや


ヴァネッサ:折角、用心深く2段仕込みをしてたのにね


クロード:ヴァネッサ、お前、今までわざと・・・


ヴァネッサ:勝負は最後に勝ったものが勝ちなの

ヴァネッサ:そして、最後は私が勝つのよ

ヴァネッサ:それが私のギャンブル


クロード:そうか・・・


ヴァネッサ:私はK(キング)のスリーカード

ヴァネッサ:クロード、あなたは?


クロード:・・・


ヴァネッサ:早く手を見せてみなさい


クロード:ふぅ・・・

クロード:悪いなヴァネッサ、A(エース)のスリーカードだ


ヴァネッサ:そんな、あなたのところにエースは・・


クロード:不思議かい?

クロード:これでも俺は、イカサマ師なもんでね


ヴァネッサ:そん・・


クロード:ヴァネッサ、お前さんはギャンブラーとしての腕は超一流だ

クロード:だが、勝負の世界じゃ、俺の方が上だ

クロード:だから最後も俺が勝った


ヴァネッサ:・・・


クロード:ボルグも勝負の世界の人間だ、だからお前じゃ危険すぎる


ヴァネッサ:う・・・


クロード:これでわかったな

クロード:明日のボルグとの勝負には俺が行く


少しの間


ヴァネッサ:ふん、そんなに私が信用できないなら、好きにすればいいじゃないの


クロード:まぁ、まぁ、そんなに怒らないで

クロード:でも、明日は安心してお土産を期待してていいぜ


ヴァネッサ:ふん


クロード:あ・・いや・・だからさ、そんなに怒らないでって・・ヴァネッサ



ナレーション:勝負当日

ナレーション:勝負会場となる、ボルグの経営するカジノ


クロード:ボルグ、本日のご招待、痛み入るぜ・・・と言いたいところだが

クロード:クソみたいな条件つけやがって・・・言われた通りに来てやったぜ


クロード:でもまぁ、わざわざ俺達に、宝石を取り返すチャンスをくれた事には感謝するぜ


ボルグ:逃げずによく来たな・・・・と言いたいところだが

ボルグ:俺はお前を招待したつもりはないんだがな


クロード:まぁ、そう固い事をいいなさんな


ボルグ:お前に勝ったところで、俺には何の徳もないんだよ

ボルグ:ヴァネッサはどうした


クロード:お留守番


ボルグ:ケッ、話にならんな

ボルグ:とっとと帰れ


クロード:おいおい、カジノ王が勝負を前に逃げるのか?


ボルグ:俺は意味のない勝負はしない主義なんでな


クロード:俺に負けるのが怖いからか?


ボルグ:そんな子供じみた挑発にも乗らない主義だ


クロード:あっそ

クロード:意外とつれないんだね


ボルグ:時間の無駄だ

ボルグ:さっさと帰れ


背を向けて去ろうとするボルグ


クロード:でも、俺に勝たないと、ヴァネッサは出て来ないぜ


ボルグ:何?


クロード:ご所望(しょもう)なんだろ? 彼女が


ボルグ:クロード・・・てめぇ・・・


クロード:お前のチップが「シャラザードの涙」なら、俺のチップは「ヴァネッサ」だ


ボルグ:クッ


クロード:どうだい、お前にとっちゃ、十分つりあう掛け金だろ


ボルグ:ヴァネッサがチップだと・・・


クロード:あぁ


ボルグ:お前に勝てば、ヴァネッサが俺のモノになるっていうのか?


クロード:いやいや、残念ながら、ヴァネッサは俺のものじゃない


クロード:ただ、あんたが俺に勝てば、ヴァネッサはギャンブラーとして、あんたの前に立つだろうって話だ

クロード:それじゃ不服か?


ボルグ:いいだろう、お前と勝負をしてやるよ


クロード:そう来なくちゃぁな


クロード:あんたが俺に勝てば、ヴァネッサと勝負できる。

クロード:だが、俺が勝ったら、当初の約束通り「シャラザードの涙」は返して貰うぜ

クロード:それでいいな?


ボルグ:あぁ、それでいい


クロード:俺が勝った後で「そんな約束は知らない」ってのは無しだせ


ボルグ:大丈夫だ、これでも俺はカジノ王だぞ、勝負の結果には従うさ


クロード:そりゃ立派だねぇ


ボルグ:あぁ、なにせ、俺は誰にも負けないからな


クロード:大した自信じゃないの


ボルグ:お前こそ、俺に勝てるとでも思ってるのか?


クロード:勝負を決めるのは手札じゃない・・・っていうのは、映画のセリフだったっけ?

クロード:まぁ、何せ勝負は時の運・・・だろ?


ボルグ:ははは、青臭い事を言うじゃないか


クロード:いやいや、運ってのは、意外と大事なんだぜ

クロード:なにせ、俺には勝利の女神が付いてるからな


ボルグ:ケッ

ボルグ:つまらない事言ってないで、さっさと始めようか


クロード:あぁ、そうしよう



ナレーション:カジノのVIPルーム

ナレーション:部屋の中央のポーカー用の台が置かれ、向かい合わせに座りポーカーを続けるクロードとボルグ


クロード:俺のチェンジは2枚だ


ボルグ:俺は3枚


クロード:じゃぁ、10枚ベット(※掛ける事)


ボルグ:ほう、随分と強気だな

ボルグ:そんなにいい手が来たか


クロード:あぁ、割とね


ボルグ:そうか

ボルグ:じゃぁ俺は、レイズ(※上乗せ)だ、20枚


クロード:へー、あんたにもいい手が来たのかい


ボルグ:あぁ、割とな


クロード:なるほどね、じゃぁレイズだ、30枚


ボルグ:おいおいクロード、そんなに掛けて大丈夫か?


クロード:あぁ、大丈夫さ

クロード:ボルグ、あんたは俺がブラフ(※嘘)だと思ってるのか


ボルグ:ははは、どうだかな

ボルグ:ただ、俺の手札でお前に勝てるとは思ってるよ

ボルグ:だからレイズだ、50枚


クロード:・・・・


ボルグ:チップの枚数的に、これが最後の勝負になりそうだな


クロード:そうみたいだな

クロード:レイズ、70枚


ボルグ:ほう、コール(※手札勝負)にしないのか?

ボルグ:いや、お前にコールは出来ないよな

ボルグ:俺にフォールド(※降りる)させるのが、お前の狙いだから


クロード:くっ・・・・


ボルグ:じゃぁ、俺はここでコールだ

ボルグ:さぁ、手札勝負といこうか、クロード


クロード:あ、あぁ・・


ボルグ:クロード、お前は「勝負を決めるのは手札じゃない」とか言ってたが

ボルグ:駆け引きが効かなきゃ、最後は手札勝負なんだよ

ボルグ:よく覚えておけ


クロード:あぁ、覚えておく事にするよ


ボルグ:はははは、じゃぁ、勝負だ

ボルグ:俺の手はツーベアだ


クロード:そ、そんな手で・・・


ボルグ:あぁ、こんな低い手でも、お前に勝てる、違うか?


クロード:ディーラーにそう配らせたからか?


ボルグ:おいおい、人聞きの悪い事をいうなよ、ここはカジノだぜ

ボルグ:それに「勝負は時の運」なんだろ?

ボルグ:今日のお前には運がなかったのさ


クロード:・・・・


ボルグ:さぁ、見せてみろよ、お前のみじめな手札を


クロード:・・・・


ボルグ:どうした、クロード、手札を見せられないのか?

ボルグ:ははははは、これでヴァネッサは俺のもんだな


クロード:フフフ、それはちょっと焦り過ぎじゃないのか

クロード:そんなに焦ると、女の子に嫌われちゃうぜ


ボルグ:何だと、じゃぁ、お前の手札を見せてみろよ


クロード:ほらよ、フルハウス


ボルグ:なんだと、そんなバカな


クロード:そんなビックリすることはないだろ、ここはカジノだぜ

クロード:それに「勝負は時の運」だろ?

クロード:今日の俺には運があったのさ、なにせ、勝利の女神がついてるからねぇ


ボルグ:てめぇ


クロード:さぁて、では約束通り、シャーラザッドの涙を渡してもら・・・お・・・う・・・って、あらららら


ナレーション:カジノのスタッフに銃口を向けられているクロード


クロード:いやいやいやいや、こっちが欲しいのは約束の宝石であって、鉛の玉じゃないんだけど・・・


ボルグ:宝石? そんな約束は知らねぇ


クロード:いやいや、そういうのは無しにしようって最初・・・に・・・


ボルグ:悪いが、そいつも覚えてねぇな


クロード:そんな・・・


ボルグ:今回の勝負の景品は鉛の玉だ


クロード:ま、まぁまぁ落ち着きなさいよ

クロード:あんた達も、そんな物騒なものはしまってさ


ナレーション:微動だにしないスタッフ


クロード:・・・わかった、わかったよ、ったく

クロード:(心の声)しょうがねぇな、一旦引くか


クロード:じゃぁ、今日のところは大人しく・・・・


ボルグ:いや、残念だが、お前を帰す訳にはいかないな


クロード:そんな・・・


ナレーション:その時、カジノ全体に響き渡るような大きな爆発音がした

ナレーション:そして、銃を撃ち合う音が響き渡る

ナレーション:カジノのスタッフ全員の注意がそれる


ボルグ:何だ、何が起こった


クロード:(心の声)今だ


ナレーション:一瞬の隙をついて逃げるクロード

ナレーション:それに気づいて銃を撃ち、追いかけるカジノのスタッフ


ナレーション:物陰に隠れるクロード


クロード:ふぅ、あぶねぇあぶねぇ

クロード:でも、困ったなぁ、宝石持って帰るって約束しちゃったしな・・・



ヴァネッサ:あら、クロードじゃないの


ナレーション:銃弾の雨を掻い潜(かいくぐ)って物陰にやってきたヴァネッサ


クロード:ヴァネッサ、さっきの爆発、あれ、おまえだったのか


ヴァネッサ:そうよ

クロード:そうよって、なんでここにいるの!


ヴァネッサ:それは決まってるじゃない

ヴァネッサ:あなた達が勝負をしてる間に、ほら♪


宝石を見せるヴァネッサ


クロード:それはシャラザード・・・盗(と)ってきちゃったの?


ヴァネッサ:まさか、

ヴァネッサ:返してもらったの


クロード:いや、ものは言いようだけど・・・・


ヴァネッサ:それに、どうせ勝負はあなたが勝ったんでしょ?

ヴァネッサ:じゃ問題ないじゃない


クロード:そりゃ、そうだけど


ヴァネッサ:それにしてもクロード、「最後も俺が勝つ」なんて言ってた割には随分ね。

ヴァネッサ:私が来なきゃ殺されるところだったじゃない


クロード:ヴァネッサ・・・まさか、昨日の事、根に持ってる?


ヴァネッサ:そんなわけないじゃない

ヴァネッサ:さぁ逃げるわよ


ナレーション:銃弾の雨の中を走りながら会話をする二人


クロード:でも、やっぱり

クロード:ちょっとは根にもってるんじゃないの?


ヴァネッサ:しつこいわね、

ヴァネッサ:ここを出たところに車を止めてあるわ


クロード:まぁいいか、

クロード:OK! 急ごう 


ナレーション:走る二人


クロード:もう少しだ


ドカーン


ヴァネッサ:キャァ


ナレーション:ヴァネッサの近くで爆発があり、爆風の巻き添えを食らう、ヴァネッサ


クロード:ヴァネッサ!


ナレーション:倒れるヴァネッサ


クロード:ヤロー


バキュンバキュン


ナレーション:追っ手を撃ち殺すクロード


クロード:おい、ヴァネッサしっかりしろ、ヴァネッサ


ヴァネッサ:クロード・・・ごめん、私・・・なんか・・・ドジふんじゃったわね


息も切れ切れのヴァネッサ


クロード:ヴァネッサ、大丈夫か、しっかりしろ


ヴァネッサ:これを持って、あなただけでも逃げて


クロード:何言ってるんだよ、それはお前が持ってろ、一緒に逃げるぞ


ヴァネッサ:いいのよ・・・・もう駄目・・・みたい

ヴァネッサ:あなた・・・だけでも・・・


クロード:ヴァネッサ


ヴァネッサ:あなたと、もう一度勝負してみたかったな・・・


クロード:ヴァネッサ、もういい、喋るな!


ヴァネッサ:あなたの胸の中で死ぬのも、案外悪くないかもね


クロード:何言ってるんだヴァネッサ、さぁ帰ろう


ヴァネッサ:最後に・・・あなたの・・・本当の気持ち・・・聞かせて・・・


クロード:え?


ヴァネッサ:私の事、愛してた?


クロード:こんな時に、何言ってるんだよ


ヴァネッサ:もう・・・最後だから・・・お願い・・・聞かせて


クロード:ヴァネ・・・あ、あぁ、愛してたよ・・・そんなんじゃなく、これからもずっとお前の事を愛してるさ

クロード:だから、生きて一緒にここから逃げるぞ


ヴァネッサ:嬉しい・・・

ヴァネッサ:もう・・・一度・・・言って・・・段々声が遠くなって・・・


クロード:あぁ、何度でも言ってやるよ、だからヴァネッサしっかりしろ


ヴァネッサ:お願い・・・


クロード:ヴァネッサ愛してる、愛してるよーーー


思いきり大きな声で叫ぶクロード


カチッ(レコーダーを止める音)


ヴァネッサ:はい、いただきました♪


クロード:え? レコーダー?・・・・って


ヴァネッサ:クロード、お疲れ様

ヴァネッサ:あなたの気持ちはよくわかったわ


クロード:ヴァネッサ・・お前


ダダダダダダ


ナレーション:再び銃声が鳴り始める


ヴァネッサ:さぁ、逃げるわよ


ナレーション:再び、走りだす二人


クロード:ったく、こんな時になにやってるの


ヴァネッサ:こんな時だからやったのよ


クロード:どうしてさ!


ヴァネッサ:最後に勝つのがあなたでも、最後の最後に勝つのは私じゃなきゃイヤなの


クロード:ヴァネッサ・・・やっぱり昨日の事、根に持ってるのね


ヴァネッサ:そりゃそうよ、負けるのイヤだもん


クロード:ったく、かなわねぇな


ヴァネッサ:フフフ


クロード:ククククク・・・ハハハハハ・・・・


バキューン

ナレーション:銃声がなり、弾(たま)が近くの壁にあたる



クロード:あっぶねぇ

クロード:とにかく、今は早くここから退散しようぜ


ヴァネッサ:フフ そうね


クロード:ほんじゃまぁ、逃げえるぜ~


走り去る二人


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